第2話
少女はそれから もっともっと大きくなって、やがておばあちゃんになりました。
少女の頃から変わらずに優しい心を持ち続けた彼女は、村の中でも皆から愛され、幸せな生活を送っていました。
大切に育てた 庭に咲き誇る沢山の花 一つ一つに水をやっていたある日のこと。
ふと、懐かしい記憶が蘇ってきました。
今よりずっと小さかったあの時の、不思議な出会い。
魔女なんて、本当にいたのかどうかも分かりません。
幼い頃の少女が 友達の欲しさから生み出した、幻だったのかもしれません。
こんなに年を取った今、彼女には魔女の顔も、声も、あんなに練習した呪文さえも。
もう簡単には思い出すことができませんでした。
しかし、一つだけ。
魔女から最後に教わったあの呪文だけ、ずっと頭のどこかで覚えていました。
「不老不死、ねえ」
自分のしわだらけになった手のひらを見つめてぽつりと呟いてみましたが、
彼女は魔法の力を使ってまで不老不死になりたいとは思いませんでした。
それに、魔女が自分に魔法をかけさせようとしたのを見る限り、きっと自分で自分に魔法をかけることはできないのでしょう。
そこまで考えてふふ、と笑った彼女は考えました。
どうせ夢だったんですし、せっかく覚えているなら一度唱えてみましょう。
これから先も、お花がきれいなままであればいいなあ。
そんな思いで、彼女はそっと呪文を口にしました。
瞬間、目の前に広がっていた美しい花々たちは朽ち果て、その形すら残さずに全てが灰となって消えてゆきました。
かつての少女はその恐ろしい光景に唖然としながら、
昔見つけた悪い魔女の本と、記憶の中のあの魔女の姿を思い出しました。
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