ハトのリング

筑紫榛名@12/1文学フリマ東京え-36

(一)

 ある初夏の日曜日、俺が小学一年生の長男・秀人しゅうととその妹で四才になる愛実まなみを連れて公園に遊びに行こうとして玄関ドアを開けると、そこにセーラー服を着た少女が立っていた。

 俺のことを見て軽く会釈をすると、少女の長い髪がはらりと前に垂れた。そして姿勢を直して「こちらは安野あんの秀太しゅうたさんのお宅ですか」と言った。

 俺は「ええ」と返事をした。

「私、飯室いいむろかおりと言います。母からここだと聞いてきました」

 ちょうどそのとき、妻の愛生あきが奥から現れた。彼女も一緒に公園に行くのだ。

 そのタイミングで少女は、驚いたことに、「こちらでお世話になってもいいですか」と言った。


(続く)

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