死神と呼ばれた僕と君
ruy_sino
死神と呼ばれた僕と君
僕は、何万人も人を殺してきた…。組織から命令されてだ。
そして今また人を殺そうとしている……
「やっほ〜最後の晩餐は楽しめているかい?」
「お、お前は…死神…何故ここに…?」
「お〜僕のこと知ってるんだ。アンタは、色々と、やりすぎた。そのツケが回ってきただけさ…」
「ま、まて…か、金ならいくらでもある。」
「ふーん。遺言はそれだけ?じゃあね〜。」
「ままま、待て、待ってく……」
低くて重い音が鳴り響いた。
ターゲットの頭に冷たく慈悲の無い弾丸を撃ち込んだ。 引き金を引く。たったそれだけ簡単な仕事だ。
「次のニュースです」
「昨日の夜、おもちゃメーカーで有名な社長
浅田さんが、何者かに拳銃で撃たれて死亡していることがわかりました。警察は殺人事件として捜査を進めており…」
ピッ
「ふ〜ん。」
翌朝テレビを見ると昨日僕が殺った社長が映っていた。
この世界には、殺して欲しい人間が一人二人いるものだ。大金を払ってでも…。そして組織は金をもらいソイツを殺す。少なくともそんな事が世の中では起きている。
僕は、そんな組織に幼い頃から所属していた。暗殺術やらなにやら、色々教え込まれた。今じゃ組織No.1の暗殺者になった。
いつ頃からだろうか50人?100人?それとも1000人殺した辺りから周囲では僕の事を『死神』と呼んだ。
「今日は、仕事ないし。外に出かけますか〜」
僕は、身支度をし、家を後にした。
「うーーん。やっぱり春の空気はいいですね。」
「?」
春特有の優しい風のに揺られて一つの帽子が落ちてきた。
「ふーん…一体誰のなんでしょうか?」
「す、すみません。」
声が聞こえた方向を見ると…女性がそこに立っていた。
「あぁ、貴方でしたか。」
「は、はい。」
彼女の見た目は、長い金髪の髪で外国人とにほんのハーフ?その様な顔立ちで、服で隠していて本当かどうか分からないが、所々誰かに殴られたのだろう…腕や、脚に殴られた痕跡の様なものがある気がする。
「風お強いですから、お気をつけてください。」
「ぁ、はい…ありがとうございます。」
そう言って女性に落とした帽子を渡そうとした時だった…
サァー
風が更に強くなり周囲にあった桜の咲いた木から桜の花びらが、風に揺られてひらひらと空を舞いゆっくりと一つまた一つ地面へと落ちていった。まるで、花びらが地面に落ちない様に最初で最後の抵抗をしている様な。
僕は、その光景が死を恐れて遺言を吐くターゲットの様に見えた。
「あ、あの…本当にありがとうございます。」
「いえいえ、気にしないでください。では、僕はこれにて。」
僕は、彼女に帽子を渡して辺りを散歩して家に帰った。
何時間散歩をしたのだろうか?陽が沈み始めていた。何か考えていたかと言われると何も考えてないと思う。
「ふーん。これは不味いかもしれませんね。」
俺は、家に帰って椅子に座りため息をついた。
普通の人にとってはとても綺麗な光景が僕には、汚く見えてしまった。今まで感じたことのない気持ちだ。
プルルル
「さて…」
名前は、ボスからか。
名前を確認し一瞬押すのを躊躇ったが、電話に出ることにした。
「もしもし。」
「私よ…新しい依頼があるの…。」
「ふーん…依頼って言うのは?」
「女を一人どうしてもという依頼人がいるの。写真や、情報は送っておくから失敗のない様に…」
そしてボスは、クスッと電話越しで笑い。
「期待しているわ?」
そう一言いい電話は、終わった。
「ふーん。まぁ、送られてきた情報や写真を見てみますか。」
「…!」
送られた写真を見たら今日散歩して帽子を渡した女性に姿や特徴が似ていたのだ。似ていたよりもほぼ本人と言った方がいいのか…それぐらい似ていたのだ。てかもうこれ本人なのでは?
