とうひこう
川口 暗渠
1
その部屋からは、海が見えた。
天気が良いと、遠く水平線の奥に湾の対岸も見える。
部屋は少し高台にあって、海からは標高にして100mほど登ることになる。
直線距離はあまりないため、帰りはひたすらに登りだった。
僕がその街に来たのは夏だった。前にいた街とは規模も立地もまるで異なり、なにより距離が離れていた。
どこでも電子的につながってしまう世の中で、物理的な距離は大切だ。
自分を置き去りにしてでも、一度距離をとってみるべきだと僕は思う。
僕は遠くへ来れただろうか。
記憶の隅に半ば根付いた、得体の知れない人生の一端から、逃れることができるだろうか。
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