第3話 幼馴染(?)が可愛すぎる
俺は目の前の美少女が、悠の女装した姿だと確信すると話しかけるために、大きく深呼吸をして気持ちを整えると意を決し彼女に話しかける。
「よう、悠!! 女装して俺をおどかすなんて趣味が悪いぞ!」
と軽口を叩きそうになるが、その確信に根拠がない事に気づき恐る恐る尋ねることにした。
「君は悠… 杉村悠… なのか?」
俺がそう問いかけると、悠(?)は一瞬驚いた表情を浮かべたがすぐに笑顔になると、嬉しそうな声で返事をする。
「そんな他人行儀な呼び方でどうしたの? 悠に決まっているじゃない? 私は中田智也の幼馴染で親友の杉村悠だよ。そんな事を聞いてくるなんて、おかしな智也」
そう答えた後、悠はクスクスと可愛く笑う。
(こっちは悠と解らないから聞いているんだよ、俺は! あといちいち可愛いな!!)
そんなツッコミを入れそうになるが、何とか我慢する。
それよりも大事な質問が残っているからだ。
「それで? どうしてそんな格好をしているんだ? その… そんな可愛らしい服を…… 」
俺がオブラートに包んで質問すると、悠は照れくさそうに頬を染めながら答える。
「それは… ね…? 智也との2年ぶりの再会だから、気合い入れて女の子らしい可愛い服を選んできたんだ。どう? 似合っているかな?」
「そうじゃなくて! どうして、女の子の服を着ているのかってことだよ!?」
悠のその答えから、質問の真意が理解されなかったようなので、今度はストレートに聞くことにする。
「どうして、女の子の服って……。それはボクが女の子だからに決まっているじゃない。 ボクだって年頃の乙女だから、いつまでも男の子っぽい服は着ないよ~」
遂に悠から、自分が【女の子】だという言葉が発せられる。
その言葉を聞いた俺は、怒りの衝動を抑えられなくなり思わず声を荒げてしまう。
目の前の悠が本物ならいつまで俺を誂っていることになり、偽物でも俺を騙すもしくは誂っていると感じたからだ。
「何を言っているんだ! オマエは男だろうが!」
「えっ……? 智也こそ何を言っているの!? ボクはれっきとした女の子だよ!?」
俺の言葉を聞いた悠は、信じられないという顔をしながら俺に反論する。
「いい加減にしろよ!! オマエが女の子の格好するのは自由だが、何で俺を騙そうとする必要があるんだ!!」
悠のあまりにも白々しい態度に、思わず怒鳴りつけてしまった。
「騙していないよ!? ボクは正真正銘女の子だよ!? どうして、そんな酷いことを言うの!?」
俺に怒られた悠は、目に涙を浮かべ今にも泣き出しそうだ。
その姿を見た俺は一気に冷静さを取り戻す。
「悪い、ちょっと言い過ぎた…。でも、悠は【男】だろ…? だよな…?」
「違うもん!! ボクは女の子だよ!? なんで、こんなに言っても解ってくれないの!? 」
悠はとうとう涙をこぼしてしまう。
その姿をみた俺の心は罪悪感でいっぱいになり、慌てて慰めようとする。
「わぁ! 泣くなって! ごめん! 俺が悪かった! 頼む! 泣かないでくれ!」
「うぅ…… ぐすん…… もう酷いこと言わない?」
「言わない!!」
俺は即答する。
「じゃっ じゃあ! 責任とって結婚してくれる!?」
「そっ それは…… 」
俺は流石にそのお願いには返答に詰まってしまう。
「出来ないんだ…。じゃあ、許してあげない… 」
すると、悠はほっぺたを膨らませて不機嫌な表情になるが、その仕草がとても可愛らしくつい見惚れてしまう。
そんな俺に悠は
「嘘だよ! ボクと智也の仲だからね。もう酷いこと言わないって約束してくれたから、特別に許してあげるよ♪」
と笑顔で言う。
その笑顔を見た瞬間、俺の心臓はドクンドクンと激しく鼓動を始める。
(なんだよ! この可愛い生き物は!!)
そして、そんな風に俺が心の中で悶絶していると、悠は俺を下から覗き込むように尋ねてくる。
今の悠の身長は165.5cmぐらいで俺の知っている悠より10 cm低い。
そのため俺の身長が177 cmなので、どうしても悠は上目遣いやこのように見上げる体勢になってしまう。
「どうして、智也はボクのことを男の子だって思ったの?」
「それは…… 」
「それは?」
俺は正直に悠に、【男】の悠との思い出を語って聞かせた。
「ふむふむ、なるほどね。つまり、智也の覚えているボクは男の子だったわけか……」
すると、目の前の悠は俺の話に疑問を持たず、素直に納得した様子を見せる。
そして、彼女は俺が話さなかった【男の悠】との思い出や過去の出来事を話し始めた。
まるで、自分が悠だと証明するように。
「どう? ボクの思い出は? ボクが悠だという証明になったかな?」
「ああ…… 」
彼女の語った思い出は、男女の違いがあるのでその辺は少し違っていたが、【男の悠】と体験したモノとほぼ同じであった。
目の前の女の子の悠が、本物の悠から聞き出している可能性もあるが、そうなると語った思い出が詳細すぎており、本人しか知り得ない情報まで出てくるので、悠であることを認めざるを得なかった。
「智也… 何かイマイチ納得していないって顔だね?」
「そんなことは…… 」
俺は図星を突かれて言葉に詰まる。
しかし、悠はそんな俺を見てクスクス笑う。
「ボクはね? 智也の事をずっと見てきたんだよ? だから、解っちゃっうんだよね」
そう言うと、悠は俺の手を取って自分の胸に持っていく。
すると、そこには確かな弾力があり、俺の手に柔らかい感触が伝わってくる。
その感触をいつまでも感じていたい欲望を押さえつけて、俺は慌てて手を引っ込めた。
幼馴染の胸を触る事に、強い罪悪感を覚えたからだ。そして―
「なっ なっ なっ なっーーー!!???」
「智也、”な”しか言ってないよ?」
「なっ なっ なっ なっーーー!!???」
俺は動揺しすぎて言葉にならない声を上げ続ける。
そんな俺の様子を見た悠は、
「ねぇ? ボクちゃんと女の子だったでしょう? 証明になったかな?」
イタズラっぽく笑いながら、悠は俺を見つめる。
「おまっ!? なっ なっ なにしてんだ!?!?」
「だって、智也がボクのことを疑っていたから……。いっ 言っとくけどボクも恥ずかしかったんだからね…。でも、智也なら良いと思って……」
「何が良いんだよ!? 良くないわ!!」
俺達は二人揃って顔を真っ赤にしてしまう。
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「リア充、死ね!!」「リア充、爆発しろ!!」
今回の執筆を終えて、見直した後の作者の正直な感想です…
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