第17話 動き出す運命






「でも、確かに危険ではあるわね」

「どっちなんですか……」


 亜美さんの言葉を聞いて、呆れながら俺はそう言う。

 すると、亜美さんも真剣な表情へと変わり、俺を人差し指でビシッといった感じで指差してこう言い放つ。


「そこで、智也君! 君の出番よ!!」

「亜美さん。人を指差すのは、失礼な行為ですよ?」


「あら、ごめんなさい…」


 悠の指摘を受けた亜美さんは、人差し指を畳んでグーを俺に向け続ける。

 いや、もうその腕を下ろしていいから。


「それで、何で俺の出番になるんですか? 俺に何か出来るとは思えないのですけど……」

「まぁ、話は最後まで聞いてちょうだい」


 そして、亜美さんは再び真剣な眼差しに戻り語り始めた。


「ほら、悠ちゃんが言っていたでしょう? 君には催眠装置が効かなかったって」

「はい」


「催眠装置は、機械で超能力の精神操作能力を再現したもので、その疑似超能力で相手を思い通りに操ることが出来るわ。そのためそれが効きにくい人間には、超能力に耐性が有るという事になるのよ」


 亜美さんはここからこの話の本題に入る。


「そしてその場合、多くの者は超能力の素質を持っていることが多いのよ(宇宙連邦統計より)」


「そうなんですか!?」


 亜美さんの衝撃的な発言に驚く俺。だが、そんなこと気にせずに亜美さんは話を続けてく。


「そう! だから、YOU、悠ちゃんと一緒に【特別保安官】になっちゃいなYO! YOUと悠ちゃんだって、くくくくっ…」


 自分の言ったダジャレで笑う亜美さんに、俺はイラッとしてしまう。

 しかし、彼女はすぐに笑いを止め真面目な顔に戻る。


「コホン……、つまりね。智也君が【特別保安官】になれば、悠ちゃんの危険減らせるし、私も楽ができる!」


(最後が本音だろう……)


 だが、この残念美人の言う事も一理あり、俺が【特別保安官】になれれば悠を守ることも出来るかもしれない。それに俺自身も【特別保安官】の仕事に興味がある。

 なので、俺は亜美さんの誘いを受ける事にした。


「なるほど……。俺も【特別保安官】になります!」

「では、さっそく超能力が使用できるか調べましょう」


 亜美さんはそう言って立ち上がり、俺にも立つように促してくる。

 そして…


「超能力測定器~」


 某未来から来た猫型ロボットのような言い方で、上着のポケットから装置を取り出す。

 どうして、この人はこう微妙にイラッとくる事をするんだろうか……。


 そんなことを考えていると、亜美さんが測定の準備を始める。


「は~い。それでは、頭をこちらに向けてね~」


 すると、亜美さんはその装置を俺の頭の前に持ってきた。どうやら、これで脳波を測定して超能力が使えるのか調べるようだ。


「準備OK! じゃあ、スイッチ… ポチッとな♪」


 亜美さんがボタンを押して数秒後、目の前に半透明のディスプレイが表示された。そこには、様々な数字やグラフなどが表示されている。


「思った通り、超能力が使えるみたいね。まあ、訓練しないといけないけどね」

「どんな能力なんですか?」


 俺が質問すると、亜美さんは笑顔で答えてくれる。


「わかんない。だって、この機械は簡易型だからね」

「えぇ……」


 期待していただけに、俺はガッカリしてしまった。すると、そんな俺に対して亜美さんは微笑みながら話を続ける。


「宇宙船にある解析装置なら、詳しい事はわかるから早速行きましょうか?」

「はい! お願いします」


 こうして俺は亜美さん、悠と共に宇宙船へと向かう事になった。

 亜美さんは、悠には家に残ってもらうつもりだったのだが、本人が付いていくと言い出したのだ。


「亜美さん、ボクが付いて行くと何か問題があるのかな?」

「いえ、問題ないわ… です… 」


 悠から放たれる圧に屈した亜美さんは、敬語で返事をしてしまう。


「じゃあ、この携帯端末で宇宙船に転移するから、智也はボクの側に来て」

「わかった」


 俺は言われるままに、悠の近くに寄る。


「智也、もっと密着するぐらいに近寄らないとダメだよ」


 そう言って、彼女は自分から密着してくる。

 彼女の身体はとても柔らかく、良い匂いもしてとてもドキドキしてきた。


「智也君。鼻の下伸びてるわよ~」

「なっ!?」


 亜美さんに指摘されて俺は焦る。

 そして、恥ずかしくなったので、すぐに彼女から離れようとする。

 しかし、そんな俺の行動を読んでいたのか、悠は俺の腕を掴んで離さない。


「智也、離れちゃだめ……。転移する時に智也だけ置いてけぼりになっちゃうから」

「うぐっ…… 分かった」


 悠は上目遣いで見つめてくる。その表情を見た俺は、抵抗をやめてしまった。

 もちろんそれは置いていかれないためであり、悠の柔らかい感触から離れるのが惜しくなったわけではない・


「じゃあ、行くよ。転送!」


 音声入力なのか悠がそう発すると、俺達の周囲を光が現れて包み込む。そして、一瞬浮遊感を感じ光が収まるとそこは見知らぬ部屋だった。


 部屋の中を見渡すと、大きな機械があり、その近くには亜美さんがいた。


「ようこそ、私の船へ」


 先に転送していた亜美さんは、そう言いながら俺達を出迎えてくれる。


「亜美さん、ここはどこですか? それにこの装置は何なんでしょうか?」


 俺は気になっていたことを尋ねる。すると、亜美さんは装置の説明を始めてくれた。


「ここは転送室で、これは転送装置の本体よ。さあ、付いてきて。解析装置がある医務室に向かうから」


 亜美さんの説明によると、解析装置の本来の使用目的は脳に異常がないかその状態を調べるモノらしく、超能力を調べるのは副次的な性能らしい。


 そして、俺達は亜美さんの後に続いて転送装置のある部屋を出ると廊下に出た。

 とはいっても宇宙船なので、廊下を少し歩いた所に目的の医務室に到着する。


「じゃあ、智也君。そのカプセルに入って」


 亜美さんの指示に従い、俺はカプセルの中に入る。すると、入り口のガラス製の扉が閉まり、カプセル内のライトが光りだす。


「智也君、もういいわよ。出て来て」


 そして数秒後、亜美さんの声を聞き俺はカプセルから出ると、彼女は俺に話しかけてきた。


「はい、お疲れ様。それで、検査の結果だけど…… あなたの能力は【サイコキネシス】ね。他にも使えそうだけど、まずは一番強力に使えるようになる【サイコキネシス】の使い方を覚える事から始めましょうか」


「はい、よろしくお願いします」


 こうして俺は、亜美さんの元で超能力の訓練を行う事になった。

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