031

■■レオン=アインホルン ’s View■■


 具現化リアライズ同士の激突。

 今日、俺は初めてそれを見た。

 これまで俺が切り捨てて来たのはヤクザ紛いのごろつきや、小型の魔物だけ。

 新人類フューリー同士や魔物との戦いで生じる魔力の衝突は見たことがなかった。


 武と凛花の徒手空拳同士の不思議な技。

 具現化として目に見えないが明らかに魔力操作をしている。

 激しい魔力のぶつかり合いで生まれる白と緑の花火に戦慄を覚えた。

 気付けば「すごい」と自然に口にしていた。

 これが魔力の相殺・・・!!

 その光景に鼓動が激しく脈打つのを感じた。


 武は何度も凛花とぶつかり合っていた。

 徐々にその威力を上げ、とうとう相殺するところまで到達していた。

 何という学習能力だ!

 たった2時間足らずでそこまで上達するというのか。

 俄然、俺自身の中に宿る具現化ちからを試してみたくなった。

 今のあいつにどこまで通用するのか。


 そしてその機会はすぐに訪れた。

 凛花の指示による俺達と武の模擬試合だ。

 いけ好かない生徒会の奴らに挨拶する切符を賭けて。



 ◇



 俺は初めて全力でカリバーンを振るった。

 たとえ自動車のような鉄の塊であっても真っ二つにしてしまう俺の固有能力ネームド・スキル

 これまで必要性もなく機会もなかったので、最大出力を意識したことはなかった。

 だが先程の凛花との戦いを見て心に宿った炎がその枷を外していた。

 武ならば手加減は不要だと。



「武! 今は俺がお前の横に立つぞ!」


「できるもんならやってみやがれぇ!!」



 どこかで俺は喜んでいた。

 全力を出して超えるべき相手に出会えたことを。

 俺と肩を並べるヤツがいたことを!

 あの日の無力さを上書きできる日は遠くない。

 さぁ見せてくれ!

 俺はすべてを乗せてカリバーンを振るった!



