大喜利芸人の考古学カードバトル

ぬるま湯労働組合

第1話 大喜利大会

 夢にまで見た、大喜利選手権の決勝戦の舞台に僕は立っている。多数のテレビカメラと、観客の目。


 騒々しい効果音とともに、「お題」が発表された。

 黄色いモニターに黒のゴシック体で文字が表示される。


「トイレから出てきた母親が37@ogiri_question?」


 ライバルは4人。もとより、はやさ勝負でいこうと決めていた。

 手元のボタンを連打する。ぱん、と音がして、僕の座る台のランプが光った。


 司会者がマイクに口をつけんばかりにしてわめきちらす。


「ロク選手、はやかった!」


 汗が噴き出す指で手元のキーボードに素早く入力した。


 「2883@ogiri、そして、28@ogiri」。少しの遅延とともに僕の回答が画面に表示される。さざ波のように観客に笑いが広がった。いいぞ、もっと笑え、もっと――。


「爆笑度は66点! ロク選手、座布団獲得ならずです!」


 がっかりする間もなく隣のやつのランプが光る。


 「12@ogiri」。下ネタだ。使い古されたネタだが、タイミングが見事だった。会場が爆笑の渦に包まれる。


「爆笑度92点! 90点を越えましたので座布団1枚獲得です!」


 隣の選手は大喜利番組の常連で、すでに座布団6枚目だ。対して新人の僕は、まだ2枚。先に10枚獲得した選手が優勝だ。


 負けるものか。こっちは生活がかかってるんだ。

 僕は次のお題が表示される前からボタンを連打した。





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