第3話 わたしの、すべてを……、みてくださいね
『大丈夫ですよ。竜也さんが死んだとしても私は一生あなたから離れません。たとえ竜也さんが骨になってもです。だって私達は、運命の赤い糸で結ばれていますから。私達の愛を邪魔する者は、たとえ神であろうと絶対に許しません。その時は、殺してでも阻止しますから』
「ふぅ……お前が聖剣であると仮定しよう。属性は光になるはずだよな。お前の言動を見る限り闇属性としか思えないんだが。実は魔剣エスカーナが本名だろう? 正直に言え、今なら許してやるぞ」
『竜也さん、酷いです。私のどこか、闇なんですか? どうみても、私は聖属性じゃないですか。竜也さんを食べてしまいたい――じゅるり、もう骨までしゃぶりたいぐらい愛しているんですよ。それに……私を食べたくなったらいつでも言ってくださいね。私のアソコは竜也さん専用ですから』
ヤンデレで聖属性ってどういうことなんだ。聖人が聖書を武器にして、撲殺しながら「平和的に解決しましょう」と、言ってるのと同じじゃないか。どこかの誰かさんのように包丁、いや、聖剣で刺されて死ぬ運命なんかにはなりたくないぞ。
『竜也さん、心配しなくても大丈夫ですよ。そのようなことが起きたとしても、一人では死なせません。私もあとから一緒に逝きますから。――それでは、戦闘に役立つスキルについてご説明しますね。まず、この映像を見てください』
俺の脳内に映像が映し出された。
名前 二階堂竜也
職業 学生
善行値 50/999
装備 💀聖剣エスカーナ
(アイシテル ゼッタイニ ハナレタクナイ)
学生服
必殺 ホーリブレイク
スキル メガネ
魔法 なし
『名前と職業の説明は、いりませんよね。善行値は、上がれば上がるほど竜也さんが強くなります。それに、なんと999を超えると元の世界に戻れちゃうんです。わーい! やったね』
「なにが、やったねだ。帰れるなら今すぐ帰してくれ」
『えー、そんなの絶対に嫌です。竜也さんと私は、赤い糸で結ばれているんです。でも999を超えると竜也さんが元の世界に帰ってしまう。ああ、もう会うことができないかも……どうしよう……竜也さんと私が結ばれないなら、わたし……、えへへ、そうだよね。他の人と竜也さんが結ばれるぐらいなら――帰る前に
後半部分が聞こえづらかったが。何かこいつは、とっても恐ろしいことを言っているような気がする。 ……こいつを説得するのは、難しそうだ。どうすればいい。このままじゃ帰ることができない。その前にこいつに殺される気がする。ここは、話をそらすべきだろう。
「それで必殺とメガネは一体なんだ?」
『はっ!! そうでした。説明の途中でしたね。うーん、確か善行値について話っていたはずなのに、私は何をしようとしていたんだっけ?』
さきほどまで独り言を呟いていた聖剣エスカーナは、俺の呼びかけで、我に返ったようだ。
『必殺は、聖剣専用のスキルになります。それと、メガネをクイッとかけ直すポーズを決めて周囲を見渡してみてください』
俺は、恰好よくポーズを決めメガネをかけ直した。
≪メガネ≫
スキルが発動しレーダが表示された。
森のそこら中に赤のマークが点滅していた。
『わざわざカッコイイポーズを決めるだなんて、はは~ん、竜也さんって実は厨二ですよね♪』
「黙れ!! それよりこれはなんだ?」
『これは、相手の敵意を色で識別することができるんです。範囲攻撃を行うとき、すごく便利なんですよ』
味方は青、敵は赤、自動的に識別してくれるメガネらしい。それよりもだ。俺の眼鏡をいつの間に改造したんだ。結構、これ、高かったんだぞ。
メガネのフレーム部分に触れた瞬間、何かのスイッチを発見した。これはまさか、あれなのか、よくある自爆スイッチ?
『一緒に死んでください――!!』
その言葉を最期に、聖剣エスカーナは俺を巻き込む形で、粉微塵に吹き飛んだ。
ああ、こいつならやりかねない。
あまりの恐ろしさに俺は身震いした。
『ああ、そうですね。それはそれでいいかもしれません。あの世で一緒になることも……後で考えておきますね。でも残念ながら、それは危険なものではありません。とってもいいものなんですよ。ぜひ押してみてください』
「ああ、分かった。押してみよう」
小さなボタンを恐る恐る押してみた。
すると、何かの映像が見えてきた。
ピンクの可愛らしい鏡台やぬいぐるみ、タンスや机とイス、ベッドが置かれていた、――そんな女性の部屋だった。
「あ、あの、りゅうやさん、見てますか?」
抽選会場で出会った少女が、俺に向かって、手を振っている。
な、なんだと、こ、これは!!
「それでは今から、恥ずかしいですけど、わたし脱ぎますね」
彼女は、白のワンピースを魅せるようにして、ゆっくりと、脱いでいく。
そして、最後の1枚が……
彼女は全裸でベッドへ向かう。
彼女は仰向けになって足をM字にみせるように開脚した。
「……りゅうやさん、……わたしの、すべてを……、みてくださいね」
そう、言って、彼女は自分を慰めはじめた。
銀色の髪がふわりと広がる。赤い瞳が、欲情の色に染め上げていた。透き通る白い肌に形の良い美乳。男を誘う仕草に思わず唾を飲み込んだ。
これは、配信実況中のAVなのか?
ふっ、仕方ないな。もう少し見ることにしよう。なぜ、見るのかと聞かれれば、これにはなにかが隠されている。この異世界で彼女は何かのメッセージを俺に残そうとしている。決して、彼女を
≪メガネ≫
かけ直したことで再びスキルが発動し、レーダが表示された。
そのせいで映像が途切れることになってしまった。
「な、なんだと!? もう少しでいいところだったのに、ふざけんな!! なんでこうなった!!」
俺は、思わず声を上げた。
そのとき――
「くまぁ~?」
俺の怒鳴り声に反応した、赤いマークが急接近しだした。
『あちゃ~、これは、敵に見つかっちゃいましたね』
「……戦闘か」
今は、頭を切り替えることにしよう。油断は死につながる。冷静にならないとな。
(あうっ、あともう少しだったのに――竜也さんがムラムラして我慢できなくなったところで、私が突然、現れて―― そして、お口でご奉仕して、そのまま初体験までもっていけると思ったのに――)
「……聖剣から黒いオーラが滲み出ているような」
この聖剣から俺を狙った邪悪な気配を感じたが、気のせいだろうか。
草をかき分ける音と足音がだんだん大きくなってくる。そして現れたのは、大きな熊だった。
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