あなたは超常現象を信じる? 私は信じる。でも怖いからそういうのは基本的に見ないにゃん
話の内容はこうだ。ことの始まりは、二日前の夜11時半ごろ。
平日は12時前までしか開けていない。閉店の準備を従業員や、アルバイトの人と共にしていた。
そして12時となり、全員居るかどうか点呼をしていた時だ。アルバイトが一人、居なかった。
その一人は、どちらかと言うと真面目な方ではなかった。勤務をしている時は、不真面目ではない。でも報連相を怠ることが多々あった。
とは言えど、急に何も言わずに帰る、なんてことはなかった。
すぐに従業員、全員で彼を探した。
一階、二階、三階と思いつく限りの場所は探した。でも見当たらなかった。
とりあえず今日は遅いから、ということでその日は解散となった。
次の日の朝になっても、彼からは何の連絡もなかった。
ゲームセンターはあれだけ探してもいなかった。
だとすると、そこを出てから何か事件に巻き込まれたのではないのだろうか。
そんなにうじうじ考えても仕方ない。まずは彼の保護者に聞いてみようと思い、電話をかけることに。
すぐに繋がり、彼の母親が出た。
当の本人のことを聞いてみると、バイトに出かけてからまだ一度も帰って来てない。連絡も何もなくて現在に至る、と。
これはただ事ではない可能性の方が高そうだ、となり警察に連絡するように言った。
彼のことは心配だけど、とりあえず警察に任せるとしよう。
自分は今日もお客様の為に、ゲームセンターを開かなくては。
ということで、ひとまずいつも通り開店させた。
店員たちにもきちんと事情を説明した。
みんなまだ心配はしていたけど。
夜11時半前。事件は起きた。少し記憶があやふやで覚えてない部分もある。
いつの間にか気を失っていて、気がつくと誰も居なかった。お客様も従業員も。
自分しかその場に居なかった。人気も何も感じることはなかった。
どの階を探しても、見当たらなかった。
少しパニック状態になっていたから、細かく探せていない所もあったかもしれない。
とりあえず閉店の準備を急いでして、逃げるように帰った。そして今に至る、と。
「もう一回、店の隅々まで探そうと思います。もしそれでも見つからなかったら、夜7時にまたここに車で来ます。もし見つかったら連絡します。連絡がなかったら、さきほど言った通りのままでお願いします」
「わかりました。早く無事に見つかると良いですね」
「お気遣いありがとうございます。それではこれで失礼します」
そう言って礼をすると、穂山さんは出て行った。
「にしても神隠しかぁ。確かに普通の人なら信じがたいお話よね」
「ですね。私も本当にこんなことってあるんだって驚いてます」
ほのかさんが時計をチラッと見た。時刻は9時15分を示そうとしていた。
「にしても、めっちゃ時間余っちゃったね~。あっ、そーだ! 雪ちゃんっ」
「どうかしましたか、ほのかさん」
ほのかさんが私の手を握った。
「雪ちゃんの高校って校則緩い?」
「へっ?」
何でそんなことを聞くのだろう。私の学校は校則は緩い方だ。
髪の毛も金髪とかピンク色とかそこまで派手じゃないのなら、染めてもOKだし、着崩すのも大丈夫だ。
「それに今から空いてる?」
まさかの連続質問。特に何も予定は入れていない。
今日は一日かかる可能性があると思い、そうしたのだ。
「特に何も予定はないですけど……それがどうかしましたか」
「そっか、そっか~。ならさ」
そう言うと私の手を放し、くるりと一回転した。
「一緒にお買い物しないっ?」
そして軽くウインクをした。
「雪ちゃんのイメチェン大作戦っ。もちろん無理強いはしないよ。どーかな」
思考や中身を変えるのも大事だけど、見た目を変えるのも新たな試みで悪くない。
今まで着ていたファッション以外に挑戦するのも、また新しい何かが見えてくるのだろう。
「大丈夫ですよ。それでは、今日は改めてよろしくお願い致しますね」
こうして私の土曜日は幕を開けたのだった。
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