(二)-10

 「ハトのマーク」「平和で幸せに暮らせるように」そしてこのリング。何か引っかかっていた。

 そこで俺は彼女に試しに「お母さんの名前は?」と質問した。

「母の名前は緑。飯室緑です。グリーンの緑、糸へんの緑と書いてみどりです」

「君のお母さんは、ひょっとして、その両親、君の祖父母に当たる人になると思うけど、その人が離婚して苗字が変わったりした?」

「はい……」

 彼女は名前を続けようとしたが、先に俺が「旧姓は、木坂と言うんじゃないか」と割って入った。

「はい、そうです」

 木坂緑。それにハトのマークの指輪。思い出した。随分前に忘れてしまっていた。彼女の記憶が今、俺の頭の中で次々とフラッシュバックして蘇ってきた。


(続く)

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