「いけえぇぇぇ!」


「おおおおお!!」



 そうして放った俺の渾身の一撃は雲散霧消した。

 信じられなかった。

 すべてを切り裂くと思っていた俺のカリバーンが、あいつの魔力に打ち消されたのだ。

 俺の技術が、俺の魔力が未熟だと突きつけられた。

 お前など取るに足らぬと言わんばかりに。


 そのとき俺の奢っていた矜持は砕かれた。

 思わず逃げ出したい衝動に駆られた。

 だがその場で降参をするわけにはいかなかった。

 そうすれば武ひとりに生徒会との戦いを任せることになる。

 それこそ、俺の矜持は微塵に消え失せてしまう。

 だから俺は恥を忍んで隙のできたヤツの首筋に大剣ツヴァイハンダーを当てた。



「勝者、レオン」



 俺はこのときの凛花の言葉ほど屈辱を感じたことはない。

 這って勝利を掴もうとする武の手を無情にも足で踏み潰し、これ見よがしに拾い上げたのだ。

 そんな俺の姿を呼びつけた言葉だ。

 卑怯者と罵られても文句は言えまい。

 だがこの場に集った協定参加者たちは何も言わぬばかりか俺を称賛していた。

 誰も俺の心情など推し量る由もなかったろう。



 ◇



 俺はまたも目を疑った。

 ヤツは文字通り満身創痍だった。

 結弦の居合で右半身を砕かれふらふらなのだ。

 あそこから動けるものなのか。

 俺では痛みと屈辱に苛まれて蹲るのが関の山だ。

 倒れながらも勝利を掴み取った武に、ただただ称賛の言葉を贈りたかった。


 その想いが俺を動かす。

 倒れた武の元へ自然と足が赴いていた。

 彼を抱え上げ聖女のいるところへ運ぶ。

 武からはひゅうひゅうと変な呼吸音が聞こえる。

 肺にダメージがいっているようだ。

 本当に限界だったのだろう。

 南極のときを思い出してしまう。

 その弱々しい呼吸に涙が出そうになった。


 南極のときは素人だった。

 入学時も変わらず素人だった。

 たった2週間。たったの2週間で俺よりも前に出たのだ。

 どれほど自分を追い込んでいたのか想像もできない。

 こいつの熱い想いは正面から全力でぶつかった俺が誰よりも理解した。


 俺はこの先、武と並んで歩けるのか。絆を作る資格はあるのか。

 この日から俺は何度も自問し続けることになる。

 黒髪から覗く武の無防備な寝顔。

 思わず触れたくなってしまう。

 俺はそれをあまりに尊く美しく感じていた。



 ◇


■■九条 さくら ’s View■■


 わたしは小学校の頃に武道全般を習いました。

 弓道をはじめ、剣道、柔道、合気道、躰道、薙刀。

 どれも一朝一夕では身につきません。

 親の言うとおり過密なスケジュールをこなし毎日へとへとになっていました。

 その中で得意な弓を中心として習い事を絞っていったのは自然な流れでした。


 対照的に高校まで武道を嗜んでいらっしゃらなかった武さん。 

 闘技部へ通った僅かな期間で徒手空拳を使えるようになっていました。

 しかも不思議な魔力操作によるものです。

 よほど訓練されたのでしょう。

 白の具現化リアライズさえ使えるようになっていたのも納得がいきます。


 その武さんが仰ってくれました。

 「さくらも強くなってほしい」

 わたしを対等に扱ってくれている、わたしへの新しい、大切な想いです。



 ◇



 武さんからわたしへの想い。

 中学の頃は「守ってやる」でした。

 当初、武さんに庇護されることが嬉しかったのです。

 ただそれが親が子供を守るようなものだと気付いたのは随分と経ってからでした。

 子供扱いは嫌!

 対等な立場でお隣にいたい。

 折角、武さんや橘先輩のお陰で親の呪縛から逃れたというのに。


 武さんはわたしの太陽です。

 あの寝坊して欠伸をしている姿も。

 誤魔化すときに俯いて頭をぐしゃぐしゃとかく癖も。

 言い寄られて赤くなった時の困ったような慌て顔も。

 ぜんぶ、わたしにとって眩しくて素敵な仕草です。


 貴方に見てもらいたい。

 貴方と共に歩みたい。

 貴方をもっと感じたい。


 わたしは武さんが南極から帰られてから対等に見てもらえるよう頑張りました。

 弓道だけでなく小学校の頃に止めていた武道全般も休みの日に取り組みました。

 少しでもお隣に立ってもよいと認めてもらえるように。


 悲しいすれ違いもありました。

 それでもわたしは信じて頑張り続けました。

 そうしてこの高天原へ入学するときにはお隣を歩いても良いと言ってもらえました。


 レオンさん、ソフィアさん、結弦さん、ジャンヌさん、リアムさん。

 ここではわたしのほかに武さんを慕う人が増えました。

 でも、わたしはもう焦りません。

 わたしがわたしとして選ばれるよう精進するのみです。

 気持ちを押し付けるだけでは武さんには響かない。そう学びましたから。


 貴方にいただいた言葉。

 強くなって欲しい、一緒に頑張ろう。

 貴方の変わらぬ暖かい想いがわたしの背中を強く押します!



 ◇



「さくら、痛くても知らねぇからな」


「武さんもです。刺さっても恨まないでくださいね」



 いつもの武さんのぶっきら棒な言葉。

 わたしも同じように返してみました。

 戦う前だというのに笑みが溢れてしまいます。


 こうして貴方と対峙してみて初めてわかりました。

 戦う強さがあってこそ守ることができるのだと。

 貴方はこれまで、わたしを守ろうと頑張ってくれていました。

 こうして強さを携えて一歩前に出ていただいていたのですね。

 わたしも今日、一歩前に出ます。

 貴方がわたしを守ろうとするのと同じくらい、いえ、それ以上にわたしは貴方を守りたいのです!

