滴の波紋

高山長治

第1章 きっかけ


寺田真奈美、二十五歳。独身で彼氏いない歴約一年。但し、以前は数人の男性と付き合う経験があり。仕事は会社勤めの事務職で、ほぼ五時には業務が終わる。

従って、毎日が忙しいわけではない。たまたま今日は、決算日近くの業務処理の関係で、朝方、今日中に終わらせようと目論んでいたのだが、はかどらず定時で終われないまま、若干の時間超過となっていた。

そんな真奈美だが、別に残業しても支障があるわけではない。なぜなら仕事を終えたとて、彼女にはデートする相手もおらず、習い事や女友達を誘っての遊びごともなかったからだ。それ故、普段は定時で終わり、たまには寄り道をするが、ほとんど自宅と会社の往復で終えることが多かった。

勿論、今までずっとそうであったわけではない。過去には彼氏がいた時もあり、愛し合い心時めく日々を過ごしていたが、結局は長続きせずというか、あまりにも彼女の一途な想いが熱くなりすぎて、彼氏には荷が重すぎることとなり別れる羽目となっていた。

それも一度ではない。何人かの男性と付き合い、深い関係に進展したこともあるが、兎に角、今はいないのである。彼女に問題があったわけではなく、たまたま付き合った男性に縁がなかっただけのことである。さりとて真奈美にしてみれば、どの別れも納得できえぬものであった。相手のことを想い、己の愛をまっしぐらに注ぎ込み、その見返りの愛情を強く望む恋。そんな激しい恋愛を求める。それが相手にしてみれば、時に重荷になることさえある。耐えられぬと、別れを切り出された彼女の落胆ぶりや辛さは、心に深い傷として残る結果となった。

私のどこがいけないの……。あなたを心の底から愛しているのよ。それなのに、なぜあなたはさよならするというの。私の愛が足りないの、それとも他に好きな人が出来たから……。

絶頂期に、突然告げられた言葉。「お前とは、もう会うのはよそう。携帯電話の登録から俺の番号を消してくれ」と、冷めた口調で告げられた。

それにより受けたショックは計り知れず、二度と恋などしたくないと、強い男性不信に繋がって行くのだが。その都度、裏切られることによる苦い経験のトラウマを持つ真奈美でも、やはり若き娘である。時間が経てば懲りずに異性との熱き恋にまたぞろ憧れ、満たされたいと願う気持ちが生じることに変わりはなかった。

ただトラウマにより、自分からそんな機会を積極的に作ろうとはしなかった。それは恋人ができても、また裏切られるのではという不安、否、恐怖心が心の片隅にあったからである。

そんな有体でも、過去に心に刻まれた刺激や悦びという男性経験が疼き、忘れられずにいた。彼氏と過ごしたデートでの甘い恋の囁き、そして濃密な男女の出来事が、時として甦ってくると、一時的にせよトラウマを凌駕し、たまらなく恋しくなるのだ。それこそ女の性というものか、彼女自身には分からなかったが往々にして生じていた。それは若さゆえの特権かもしれないし、彼女の持つ優しき心根なのかもしれない。

いずれにしても、そんな複雑な思いの真奈美に、ふたたび恋人が出来る機会が訪れことになる。


同じ職場で、隣に座る同僚が呟く。

「それにしても、忙しかった……」

そう振り返えり、息を抜くと、キーボードを打つ音が耳に響き、ついと腕時計を見る。終業時間近くを指していた。

「あら、もうこんな時間なの。どおりで疲れたわ……」

丸まっていた背筋を椅子にもたれ、背伸びをした。そして、隣でパソコン画面を睨む寺田真奈美に声をかける。

「ねえ、寺田さん。もうそろそろ時間よ。終わりにしない?」

すると真奈美が、腕時計を見てキーボードを打ちつつ応ずる。

「あら、もうこんな時間なの。夢中だったので気づかなかったわ」

「真奈美さん。これからの予定は?」

「別に……」

気もそぞろに返すと、、由紀子が食事を誘う。

「そう、それだったら一緒にお食事なんかどう。何だか今日は、少し飲みたい気分なの。一緒にどうかしら?」

真奈美にしても、このまま家に帰るつもりはなかった。残業を終えたら、ぶらっとデパートに寄る予定でいた。

それ故、誘われて好都合だった。

「そうね、行こうかしら」

手を止め由紀子に目を向ける。

「由紀子さん、何処かお気に入りの店でもあるの?ちょっぴり高くても雰囲気のいいところがいいわ」

彼女の希望に由紀子が応える。

「ええ、ついこの前から、通い出したお店なんだけど、落ち着いていて素敵なお店があるの。お料理の方もまあまあだし、値段もリーズナブルなのよ。ここからだと少し離れているけれど、いいところなので、そこにしようと思っているの。真奈美さんどうかしら?」

