第5話 ある日~、森の中~、熊さんに~出会った。

 どうやら……、この聖剣エスカーナは魔王と対になる勇者を、一振りで殺すことができる力を秘めているようだ。支離滅裂な言葉を俺は口にしているようだが、武器としての性能は申し分ないだろう。だが、正義の心を持つ者を、 何のためらいもなく殺すのは、聖剣としてはどうなのだろうか。確実に言えることは、この聖剣の機嫌を損ねる行動をとると、とんでもなくヤバイと言うことだ。そんな俺をよそに、聖剣エスカーナが、何かに気付いたようだ。


『でもおかしいですね。ペロペロ熊さんは温厚なモンスターなんですよ。蜜が大好物で、男の人を襲うなんて考えられないです。男は見向きもしないはずなのに…… ああっ、もしかして私の匂いにペロペロ熊さんが釣られて……さっき、わたし……、ベッドでしちゃってましたから、匂いが残っているのかもしれませんね』


「ほぉ、あの熊も蜂蜜が好きなのか。……異世界の熊も同じなんだな」


 聖剣エスカーナのことについては後回しにしよう。まず、あの熊の生態について考えるべきだ。それだけではない。この森に生えている植物も少し変わっているようだ。なるほど……


 俺は、熊だけでなく、この世界のことについて考えることにした。すぐには戻れないのなら、とことんこの機会を利用してやろう。この世界での体験を、論文にして発表するのはどうだろうか。だが、どうやって、まとめればいい。そもそも、信じてくれる者はいるのだろうか。

 

『竜也さん、違いますよ。蜜は蜜でも、女性のアソコから垂れ流れる蜜を、ペロペロされちゃうんです。独身女性に思春期の少女、それに男性の方にもペロペロ熊さんは大人気なんですよ。私も色々と参考にさせてもらいましたから、あれは、本当にすごかったなぁ』


◇◆◇


 ある日~、森の中~、熊さんに~出会った。


 ペロペロ熊さんの前に少女がぽつんと立っていた。見つめ合う少女とペロペロ熊さん。少女は怯えるどころが、ペロペロ熊さんに、寄り添っていく。そして、少女はペロペロ熊さんの前でスカートをたくし上げ、懇願した。


「……くまさん」


 ペロペロ熊さんは、少女のアソコに顔を近づけて、くんくんと匂いをぎだした。その少女をよく見ると、下着を履いていなかった


 そして――、ペロペロ熊さんは、緩急をつけながらリズムよく少女のあそこをペロペロしだした。少女は、しだいに甘い声をあげながら、その快感に酔いしれた。


 数分経って、少女は声を荒げた。その声を耳にした男達は我先にと――、その場に駆けつけた。


 ――だが、彼らは少女から距離を置き、周囲の草むらに潜むだけで誰も助けようとはしない。ただ、見て見ぬふりをするだけだった。なぜなら、少女は自らの身体をペロペロ熊さんに捧げていることを皆が知っていたのだ。ペロペロ熊さんがもたらす快楽を味わってしまった少女はやめるに、やめられなくなってしまったのだ。こうして少女達の喘ぎ声が森中に響き渡るのだった。


◇◆◇


『――感じで男を知らない少女が、まるで娼婦のように喘えでイっちゃうんです。それを覗きにくる男性が、たくさんいましたよ。私ですか? そんなことは絶対にしませんよ。だって私は、竜也さんのものですから、もし、男達が、わたしの裸を見ようものなら、みんな、っちゃいますから、私の蜜を舐めたくなったらいつでも言ってくださいね。あれ、竜也さん、聞いていますか? もしもーし!』


 論文は後にするべきだな。元の世界に戻った後……、このことを黒い日記に書きこむとしよう。異世界にも熊が生息していることをだ。


 黒い日記には、俺の偉大なる栄光がつづられている。タイトルは、“二階堂竜也の栄光”である。ここに日記がないことが悔やまれる。これからのことを考えると、紙と書く物が必要だな。


 なんだ、刀身が光りだしたぞ。手からビリビリした痛みを感じるのだが?


 俺が考え込んでいるとき、聖剣エスカーナに異変が起こりだした。聖剣エスカーナの刀身が薄く光ったり、消えたり、何度も点滅を繰り返したのだ。


 そして――


「うおおおおおっ!! 痺れるぞ! な、なにをするっ!!」


 聖剣エスカーナの柄から大量の電流が流れ出したのだ。身体中にほとばしる電撃、俺は身体を硬直させて、激しい痙攣を起こした。電流の流れが途絶えた時――、俺の身体が崩れ落ちた。


 痺れて動けん。なんてことしやがる。俺がお前に何をした。


 倒れた俺に向かって、聖剣エスカーナは怒った口調で話し始めた。


『無視しないでください。私は、とっても寂しがり屋なんです。わたしを一人にしたら、必ずっちゃいますからね。そうですね。夜は、一緒に寝てください。えへへ。もちろんそのまま襲ってくれてもいいですよ。裸になって待ってますから。アソコは濡らしておいた方がいいですか? それとも、くぱっとあけて待っていたほうがいいですか? ズブブっと入れちゃいますか? どうしよう。困っちゃうね』


 意識がだんだん薄れていく。こいつは、何を言っているんだ。この聖剣は、電流まで流すことができるのか、なんて恐ろしい奴なんだ。

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