 今日はこれまで培ってきた強さを見ていただくときです!



「あと70本です!」


「射るの早すぎだって!」



 模擬戦とはいえ実際に人に矢を射ることに抵抗がありました。

 でもレオンさんとの戦いを見て、遠慮は要らないのだと悟りました。

 これで怖気づくのであれば明日の本番で貴方と一緒に歩めないのですから。


 武さんはわたしの早射ちを難なく躱していらっしゃいます。

 100メートル以上あるとはいえ速度は相当です。

 ぜんぶ、見えていらっしゃるのですよね。

 


「あまり動くと変なところに当たってしまいます!」


「止まってても当たるよね!?」



 先読みも直感で読まれているようです。

 動く人を狙うのがこれほどまでに難しいとは!

 わたしに足りなかったのは実戦だと改めて感じます。



「近いと狙いやすいです!」


「獲物は逃げるもんだ!」



 とうとう手前まで武さんがやってきました。

 弓を持ったままでできる選択肢は多くありません。

 それを見越して武さんがこちらに来る予想もついています。

 わたしの鍛えた強さを見ていただくのはここです!



「もらった!」



 彼が狙う一歩。それをわたしが狙います。

 最後の矢を射ったら弓を手放し10歩前へ。



「はいぃ!!」


「えっ!?」



 彼の手を取り、着地前の勢いを生かしたまま合気の呼吸投げ!

 身体を回転させ地面に胴を叩きつけ腕を固めます!

 痛くしますがこれも必要なことです!



「そこまで! 勝者、さくら!」



 凛花先輩の審判の声。

 そう、武さんに認めていただく大切な審判です。



「やりました、武さん!」



 思わず喜びの声が出てしまいました!

 武さん、見ていただけましたか?

 これでようやく貴方と一緒に進めるのですから!!



 ◇



 ・・・。

 ・・・。

 投げるために貴方の腕を掴んだとき。

 どうしてか、少しだけ貴方の気持ちが伝わってきました。


――酷い目に遭うのは俺だけでいい。

――お前らは戦ってくれるな。


 ああ、いつものお優しいお気持ちです。

 でもそんなに背負い込まないでください。

 今度こそ貴方の背負っているものを少し分けてください。

 わたしもご一緒しますから。

 おひとりにはしませんよ!


 ・・・。

 すべてを終えてレオンさんに抱かれているそのお姿。

 いつものお寝坊のようで、つい口づけしたくなってしまいました。



 ◇


■■ソフィア=クロフォード ’s View■■


 ふふふ。

 わたくしの見立ては正しかったわ。

 今日という日にこれほどまでの人が集まったのだから。


 さくら様を惹き付ける武様の魅力。

 その魅力に惹かれたからこそ、この場にSS協定の実力者が揃ったのよ。

 皆、AR値が60ほどの有望株。

 高天原学園の歴史でこれほどまで突出した人材が集った年はないわ。


 おまけに一昨年の主席、楊 凛花様と、『白の女神』飯塚 澪様。

 ああ、この場の全員をわたくしのもの・・にしてしまいたい!

 皆様の顔を見るだけで胸が高鳴ってしまうわ!

 わたくしの夢に一歩、近付けているのだから。



 ◇



 この場の中心は武様。

 武様に近付くことが他の皆様を手に入れるいちばんの近道!

 明日の舞闘会、わたくしも当然に参加させていただくわ。


 そのチケットを得るための武様との模擬戦。

 レオン様やさくら様との戦いを観察して参考にする。

 彼の戦い方はとても奥深い。

 柔にして剛。

 剛にして柔。

 かの徒手空拳を表すならこの言葉。

 攻めと引きをよく理解している動きだわ。


 リヒテナウアーを祖とするわたくしの刺突剣術。

 先、後、柔、剛、間。

 いつつの作法が刺突剣術の本質であり心構え。

 これは武様の戦術と共通するところが多い。

 つまりは彼が強敵だということ。


 戦いはいつも怖くて緊張してしまうの。

 でも今日は武様がお相手のせいか自然と動けるのが不思議だわ。



「武様! 足手纏いでないことをお示しいたしますわ!」



 わたくしが最も得意とする先の場。

 先制攻撃で場を支配する方法!