「あら、由紀子さんが推薦のお店なら歓んでお供するわ。それじゃ、少し待って下さる。この仕事あと少しで終わるから。これを片づけたら由紀子さんの携帯電話に入れるわ」

「ええ、いいわよ」

告げるとすぐに、真奈美は残り仕事をやり出していた。ほどなくし終業のベルが鳴り、由紀子が席を立つ。

「それじゃ、真奈美さん。電話、待っているわね」

「ええ、すみません。三十分ぐらいで片づけますから」

「分かった。それまで時間潰しているわ」

告げて職場を後にした。

こんな誘いは、めったにないことである。そこで真奈美は、急遽限られた時間の中で、集中し仕事を片づけることにした。

一方、誘った由紀子は、待ち合わせ時間までの間に小用を思い出し、済ませるため目白商店街へと出向き済ませるも、少々時間を費やしてしまう。、

あらっ、いけない。少し時間がかかってしまったみたい。急がないと、真奈美さん待っているかもしれないわ……。気を揉みながら、待ち合わせ場所のドトールの店先へとくると、すでに真奈美は手持ち無沙汰なのか、携帯電話の画面を見ながら待っていた。

近づき、由紀子が申し訳なさそうに声をかける。

「ご免なさい、真奈美さん。遅くなってしまって。待ったんじゃないの?」

「いいえ、私も今来たばかりなんです。私の方こそ仕事が遅くなって待たせてしまい、ご免なさい」

逆に真奈美が詫び、己の非を告げた。

「三十分ぐらい待たせたんじゃないかしら。急いで片づけた心算なんですけど、なかなかはかどらなかったの…」

「あら、大丈夫よ。ちょうどよかったの。済ませる用事もあったし、気になさらないで。それより、早く食事に行きましょう」

「ええ、そうね。由紀子さんのお薦めのお店って、何処にあるのかしら?」

二人で表通りを歩きながら真奈美が尋ねると、彼女が応える。

「新宿なの。ここからタクシーで行こうかしら」

車の走る道路の方を見つつ片手を挙げる。すぐにタクシーが寄ってきた。

真奈美を先に乗せ自分も乗り込み、運転手に告げた。

「新宿へ行ってくれる?」

運転手が無愛想に、「はい」とだけ応え、車を走らせていた。

「ねえ、さっき。お誘い頂いて三十分も待たせてしまい、本当に悪かったわ。ご免なさいね。ところで由紀子さん、先ほどの用事の方は済んだの?」

「ええ、もう済んだわ。いいえ、大した用事じゃないのよ」

「そう、それならよかった。でも私、愚図だから、なかなか仕事終わらなくって、直ぐに出られず心配したの。用事片づけられたと伺って、ひと安心したわ。ところで由紀子さん。これから行くところ、どんなお店かしら?」

「そうね、実際に行って雰囲気を味わった方が分かると思うわ」

「本当、それじゃ聞かない。けれどお店の名前くらいは知っておきたいな」

「そうよね、これから行くお店なんだけれど、イタリア料理の店で、『ルピナス』って言うの」

「へえ、『ルピナス』、面白い名前ね。それにイタリア料理か。どんなお店かしら、楽しみだわ」

「そう、期待して下さる?お酒の方も美味しいわよ。けれどそのお店、居酒屋とは違い、わいわいがやがやしながら飲むところじゃないのよね。そうね、落ち着いた雰囲気で楽しむところかしら?」