「ふーん。それにしても気が進みませんね。」
それもそうだろう…今日出会った人を殺さないと行けないのだ。だが命令は命令だ…それに、そっくりさんという可能性もあるかも知れない。重い脚を無理矢理動かしてゆっくりと歩き始めた。
「情報によればここにいると思いますが…ふーん。」
古い一軒家…の様だ。
外から見た感じ電気はついていないが、きっと家にいるだろう。何故かそう確信した僕は、閉じていた鍵を手慣れた手つきで開け家の中へ侵入した。
「にしてもいつもより慎重に進まなくては行けませんね。」
一つ一つのドアを確認してターゲットがいるか確認する。足音、気配も消しているのでバレるはずがない。
「ふーん。この部屋が最後ですか。」
残り一つとなった部屋を調べる。
ガチャ
「来たのね…。」
「……」
「暗いですね。明かりをつけます。」
カチと近くのボタンを押し部屋全体が明るくなった。
「貴方は…」
あぁ、やっぱりそうなるのか…人違いと心の奥深くで願っていた祈りは、叶うことはなかった。
「今日、帽子を拾ってくれた人……貴方、父からの命令かしら。」
「ふーん。それは、言えないと言ったら?」
「良いわ別に…ここに来たということは、私を殺しにきたのでしょう?それくらいわかります。」
さぁ、と言わんばかりに両手を広げる彼女。
「ふ〜ん。」
胸ポケットにある拳銃を出し、彼女に銃口を向ける。
目を瞑る彼女。
僕は目を瞑った彼女を確認してから、引き金を引いた。
「な、」
重力に引かれ撃たれた男は、その場に落ちた。
「残念だけど、君を殺すのは後だ、先に逃げるとしよう。」
「?」
彼女を後ろに背負い急いでその場を後にした。
「こ…ここは?」
「僕の家って言ったらいいかな。」
「そ、そう…私死んだんじゃ…。」
「それが、後ろから気配を感じましてね…依頼の邪魔が入ると面倒ですから、後ろにいた男を撃ちました。」
「そ、そうなのね…。」
ソファに横になりながら僕の話を聞く彼女。
「君を殺す前に一つ聞きたい。」
一度肺に溜めてある空気を全て出し、新鮮な空気を吸ってから彼女に疑問をぶつけた。
「何故君は、そんなにも狙われているのか…そして、君の父親とやらを聞いてもよろしいかな?」
その問いに対して彼女は、ゆっくりと首を縦に振り話を始めた。
「私の父は、研究者兼教授の浅倉よ。」
「ふーん。浅倉と言ったら有名じゃないか…だがあの人が何故娘の君を狙っているのかね?」
「私が、見たからよ…。」
「何を?」
「取引現場を…私の父は表では有名な研究者で、人体について解明したりしているわ…ただ、」
そこから先はなんとなくわかってしまった。
「研究する為に生きた人間を使って解剖や、非人道的な実験をやっていたのよ…私は、たまたま父の資料や、マフィアなどの人と繋がってて、その事を知ったから…父は私の事を消そうとしているの。」
「ふーん。それで…君は逃げてきたというわけか。」
「えぇ。」
「それで、君はこれから僕に殺されるけど怖くはないのかい?」
「怖くないわ…父親がクズだものそんな父親と一緒にいるよりマシだわ。」
「そうか。」
そうゆう彼女に銃口を向ける…。
「さっきの続きよ…」
何秒経ったのだろか…ここまで引き金を引くのを躊躇った人は初めてだ。僕はその場で、悩んでいた。
待ちくたびれたのか、彼女が話しかけてきた。
「貴方…罪悪感はないのかしら…。命令されて動くだけなんて、つまらないわ。」
「……感じたことがない。それに僕は、この世界で生きることにしたんだ…。」
「そう…悲しい人ね。貴方は、人を殺すのが向いてないわ、よく覚えておくことね…これが死ぬということよ。」
そう言い彼女は、僕が手に持っている拳銃を盗み自分の頭に銃口を向け…………………
音が少し遅れてから何度目かもわからない音が鳴り響いた
「人が死ぬということ…。」
感じたこともない感覚が僕の全身を襲った。
今にも吐き出してしまうような、そんな気分だ。
しかし、彼女が引き金を引く瞬間彼女の顔はどこか嬉しそうで、何かから解放されるようなそんな顔をしていた。
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