 武様、これでいかがでしょう!!



「強いの知ってるって言ってんじゃん!!」


「でしたら参加をお認めくださいませ!」


「駄目だって! おわったった!!」



 ええ!?

 何ですって!?

 高速突きから乱れ突きの連携が見切られているわ!

 すべて躱しているなんて信じられない!



「悪いが速攻で行くぞ!」



 しかも間合いを取られた!?

 間を支配されるとは不覚すぎる。

 武様の素早さは人のそれではない。あれが具現化リアライズ

 次の一撃に覚悟を決めなければ。


 騎士の構えでいかようにも迎撃できるように。

 得物の尺はわたくしが有利。

 後の先、カウンターをお見舞いするわ。



「いくぞぉ!!」



 武様が飛び込んで来る!

 そう、その動きはカットイン。

 左右に翻弄した後に攻撃する動きだわ!

 であれば対処法もひとつ。

 攻撃点になるべき場所を突く!



「はっ!」



 ぎぃぃん!


 え!?

 素手で鋼鉄の刺突を正面から弾いたの!?

 さくら様の矢は木製だからとばかり・・・!

 誤算だわ!

 慌てて飛び退くわたくしは隙だらけ。

 明らかにわたくしの負け。


 でも武様はそのまま結弦様を攻撃に向かった。

 ちらりとこちらを一瞥だけして。

 わたくしは見逃されたのだわ。

 屈辱・・・。

 これでは武様に近付けてなどいない。

 転がって来た勝利など価値はないもの!



 ◇



 自らを弱いと、戦い方を知らぬと称していた武様。

 ただの2週間でわたくしを上回る力を得た。

 何度も立ち上がる気概。逆境でも諦めないその意志力。

 ジャンヌ様とリアム様を御したのも当然だわ。


 やはりわたくしの目は間違っていなかった!

 ああ、貴方を手に入れたい!

 さくら様、わたくしは負けない。

 必ずわたくしがものにしてみせる。

 武様、きっと貴方をわたくし色に染めて差し上げますわ!