「構わなくってよ。居酒屋で飲むことがあるけれど、たまには上品なお店で飲むのもいいわね。それに、由紀子さんの男付き合いなど聞かせてくれたら最高だな」

「あら、何言ってんの。私、男癖悪くないわよ。それより、あなたの彼氏の話がいいと思うな」

「いいえ、私、彼氏なんかいません!」

断言し顔を見合わせたところで、互いにくすっと笑う。他愛のない話をしているうちに、タクシーが新宿へと来ていた。

「お客さん。新宿のどこ?」

振り向きもせず、運転手が無愛想に尋ねる。

「ああ、そうね。伊勢丹の前でいいわ」

由紀子が告げると、返事もせず車を進め横付けした。そして同時に、メーターを見て料金を告げる。

「二千五百七十円です……」

由紀子は三千円を黙って渡した。無愛想のまま受け取り、面倒臭そうに言う。

「お客さん。細かいのないの?こっちも小銭ないんだよね」

つっけんどんに告げられ、財布の中身を確認しつつ応じる。

「ちょっと、私も、細かいの切らしているの……」

困ったように運転手の方に目をやる。

「ああそう、ないんですか。それは困ったな……」

わざとらしく頭を掻く。

その仕草を見て返す。

「それならいいわ。取っておいて下さい」

その言葉に、

「ああ、そう。それじゃ頂いておきますわ」

にたっと笑い懐に入れドアが開く。二人が降りるのを窺い、礼も言わずドアを閉め走り去っていた。

過ぎゆくタクシーを目で追い、真奈美が睨みつける。

「何よ、あの運転手。何様だと思っているのかしら。本当にむかつくわね!私たちのこと、女だと思って馬鹿にしているんじゃない。ろくすっぽ調べもせず、『小銭がない』なんて。初めからお釣りを払う気がないんじゃないの。まったく、女だと思って馬鹿にしてんだから!」

憤懣やる方なく暴言を吐き地面を蹴るが、それでも治まらずまくし立てる。

「そうでしょ、由紀子さん!汚いと思わない。あんな態度ないわよね。何ていうタクシーだったかしら。タクシー会社に電話してクレームつけてやりましょうか!」

すると由紀子も同調する。

「そうよね。醜過ぎるわね、あの運転手の態度。けれど、このままだと気分が悪いから、早くお店へ行き美味しいもの食べてスカッとしましょ。真奈美さん、せっかく来たのに、こんなことでカッカしてもつまらないわ。さっ、気分直して行きましょう」

真奈美をなだめた。

「そうね。それにしても、ああいう態度をされるとしゃくにさわるわ」

「さあ、さあ。あんな雲助運転手、相手にしていたらこっちの方が気分悪くなるから。早く行きましょ!」

促し急きたてた。

伊勢丹の横を入り、裏手へ程なく行くと、ルピナスのネオン看板が見えてきた。

「真奈美さん、あそこよ!」

指を差す。

「あら、あの店ね」

「そうよ。でも、あなたのお口に合うかしら?」

心配そうに覗う。

「大丈夫よ。由紀子さんの舌に適うお店なら、私なんかの口に合わないわけないでしょ」

「あら、そんなこと言って……」

「それにしても、私なんか、あの運転手の醜態で頭に血が上ってしまい、ルピナスの看板をみたら、何だか急にお腹空いてきちゃったわ!」

「まあ、真奈美さんったら。そんなこと言って、まったくドライなんだから」

目を輝かせ二人は地下へ続く階段を降り店へと入って行った。

店内は意外に広く、すでに七割ぐらいの席が男女ペアや女性同士の客で埋まっていた。思い思いにくつろぐ雰囲気は、落ち着いた静かな空気に包まれており、始めて来る真奈美にとって、大いに受け入れやすい空間を作っていた。すぐにウエイターが二人に近づき、「いらっしゃいませ!」と笑みをたたえて会釈し、空いている席へと導いてくれた。

「ようこそ、由紀子様。お待ちしておりました」

改めて会釈し、確認するように尋ねる。

「ボトルの方、お出し致しましょうか?」

「ええ、そうしてくれる」

由紀子が了承し、ウエイターに真奈美を紹介する。

「それに、今日は始めてお連れしたお友達を紹介するわ。寺田真奈美さんよ。これからも宜しくね」

「それはそれは、真奈美様、本日はようこそ当店へお越し下さいまして、誠に有り難うございます。ごゆるりとお過ごし頂ければ幸いでございます。あっ、申し遅れました。私、西脇と申します。こちらの由紀子様には、日頃から大変ごひいきにして頂いております」

挨拶がてら付け加えた。

「それでは、お食事の方のメニューを置いておきますので、何なりとご注文頂ければと存じます」

キープしてあるボトルを取りに、その場を離れて行った。

「ねえ、由紀子さん。今の店員さん、あなたのこと苗字じゃなくて名前で呼んでいたけど、随分通っているみたいね」

「いいえ、そんなことないわ」

「あら、だって。結構通わなきゃ、名前でなんか呼ばないわよ」

「そうかしら。それだったら、たまたまあの人が、そのように呼んでいるだけじゃないのかしら」

「そうなの……。それにしても、雰囲気がよさそうだし素敵なお店ね。それにBGMもなかなかいい感じ」

「あら、そう。気に入ってくれたみたいね」

「うん、落ち着いていて、洒落た大人のお店だわ」

「よかった。お連れして正解だった」

安堵し微笑んだ。

醸し出す雰囲気を楽しんでいると、ボトルとカクテルにしたグラス二つを持って、西脇が笑みをたたえた顔で二人の座るテーブルに現れた。カクテルグラスを置き、真奈美に伺う。

