拝啓 名前も知らない貴方へ

@belly

第1話 拝啓 名前も知らない貴方へ

 少しずつ日暮れが早くなり、涼やかな夜が続く今日この頃。 最近は綺麗なお月様を眺めながら、お団子を食べる事が日課になっています。 まあ、お月様関係なく毎日甘いものをつまんでいますが。

 こうして筆を執ろうと思ったのは、他でもない貴方が理由です。 昨今スマホがこんなにも普及している世の中だというのに、ケータイすら持っていないなんて。 連絡しようにも手段が無くて、何度振り回された事でしょうか。

書けば書く程、貴方の自由奔放、いや傍若無人な振る舞いに振り回された事を思い出します。

だというのに私が落ち込んだ時はすぐに気づいて、気遣ってくれましたね。一体あなたという人は、どこまで私を振り回すのでしょうか。

あの時は野暮かなって思って聞きませんでしたけど、絶対たくさんの女の子を泣かせてきましたよね? 心当たりがあると思います。無いというなら、多分気づいてないだけでしょう。

とにかく、貴方に私の現状や想いを伝える為に手紙を書こうと思い立った次第です。

 言っておきますが、人に手紙を書く機会なんて今まで数える程しかありませんでした。 拙い文章だと思いますが許してくれると嬉しいです。

と言っても貴方はそういう事を気にしないだろうという事は分かっています。  良くも悪くも大雑把な人です。 きっとこれも大笑いしながら読むんだろうなと想像はついています。

 いつでも良いので、貴方の好きなおはぎでも食べながら気軽にこの手紙を読んでくれると嬉しいです。

 貴方は今どうしていますか。気ままに海で泳いでいるんでしょうか。私は東京に帰って、今は小説の続きを書いているところです。 毎日バイトやサークルで忙しくて、書く時間を捻出するのが大変ですが、もう少しで完結します。

 必ず貴方との約束を果たします。

 一旦話はここまでにしておこうと思います。今度二人で海辺を散歩でもしましょうか。 実は背の高い貴方が歩く時さりげなく私の歩幅に合わせてくれるのが、少し、いえ堪らなく好きでした。

 これを読んでいる貴方の顔が真っ赤になっているだろう事が手に取るように想像できます。意外なくらい照れ屋でしたね、貴方は。ちょっと反撃できたような気がして気分が良いです。ざまあみろ。

 いや、こんな事書くつもりはありませんでした。 せっかくだから、上品な感じで終わらせたかったのに。 慣れない事はするもんじゃ無いですね。 ではまた会う日まで。

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