オレンジがかった夕日が背後の尾根の影を落としている。

ほんの数分前まで降っていた中途半端な雨はすっかり止み、乾き始めたアスファルトにはまだら模様が浮かんでいた。


眼下遠くに見える港の向こうには、やや霞がかった湾が広がる。

ロープウェイに乗って山頂近くまで行けば、胸に重しのかかる景色が見られるだろう。


夕飯の食材を買いに、自転車で坂を少し下る。

Vブレーキのパッドがもうない。

掠れたリムのこすれる音が、苦しそうに響く。


食材を買って、店を出た。

ブレーキシューの替えはあるが、作業をするにはやや暗い。作業は明日の朝にする。


残り少ないインスタントのコーヒーを薄めに淹れながら、窓からぼんやりと街灯を見つめる。

眠気とも倦怠ともとれる低い重低音のようなものが、頭の中を包み込む。

静かすぎても、眠れない。


電気を消して、夜を生きていく。

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