「ご注文の方は、お決まりでしょうか?」

「あら、どうしましよう。まだ決めてないの。何を頼んでいいのか迷ってしまって、分からないわ。由紀子さんどうしよう……」

助けを乞い由紀子へと振る。

「如何致しますか?」

西脇が初めて由紀子に尋ねた。

「そうね……、それじゃ何時ものようにあなたの方で見繕って下さる?ただし、こちらの真奈美さんが嫌いなものだったらとんでもないわよ。何が好みか、よく観察して見極めてくれる?」

「承知致しました。私にお任せ下さるようでしたら、自信を持って真奈美様の気に入るようなお料理を決めさせて頂きます」

「そうね。それじゃ西脇さん、頼んだわよ」

と同時に真奈美に告げる。

「真奈美さん、いいでしょ。彼に任せてしまって。その代わり気に入らないものが出てきたら、遠慮なく言ってちょうだい。その時はたっぷり彼をお仕置きしてやるから」

「それは大変だ。もし、真奈美さんに気に入られなければどうしよう。責任重大だな。はて、好物は何かな……」

真面目くさる顔で、じっと真奈美を見た。

「あら、そんなに見られたら恥ずかしいわ。西脇さん、私、何でも結構ですから」

照れ気味に応じた。

「そうですか。それでは私目に任せて頂けますか?」

「ええ、お願いします。西脇さんが選んで頂いたものなら、何でも結構です。私、我侭言いません。それに……。由紀子さんが言うようなことは致しませんから、どうぞご心配なく」

それを聞いて、驚くように皮肉る。

「あら、真奈美さん。随分西脇さんの肩をもつのね。ご馳走様!」

「いいえ、そんなことないわ。由紀子さんたら……」

うろたえ言い訳した。

「益々大変だ。しくじって由紀子さんにお仕置きされたらどうしよう。そうだ。その時は真奈美さんに助けてもらえばいいんだ。真奈美さん、彼女にお仕置きされそうになったら助けて下さいね」

「ええ、でも……」

そんなはにかむ様子に、由紀子も西脇も笑みを浮かべていた。

「それでは、お料理の方ご用意させて頂きます」

タイミングを計り西脇は下がった。すると、後姿を見送り真奈美が尋ねる。

「ねえ、由紀子さん。こちらのお店、よく来られるんでしょ?」

遠慮気味に応える。

「ええ、まあ時々だけど。こちらの料理とても美味しいの。結構気に入っているから来るわ。それに、お店の方の接客も楽しいでしょ。それでつい来てしまうのよね」

納得したのか、真奈美が感想を言う。

「そうよね、あの店員さんすごく感じがよくて素敵ね。それにリードの仕方だって上手だわ。私なんかあの人に、ええと、西脇さんと言ったっけ。急に由紀子さんから紹介されてしまうんですもの、私、口説かれでもしたらめろめろに酔ってしまうわ」

「まあ、真奈美さんたら。料理の方はこれからよ。それに、お酒の方だってまだなのに、今から酔ってどうするの」

「あらいけない。私ったら、どうかしているわ。つい素敵な男性と話をしたものだから、舞い上がってしまって。はしたないわね。こんなずうずうしい女なんか、西脇さんに嫌われてしまうわね」

そんな心配をよそに由紀子が促す。

「さあさあ、彼の話などしていないで、早く飲みましょ」

互いにグラスを軽く合わせる。

「それじゃ、二人のこれからに乾杯!」

夫々の口に運んだ。

「まあ、美味しい!由紀子さん、このお酒何て言うの?」

「あ、これ。これはマティーニというお酒なの」

「へえ、マティーニか……」

「真奈美さん、ご存知でした?」

「いいえ、知らないわ。ねえ、すごく口当たりがいいのね。これじゃ、幾らでも飲めそうだわ」

「わおっ、すごいわ。真奈美さんっていけるのね!」

「いいえ私、こんなお酒飲んだことないの。何時もは居酒屋辺りで、ビールか焼酎ばかりなのよ」

そこで真奈美に尋ねる。

「でも、結構いけるんでしょ?」

「そうでもないわ、人並みよ。たしなむ程度だけど、今夜は何だか酔いたい気分になるわ。だってこのお店、とても素敵なんですもの」

満足気に言い、少し間を置き呟く。

「それに……。あんな素敵な男性にリードされたら、いちころになってしまうわ」

さらに興味深気に尋ねる。

「ねえ、ねえ、由紀子さん。こちらには、何時頃から通い出したの?」

「ううん、そうね。もう、一年ぐらいになるかな……」

「どんなきっかけかしら。よかったら教えて下さる?」

「ええ、いいわ。私も始めは真奈美さんのように、友達に誘われ連れてきてもらったの。それが最初ね。その後、一、二度一緒に来たかな。来るほど気に入ってしまって。どう、真奈美さんだって、このお店の雰囲気、いいと思うでしょ?」

