ミスリル

 人類諸君、いわゆる我々は地球外生命体、宇宙人である。どこの星からきたとか、そういうことはこれから話すことにさして意味を成さないので割愛する。

 早速本題に入ろう。

 我々はこの地球と言う星を舞台にして、君たちが言うところのMMORPGを始めるつもりでいる。

 プレイヤーは我々が操るアバターキャラクターで、エネミーは君たち人類である。

 我々は君たちを倒したりして経験値を稼ぎ、レベルアップを遂げたりして地球を蹂躙しようと思う。

 なお、君たちが保有する現有兵器は私たちのアバターキャラには通用しない。銃もミサイルも核兵器もだ。残念なことだが、それだけ技術力の差が君たちと我々の間には存在するのだ。

 ただ。それでは君たちには理不尽だろうし、我々はRPGを最大限楽しむことが出来ない。

 そこで我々は君たち全人類に一人一つ、我々に対抗できる唯一の物質を与えようと思う。

 それはミスリルと名付けた。君たちの世界の物語作品から命名してみたのだが、お気に召してもらえただろうか。

 これからミスリルの使い方について説明しようと思う。


 今、まさに君たちの目の前に黒い球体の金属が出現したと思う。それがミスリルだ。

 質量は君たちの一人一人の体重と同じになっている。つまり人によってミスリルの重量は違うというわけだ。

 ミスリルは所有者の思考によって形状と性質が決定される。

 例えば軽く大きな剣であれ、と念じれば軽く大きな剣に決まるという事だ。

 その思考はより具体的であればあるほど、ミスリルは強い武器となるだろう。その思考時間として、これから七日間の準備期間を君たちは与えることにする。

 ぜひ強力なミスリルの武器を作ってくれたまえ。そうすれば、我々にとって経験値の高いエネミーが生まれることになるからだ。

 なお、このミスリルは十五歳以上の人類にのみ与えられる。それ未満の人類はミスリルを持つ者が守りたまえ。

 ちなみにだが、準備期間の七日後以降に十五歳を迎えた者にもミスリルは与えられるので安心してくれてよい。

 それでは人類諸君、ゲーム開始の日まで準備を進めて欲しい。我々からは以上である。


 というのが、突如世界中の上空に現れた宇宙人の艦隊から全人類に通信された。

 今、八畳一間の僕の部屋に黒い球体の物質が確かに存在していた。ミスリルと呼ぶらしい。そして七日間でミスリルの武器を生成しろと宇宙人は言うのだ。

 いいだろう。妄想は得意だ。凄い武器を創造してやろうじゃあないか。

 形状は何がよいだろうか。刀や弓だとかがすぐ思いつく武器だが、作っても使えなければ意味が無い。剣道も弓道もやっていない僕には使うことは無理だろう。

 そこで僕は糸を武器にしようと思いついた。思念によって自由に操ることが出来、触れた者を切り裂く。丈夫で軽く、伸縮性もあって千切れないミスリルの糸。

 そんな糸を僕は七日間かけて思考し作り上げた。

 

 エネミー管理センターから各エリアマネージャーへ。

 日本エリアの神奈川ブロックで、高経験値を有したミスリルを持つエネミーが出現。

 動向によってはユニークエネミーに設定することを推奨する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る