1章 雨

雨音

華side


関口先生の長い長いSHR。

なにか重要なことを話してるぽいが長すぎて何処が大事なのが分からないのが関口先生の悪い所だと思う。生徒想いでいい人なのは知ってるけどさすがに長い。


外を見れば、傘をさして帰っている生徒がひらほら見えた。どうやら私達のクラスが1番最後ぽい。…この雨は止みそうにはなさそうだ。


教卓の方を見ればまだ話している関口先生に苦笑しながらスマホを確認する。LINEが数件来ていた。送ってきた人は見なくても分かるいつものメンバーだ。


いつものメンバーとは、堂島美晴・柚木要・柊木颯。そして私の4人のグループ。全員が見事に席がバラバラでこうしてLINEで話してることも多くはない。


〖ねぇ、まだ終わんないんだけど〗

〖新記録…達成するかもな〗

〖いいからお前らLINEすんなよ…〗

〖華〜!要がメモってくれるって!〗

〖んな事言ってない〗

〖要俺にも〗

〖要くんありがとう〗

〖…はぁ。美晴以外なら〗

〖なんでよ!!〗


たわいもない事でゲラ笑いできるこの4人のメンバーが私は好きで思わずスマホを見て笑ってしまった。この中に…宗介もいたらよかったのになんて叶うはずもないのに思ってしまうのはまだ私が宗介を好きだからだろう。いい加減諦めないと行けないのに、あの日の約束を破りたくはないと思ってしまうのだ。


「はーな!」


「わぁ、びっくりした。。どうしたの?」


「それはこっちのセリフだ。とっくにSHRは終わって声掛けても何も反応しないから」


「心配したんだって。要素直じゃないよね…はぁ眠い、帰ろ」


「別に心配とか…お前はいつもマイペースだな颯」


「どーも、それが俺のよさだからね」



いつの間にかクラスには私たち4人しか残っておらず、要の言う通りSHRは終わっていたらしい。颯のいつも通りのマイペースさを華麗に交わしていく要に、私の前の席に座りゲラゲラ笑ってる美晴。いつも通りの放課後、変わらない日常にほっとしながら机の横にある鞄を手に取った。


「帰ろう。雨酷くなる前に」


さっきよりもより一層酷くなっていく雨。

私達は早足で玄関へと向かった。




「課題終わる気しない…要…。」


「俺は助けないからな?」


「ちっ…」


「またやってるよあの2人飽きないねぇ」


「美晴、食べながら話すのやめなよ」


「だーいじょーぶ!飴ちゃんだから〜!」


「そうじゃなくて…」


上から見たらきっと紫陽花のように咲く傘に雨の雫が零れ落ちる。どうやら今日は課題が多いらしい。要から後で範囲を教えてもらうとして勉強は兄に教えてもらうとしよう。


「それにしても雨やまないね」


「…そうだね」


いくら梅雨の時期だとしても今年は去年の平均を超えているらしい。これは暑くなる予感だ。そして美晴の何気ない雨がやまないの一言に少し胸がざわめく。あの時と同じ気持ち…ダメだ今は忘れよう。宗介はもう居ないんだ。


「華?」


「…あ、ごめん。なーに颯」


「特に…なんでもないけど、無理しないでね。最近の華なんか…疲れてる」


この男普段はマイペースなくせによく人の事見てるんだよな。だから気が抜けない

いつも通りの笑顔を見せ ”大丈夫”と言えば納得したようだ。




「じゃあ、また明日」


「「「また明日」」」


玄関まで送ってくれた3人に別れを告げ私は家へと足を進ませた。


雨はまだ降り続いている。

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