「ええ、いいわ。こんな素敵なお店、由紀子さんに連れてきてもらって、何だか私も癖になりそう。一人でも来たくなっちゃうかもしれないわね。ところで、由紀子さん。お一人でも来られるの?」

「ええ、時々。何だか無性に、ここのお料理が食べたくなる時があるの。そんな時、ぷらっと来て、少しお酒を飲み食事して帰るわ」

すらりと話す由紀子に、真奈美は感心する。

「へえ、そんなやり方あるのね。益々、私も来たくなりそうだわ。ねえ由紀子さん。もしあなたと同じ気持ちになったら、一人で来てもいいかしら?勿論、由紀子さんの都合がよければ一緒に来たいけど」

「あら、そんな気を使わなくてもいいわ。どうぞおいで下さい。構わなくってよ。それに彼氏と二人できても結構よ」

「嫌ね、由紀子さん。私、彼氏なんかいません!」

「あら、そうだったの。それなら、彼に会いに来たらいいんじゃない?」

「ええっ、彼って、まさか西脇さんのこと?」

「ええ、そうよ。あなたさっき会ったばかりなのに、あの人のことが気に入っているみたいだし、彼に対する眼差しが、そう訴えているようだったわ」

「由紀子さん、冗談言わないで下さい。本気になってしまったらどうするんですか!」

「そんなの一向に構わないわ。男なんか先に手をつけた方が勝ちよ。私など気にすることないの。この際、積極的にアプローチしたらいかがかしら?」

過去に受けた嫌な思いがよぎる。

「まあ、そんなこと言って……」

「あら、遠慮することないわ」

そう促されると、またぞろ恋愛アバンチュールの欲望がそれを席巻する。

「それじゃ、由紀子さん。お言葉に甘えさせて頂いて、そうさせて貰いましょうかしら?」

互いにグラスを口に運び、顔を見合わせくすっと笑いを含ませた。

そこへタイミングよく西脇が料理を持って来る。由紀子は素早く真奈美にウインクし、含み笑いの顔で西脇を見た。そんな意図があることなど知らず愛想を振りまく。

「お待たせ致しました。真奈美さんに気に入って頂けるかと、選りすぐって料理してもらいました」

テーブルに並べ置く。

「いかがですか、真奈美様。当店自慢の料理でございます。どうぞごゆっくりお召し上がり下さいませ」

由紀子が横で「こん」と、軽く咳払いをする。すると、それに弾かれるように緊張した面持ちで、西脇に尋ねる。

「ええ、頂きますわ。それにしても素敵なお店ですね。このお酒、とても美味しいわ。それに私、こちらの雰囲気とても気に入りましたの。ですからまた来てもいいでしょうか……?」

「はい、どうぞお気軽にお越し下さい。水曜日が定休日ですので、それ以外でしたら、何時でもお待ちしております。それに、お友達でもお連れ下されば、ご覧のように、充分お楽しみ頂けるかと存じますが」

周りを見回し勧める。

「何ならば、もし、真奈美様が気に入って下されたら、是非恋人とご一緒にお越し下されば大いに歓迎させて頂きます」

笑顔で真奈美に促すと、困惑気味に返す。

「あら、私、恋人なんかいません。……あの、一人で来てはいけませんか?」

すると慌てて詫び繕う。

「あっ、それは余計なことを申し上げてしまいましたね。失礼致しました。お気分を損ないましたらお許し下さい。お一人様でも一向に構いませんです。こちらの由紀子様もよく、お一人で来られておりますので」

すると由紀子が、すね顔で応じる。

「あらっ、いつも一人で来てすみませんね。私も恋人がいないもんですから」

「あっ、そんな意味で申した訳ではございません。とんだ失礼を申し上げ、重ね重ねお詫び致します」

額に手をやり謝る。そして、改めて作り笑いで歓迎する。

「是非、真奈美様。お一人でも、お気軽にお立ち寄り下さいませ」

「それで、お願いがあるんですが……」

真奈美がもじもじとし尋ねた。

「はい、私に出来ることでしたら、何なりとお申し付け下さいませ」

西脇に促され、改めて頼む。

「それじゃ、お願いしたいんですが。もし今度来た時、また今日のように西脇さんと、こうしてお話させて頂けますか?」

意外な質問に想定していなかったのか、一瞬、戸惑うが笑みをもって返す。

「はい、結構でございますよ。私みたいな者でよければ、お越し頂いた時に、ご指示下さればお世話させて頂きます。勿論、私の方で気がつけば直ぐにはせ参じますから。そうですね、出来ましたらお手を煩わせますが、由紀子さんのように前もってご一報下されば有り難いのですが」

