その10 潜入
「レノン。あなたって、やっぱりすごいわ……!」
「……たまたまだよ。ありがとう」
照れくさくて、僕は扉の向こうを向きながらそう答えた。特にどこも見てはいない。
またもやツイていた訳だ。まさか当たってるなんてね。
ネフの攻撃が通らなかったから思い付いたわけで、言ってしまえばやっぱりネフのお陰だけど、少しは役に立てたんじゃないかな。
――立てたよね。
「私も驚いています……こんなにあっさりと解いてしまうとは。どうして分かったのですか?」
隠すこともないので、全部説明した。
かくかくしかじか。ネフがいたからです。
はぁなるほど、と頷くルノウさん。それから少し、微笑んだ。
「お二人でいる訳が、なんだか分かったような気がします」
「そうよ、レノンはすごいのよ」
いやいや……と愛想笑いを浮かべてしまう僕を尻目に、ネフはへへんと胸を張った。
扉をくぐると、中はぞわり、と冷えていた。
長い間無人だったとは思えないくらい、埃っぽさはほとんど無い。僅かに空気が流れているから、換気システムも生きているっぽい。
……隔絶した技術力だ、まったく。
見渡してみると、部屋は円形をしていることが分かる。目につくのは壁際に沿って、等間隔に並ぶ四角い板。中央にもひとつ、台の上にあった。
ルノウさんは迷わず中央へ向かう。僕とネフが覗きこむ先で、板の縁を撫でる。
ぼぅ、と表面に模様が浮かんだ。
「……管理委員会にも数台、同じものが保管してありますからね。操作や大まかな仕組みなどは解明されています」
慣れた手つきに驚く僕らに、ルノウさんは教えてくれた。数百年経っても動くなんて、とネフが目をぱちくりさせる。
簡素な構造なので壊れにくいんですよ、要するに微小な電球の集合と同じですし。エネルギーさえ来ていれば動きます。
「とは言いましても、我々に作ることは出来ませんけどね。簡素ではあっても簡単な訳ではありませんから――おっと……?」
ぱちぱちと点滅する板の表面、なにやら不穏な記号が表示された。ふむふむ、と目で追うルノウさん。少し、眉をひそめた。
「あの、なにか問題でも……」
「あーいや、大丈夫です。直せば問題ない」
たんたんと叩いて表示を消し、それよりこれを見てください、と切り替える。
促されるまま目線を落とすと、板に表示されていたのは緑の線で描かれたぶどうのような模様……いや、これは制御区画の見取り図だろう。
ルノウさんは一番下の、円形の部屋を指で示し、ここが今いる場所で……、と話し始める。
「向かって正面に扉があります。表示を見る限りではその先に分岐があり、右手へ進むと……ここですね、アクセスポート。ここから故障箇所へアクセスできるはず。簡単で良い。では行きましょう」
心なしか、言葉に焦りを感じるような……。
さあさあ、と急かされて、僕らは部屋を後にした。
(その11へつづく)
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