(二)-4

「死んだ母親から俺を頼れって言われたんだとさ」

 俺は少女との話を正直に答えた。

「心当たりはあるの?」

「いや、全然」

「心当たりがないのに、普通、女子高生がいきなり訪ねてくるかしら」

 何か勘ぐっているのであろう。そりゃあ、まあ、いきなり子どもが頼ってくるなんてこと、普通の家庭にはない話だ。きっと浮気や隠し子などを勘ぐっているのだろう。

 浮気については、職場に仲がよい女子社員がいるという程度であって、愛人みたいな人間はいない。もちろん肉体関係はない。疑われることはなにもしていない。

 愛生は「ふーん」とだけ言い残し、砂場の子どものところへ戻った。

 今はそれで済んだが、なんとなく波乱の予感がしていた。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る