そんな促しに戸惑う。

「えっ、先に連絡してもいいんですか。そんなことしたら、お忙しい西脇さんに、ご迷惑になりませんか?」

「いいえ、そのようなことはございません。かえって先にお教え頂いた方がお迎えしやすいのです。今日のようにね」

「そうですか。それじゃ今度来る時は、前もって連絡させて頂きます。いいでしょ、由紀子さん!」

「ええ、私なら構わないわよ。何なら真奈美さん、ついでにお食事の後もリザーブさせてもらったら?」

「リザーブって?あら、嫌だ。そんなこと。あつかましくて出来ないわ……」

照れて俯いた。

西脇と由紀子は、そんな恥らう様を楽しげに見守った。

「それではごゆっくりとお召し上がり下さいませ。由紀子さん、何かございましたらお呼び下さいましね」

軽く会釈をし下がった。

「さあ、温かいうちに食べましょ。とても美味しいんだから」

見繕って出されたアムール貝のソテー、アスパラの生ハム巻き、それにキノコとシラスのバター和えを前にし、二人は美味そうに舌鼓を打ち始めた。

「まあ、美味しい。こんな美味しいお料理、初めてだわ!」

「そうね、私もお腹すいていたから、とても美味しいわ」

グラスを手にし、真奈美が由紀子に伺う。

「ねえ、由紀子さん。西脇さんってさ、名前何て言うのかしら。知っていらっしゃる?下の名前。そう、西脇、何と言うのかと思ってさ」

尋ねられ、つと考える。

「ええと、何ていったかしら……。そう言えば、私、彼の名前なんか、気にしていなかったわ。それに今まで、私なんか色気よりも、食い気の方が先だったしね」

フォークを止める。

「はて何といったか思い出せないわ。ええと……」

すると、好奇心に満ちる真奈美の視線を強く感じる。

「あら嫌だ、真奈美さん。気になるなら、直接自分で聞いたらいいでしょ。彼を呼んでさ」

「ええっ、私が聞くの?そんなこと出来ないわ。だって、始めからそんなことしたら、あつかましいと思われてしまうわ。それに初対面だし恥ずかしいもの……」

「大丈夫、そんなことないわよ、真奈美さん、西脇さんの名前が知りたいんでしょ。それだったら、ちょっと呼ぶわね」

「ええっ、待って、由紀子さん。私、そんなこと……」

真奈美が躊躇っている間に、西脇のいる場所を目で追い、片手を挙げ指を鳴らす。すぐに西脇が来た。

「何か、ご用でしょうか?」

由紀子に尋ねる。

「ええ、用は私じゃなくて彼女の方なの。ね、そうでしょ、真奈美さん!」

わざとらしく指差した。

「あっ、それは失礼致しました!」

改めて真奈美に尋ねる。

「何かご入用なものでもございますでしょうか?」

問われもじもじと俯いていたが、はにかみつつも応える。

「いいえ、何でもないんです。ちょっと気になることがありましたので。それで由紀子さんに尋ねたら、急に西脇さんを呼んでしまうんですもの……」

言い訳する顔がほんのり赤くなる。

「由紀子さんたら、どうしましょ……」

助けを求め視線を向けた。すると、冷たく突き放される。

「あら、真奈美さんが知りたいんでしょ。私には、あまり興味ないことですもの。あなたからお聞きになったら?」

すると西脇が妙な顔をするが、すぐににこやかな顔で尋ねる。

「真奈美様、私に聞きたいことと申しますと。どのようなことでございますか……?お答え出来ることでしたら、お話し頂ければお答えしますが。どうぞ遠慮せずにおっしゃって下さいませ」

「いいえ、大したことではないんです……。でも、ちょっと気になったので、お尋ねしようと思って……。あの、西脇さんご自身のことなんですが、お伺いしても宜しいですか?」

遠慮気味に尋ねた。

「え、私のことですか。はい……、と、申しますと。何か、私目が粗相でも致しましたでしょうか?」

意外なことと思ったのか、真顔になり尋ね返した。すると躊躇いがちに告げる。

「いいえ、とんでもないです。そんなことありません。西脇さんには良くして頂いているし、こちらで充分楽しませてもらっています。決してそのようなことではないんです……」

「と申しますと、私目に何か……?」

西脇に真顔で応えられ、益々気後れしてしまう。

「何だかお聞きするのが、恥ずかしくなってしまったわ……」

「あの、真奈美様。何でも構いませんよ。お話して頂けませんか?」

「ええ、でも……」

躊躇いつつも、気持ちの整理が出来たのかずばり尋ねる。

「それじゃ、思い切ってお聞きします!あの……、西脇さんって、お名前、何とおっしゃるのですか?」

「えっ、私の名前ですか?」

意外な問いに戸惑うが、急に顔を崩し照れ気味に応える。

「はい、私の名前ですか?そう言われると、ちょっと恥ずかしいな。でも、そうですね。ええ、それでは名前をいいますと、そこいら辺にある平凡なものですが、ええと、西脇、西脇純一と申します。真奈美様、これで宜しいでしょうか」

