世界のキリヌキ
@YMSK082
次元連合開拓記録
DW0021-PSA0047-P03 “星降る空の”ブルー・スフィア
ヒスパニック系アメリカ人によって集団移民が行われたアンダルシア惑星系植民政府に帰属する植民惑星。含まれる成分の関係で概して土壌が青みがかっていることから、「青い球体」との名前が付けられた。標準世界コードでは、
アンダルシア惑星系は、およそ百万年前のレコンキスタ次元揺動、およびそれに伴って発生した時空断層の痕跡を観測可能であることから、特異的惑星系として次元連合に登録されており、ブルー・スフィアはその第三惑星である。火星と比較的類似した特性を持つ地球型惑星であり、同惑星系において唯一の可住性惑星であったことから、星系植民の最初期に真っ先にコロニーが建造された。
嘗ては豊かな大気と水を湛え、大規模な生態系が構築されていたものとおぼしいが、最新の時空断層学研究によって、レコンキスタ次元揺動の影響により、惑星系全体の摂動に異常が生じ、ブルー・スフィアも自転速度の加速と公転軌道の激変に見舞われたことが判明している。
結果として、天体表層の大気は吹き飛ばされ、温室効果が失われたことで急激に気温も変化。液体の水は揮発して宇宙に逃げ、極冠の氷と地下水だけが残ることとなり、こうした激烈な環境変化に耐えられなかった生態系はほぼ完全に壊滅した。現在では、わずかばかりの微生物が原生生物として地下水中でひっそりと生きながらえるのみである。
なお、ブルー・スフィアの公転軌道には、同星系を周回する彗星が残したものらしきダストトレイルが広範に分布しており、次元揺動の発生以前は、約190日(公転周期の約1/3)の間中、絶え間なく流星群が降り注いでいたものと推定されている。しかし、大気がなくなった現在、そうした宇宙塵はほとんど燃え尽きることなく惑星地表に直接降り注ぐようになっており、それが「星降る空の」などという詩的な通称が付せられるようになった理由である。
当然ながら、かかる状況で地表にまともな開放型コロニーが建造できるはずもなく、テラフォーミングの成果が上がる百年後までは、生活圏近辺に落下天体破砕システムを配した上で、地下に閉鎖型コロニーを埋め込む形で開発が進められることになっている。他方、地表に落着するダストトレイル構成物質は、天文学の分野で非常に貴重な研究素材として扱われており、別の次元世界からも積極的に研究者を受け入れての合同研究が非常に盛んである。
☆☆☆
「言うまでもないが、システムの有効範囲外に出るのは論外だ。分かっているな、ミスター・マイヤーズ?」
「はは、それはまぁ流石に。とはいっても、目の前のお宝を取り逃がさざるをえないのは口惜しい」
「心配せずとも、そのお宝は今後100年間は絶えず降ってくる。自然死願望を持っているのでもないなら、研究はできるだろうよ」
「分かっていないなぁ、警護隊長殿は。鉄は熱いうちに打つものさ」
「それでやけどをするのを分かっていて見過ごすほど、職務を怠慢するつもりはない」
「ちぇっ。残念無念」
――――D.E.0012/06/23 ブルー・スフィア中央コロニー北方連絡通路D4の監視カメラ映像より
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