 ・・・。

 気を失いレオン様に抱かれる武様。

 このおふたりも絵になるわね。

 ふふ、まとめていただいてしまいたいくらいだわ。



 ◇


■■玄鉄 結弦 ’s View■■


 「目に頼るな」

 何度も聞いた親父の言葉。

 だけども見えなければ斬れない。

 漫画やアニメのように心眼など無いのだから。

 オレにその意図するところはわからなかった。


 オレの居合は及第点。

 ひとつ下の弟、嵐張らんばるはオレを置いてさっさと皆伝した。

 親父を超えなければ皆伝はできない。

 焦りばかりが募っていた。


 日々の修練は飽きるほど積み重ねた。

 それ以外の何かが足りないのだろう。

 幸い、オレは高天原学園へ入る能力があった。

 有能な者を世界戦線へ輩出する学校。

 そこに何かヒントがあるのかも知れない。

 そう考えたオレは高天原学園に入学した。



 ◇



 入学して早々にオレは驚愕した。

 オレのAR値は人並み外れていたはず。

 日本人で1番だと思っていた。

 だけれどもそれ以上に身体から魔力を溢れさせている人がいた。

 日本人だ、京極 武というらしい。

 一見パッとしない普通の学生だというのに、何故か目を奪われる。

 溢れる魔力のせいだけではない、何か可能性のようなものを感じる。

 彼と居れば何か掴める予感がした。


 あの白銀の弓取りと噂されていた九条 さくら。

 彼女のAR値はオレと同格と聞いていた。

 当代の天才とも囁かれていた彼女がオレと同じクラス。

 それもびっくりした。こんな有名人と一緒だなんて。

 その彼女は武にぞっこんだ。

 彼は一体、何者なのか。


 彼を囲うというSS協定に参加した。

 レオン、ソフィア、ジャンヌ、リアム。

 いずれもオレと同格の能力を秘めている。

 傍にいるだけで鳥肌が立つくらいだ。

 もちろん、あの九条 さくらも参加していた。

 クラスの気になるメンバーが勢揃いした。

 彼ら彼女らと訓練できれば修練が捗りそうだ。

 とても幸運だと思った。


 皆の中心にいる何の変哲もない男。

 だというのに気になって仕方がない。

 なんだろう、小学校の頃にした片想いのような、胸がざわざわする感じだ。

 もしかして、そうなのか?

 彼に居る理由を問われ「感覚的だな」と言われた。

 そうなのかも知れない。


 彼はレオンやリアムみたいな美形でもないのに、どうして?

 間近で揶揄ってみた。

 少し眠そうな瞳が何とも可愛らしかった。

 それだけでどきりとした。

 慌てて顔を赤くして逃げた彼を見て、心がほわっとした。

 ああ、これはそうだ。

 やっぱりオレは彼に惹かれているんだ。



 ◇



 皆伝のためのヒントを探す。

 そう、勘当されないための方策として入学したはずなのに。

 いつの間にかオレは武に近付く方法を探していた。


 土曜日の午後にレオンやジャンヌと切磋琢磨する。

 オレの修練の一環として習慣化したい。

 他流試合は勉強になる。

 間の測り方もタイミングもまったく異なるから。

 きっと続ければ何かを掴める。

 こんな素晴らしい修練の環境があるというのに。

 それが二の次になっていることに自分でも驚いた。

 


 ◇



 彼が代表に選ばれた舞闘会。

 その彼を補助するためにオレも舞闘会へ参加したいと希望した。

 そのために彼と模擬戦をすることになった。


 オレはソフィアとペアで武と向かい合った。

 凛花先輩の指示とはいえ2対1。

 おまけに彼は連戦だ。

 これで負けるなんて実力が無いと示すようなもの。


 卑怯を自覚したオレは待ちに徹した。

 神経を集中し武がこちらへ攻めてくるのを待った。

 どうやらソフィアが突破されたそのとき。

 これまでに感じたことのない緊張感の中で。

 抜刀に力を入れた瞬間に見えるはずのないものが見えた。

 ぴりぴりと肌が感じるものが俺の思考まで届いたのだ。

 武に突破され、彼の拳で殴られる光景が。

 オレの居合をその身体に受けているのに、だ。


 瞬間、オレは最大の攻撃力が出る技に切り替えた。

 胴への斬撃に加え、打撃を上乗せする。



「二の型、双撃!」



 果たしてオレの全力の一撃は極まった。

 武は胴で居合を受け、拳で鞘を受けた。

 危ない。鞘の一撃がなければオレが殴られていた。

 さっき見えた光景は何だったのだろう。


 この戦い、ソフィアとのペアでなければ武はあんな無謀に正面から攻めてこなかったろう。

 何歩も譲ってもらっての勝利だ、武には遠く及ばない。

 オレの道はまだ遠い。



 ◇



 入学当初、何もできないと言っていた彼は知らぬ間にオレより先に行っていた。

 このままでは置いて行かれてしまう。

 彼の傍にはSS協定の優秀なメンバーがいる。

 オレである必要がない!


 せめて、彼と同じ場所に居られるレベルに。

 もっと強く。

 もっと高みを目指して。

 修練をする強い理由ができた。

 道場の勘当などどうでも良い。

 「人が戦うのに高潔な理由は要らない」

 顔も知らぬ誰かの言葉にオレは心底同意した。


 ・・・。

 レオンに抱かれ穏やかな寝顔を晒した彼を見て。

 その頬に触れたいという衝動を覚え。

 オレが本当に欲していることをどうしようもなく自覚させられた。







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