「は、はい。結構です。有り難うございました……」

照れながら赤ら顔を、さらに赤くして俯いた。そんな二人のやり取りを、由紀子は楽しそうに聞いていた。そして、思い起こす振りをして告げた。

「そうだ!真奈美さん、思い出したわ。西脇さんの名前。そうよ、純一さんって言うんだった。ご免、ご免、うっかり忘れていたわ」

すると恥ずかしそうに、真奈美はその場を取り繕う。

「まあ、恥ずかしい。西脇さんすみません。今度来る時前もって連絡するのに、フルネームで覚えていた方がいいと思って、お伺いしただけなんです。お騒がせして、ご免なさい」

「いいえ、有り難うございます。私の名前まで覚えて頂ければ、大変光栄です。今後とも宜しくごひいきにして下さい」

そこで由紀子がおちょくるように口を挟む。

「あら、真奈美さん。先ほどの話と違うんじゃない。『西脇さんって素敵ね。あんな素敵な人、苗字だけじゃなく名前も知りたいわ』って、言っていたんじゃなかったかしら?それに、たしか目を輝かせ『私的には、抱かれたい男性のベストファイブに入る』とも言ったわよね」

「由紀子さんやめて。恥ずかしいじゃないですか。それに抱かれたい男の話なんかしていません。たしかに素敵な男性とは言ったけれど、それだけです!」

「あら、そうだったかしら?でも、気持ちはそう思っていたんじゃないの。大体、さっきから西脇さんを見る目が、そう告げているように見えるわよ」

「あら嫌だ。私の目、そんな風になっているかしら。本人を前にして恥ずかしいわ。どうしましよう……」

ここで西脇が返す。

「いいえ、真奈美様。あなた様の方が、私なんか比べ物にならないほど素敵ですよ。他の男性が放っておかないんじゃないですか?そうですよね、由紀子さん」

冗談ぽく振った。すると由紀子が嘯く。

「そうね。たしかに真奈美さんには、いろんな男性から声をかけられるけど、それに比べ、私なんかからっきしだわ」

すると西脇が調子に乗る。

「はい、そうでしょう。まあ、私がもし二人のうち、声をかけるとすれば、それは真奈美さんの方かな……」

もったいぶり言うと、由紀子がひねくれる。

「あら、そう。それはご馳走様。それじゃ私、気分が悪くなったから、彼女一人残して帰ろうかな。西脇さん、後は宜しくね。煮るなり焼くなり、どうぞ勝手にして下さい」

「由紀子さん、もう勘弁して下さい。私、困っちゃうわ……」

泣き出しそうになっていた。

「まあ、お二人様。痴話喧嘩はこの辺にして、私みたいな不細工な男を肴にするより、もっと別なお話で楽しんで頂いた方が宜しいかと存じますが」

その場を和ませるべく西脇が気を配った。

「そうね。せっかく美味しいお酒とお料理を食べに来たんですもの、そうさせてもらいましょうね。真奈美さん」

「は、はい。そうさせて下さい」

「ああよかった。これで二人は仲直りだ。それでは何かございましたら、お声をおかけ下さいませ。でも、真奈美さんのお気持ち嬉しかったですよ」

ひと言付け加え、軽く会釈をし下がった。後姿を見届け真奈美がボソッと呟く。

「ああ、恥ずかしかった。でも由紀子さん有り難う。彼の名前も分かったし、忘れないうちに手帳に書いとかなきゃ。それでないと今日は気分がいいし、少し酔っているみたいで忘れちゃうものね」

