とある少女のつぶやき
霞上千蔭
第1話
「あの子が1年生の中で浮いちゃってるから気遣ってあげて」
部活で言われた言葉。
お前にしかできないから、と顧問はそう言った。
その子は私もあまりよく思っていない後輩だった。
部活をさぼって遊んでばかりいたことで浮いてしまった彼女。正直自業自得とすら思っていた。
でも部内では私にしかできないことというのもわかっていた。
話しかけられたらにこやかに対応、自分からも声をかけたりして、私なりにがんばってきたつもりだ。
でももう、疲れてしまった。
部長や副部長はよく部全体を見ている。
でも私ほど個人個人に気を配っている人物はいないと思う。
なぜ、私だけが気遣わなければならないのだろう。
小さな頃から私がひとりになったとき、浮いてしまったとき、気にかけてくれる人はいなかった。
なのになぜ、私以外の誰かがひとりになったとき、気にかけてやれと言われなければならないのか。
みんなもっと自由に生きて笑っているのに、私はその鎖にずっと縛られていた。
ずっと辛かった。苦しかった。
だからもう、やめようと思う。
声をかけられたら普通に答えるけど、自分から自分の仕事を増やすようなことはしない。
もう少しだけ、自分の好きなようにしてみようかな。
そう考えて、私はベーコンと目玉焼きののったトーストをひとくち囓った。
とある少女のつぶやき 霞上千蔭 @chikage_
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