そそくさと手帳を取り出し、西脇の名前を書こうとして思わず声を上げる。

「あら、いけない。ジュンイチって、漢字でどう書くのかしら。普通のでいいのか、聞き忘れてしまったわ!」

由紀子に視線を移す。

「あら、それだったら、もう一度呼びましょうか?」

「いいえ、とんでもない。いいです、もう結構です!」

慌てて手を横に振った。

「それだったら、後で彼に聞いてね」

「ええ、そうさせてもらいます」

気を静めるように、残り少ないカクテルを飲み干した。そして、ほっとする。

「ああ、美味しい。本当に素敵なところね。私、こちらのお店気に入っちゃった。由紀子さんに連れてきてもらってよかったわ。感謝します」

「あらそう、そこまで言ってくれるの。それだったら、お誘いした甲斐があったわ。もし二度と来たくないと言われたら、私どうしようかと思っていたんですもの」

由紀子が彼女の空になったグラスを見る。

「あらいけない、気がつかなくって。カクテルお替りでしょ?」

「ええ、そうね。もういっぱい頂こうかしら?」

「ちょうどいい。チャンス到来だわね、真奈美さん!」

意味深に告げ頼む。

「それじゃ、真奈美さんがお替りを注文してくれる。私も欲しいから」

「えっ、私がですか?」

「ええ、そうよ。そうしなければ、カクテルのお替りできないでしょ」

「まあ、そう……なんですけど。何だか、恥ずかしいわ。ねえっ、お願い。由紀子さん、頼んでくれませんか?」

「あら、何よ。私たちお客よ。遠慮することなどないの。堂々と注文すればいいのよ。そのついでに、西脇さんの名前、漢字でどう書くのか、教えてもらえばいいじゃない」

「でも……、お替りを注文するのは、別に嫌じゃないんだけれど。また、西脇さんの名前を聞くなんて恥ずかしくて。それに、どうしても意識すると上がってしまい、どう聞けばいいか分からなくなるわ」

「何言っているのよ。そんなの適当に確認すればいいじゃない。『アドレスを漢字のフルネームで記録していて、さっき聞いた時、うっかりして漢字で聞くの忘れてしまったので、教えてくれないか』とか言えばいいんじゃないの」

「ええ、そうかもしれないけれど、どうも……」

「何よ、真奈美さん。もしかして彼に気があるんじゃないの?」

「いいえ、そんなことありません。ただ何となく、恥ずかしいだけです……」

「まあ、まあ、それはご馳走様。それだったら、私が呼んで注文しちゃおうかしら。それでいい?」

「えっ、待っ、待って下さい。私がオーダーしますから」

「あらそう。それじゃ、そうして下さる?」

さりげなく告げた。すると、もじもじするが、心決めたのかはっきりと告げる。

「それじゃ、注文します」

一度姿勢を正し深呼吸して、恐る恐る西脇のいる方に目をやり、軽く手を挙げた。すぐに真奈美の動作に気づき、急ぎ足で西脇がやって来た。

「お待たせ致しました。何かご用でしょうか?あっ、それに料理の方はいかがでしたか。真奈美様のお口に合いましたか?」

立て続けに尋ねると、緊張気味に応える。

「はい、とでも美味しくて、大満足です。こんなに美味しいもの食べたこと、今までありませんでしたから」

「それは、お褒め頂き有り難うございました。真奈美様のお口に合い光栄でございます。ああよかった、これで由紀子様にお仕置きされずにすんだ」

首をすくめ礼を言った。すると、真奈美が小声で切り出す。

「あの……、カクテル二つお願いしたいんですけれど……」

「はあっ、何か?」

聞き取れなかったのか問い返す。すると顔を赤らめる。

「あの、カクテルのお替り、お願いしたいのですが」

「はい、かしこまりました。カクテルの方は同じもので宜しいでしょうか?」

「あっ、ええ……」

「それでは至急お作りしてお持ち致しますので、少々お待ち下さいませ」

西脇が下がろうとした。すると慌て戸惑い気味に声をかける。

「あの、それに……」

「はい、まだ何かご不足のものがありますか?そうですね、このカクテルに合ったお料理でもお持ち致しましょう」

「あっ、いいえ、それは結構です」

「さようでございますか。それでは……」

返事を遮り、緊張気味に発する。

「あの……、実は西脇さんの……」

「え、何か、私に?……また、失礼なことでも致しましたでしょうか?」

「いいえ、そうではないんです……」

恥ずかしそうに口ごもり尋ねる。

「実は、西脇さんの名前をさっきお伺いしたんですが……」

「ええ、私の名前で何か……?」

今度は西脇が、何のことか見当もつかず聞き返した。

「あの、私、今度来る時のために手帳に記録しておこうとお尋ねしたんですが、うっかりしてお名前の方を漢字でどう書くのか、お聞きしませんでした。それでお伺いしようと思って、ちょっと足止めさせて頂きました」

「ああ、何だ。そんなことでしたか。また、私がそそうでもして、ご気分でも損ねたのかと心配しました。そのようなことでしたら、気軽に聞いて下さればいいのに」

ほっとした様子で真奈美に応えた。

「あら、それは余計な心配をかけさせてご免なさい」

頭を下げた。

「いいえ、いいんです。私の名前など有り触れたものですから。平仮名でも構いませんですよ」

「いいえ、そうはいきません。せっかく西脇さんと知り合えたのですから、漢字でしっかりと覚えさせて頂きます」

毅然として言った。

「それは恐縮です。私の名前のじゅんいちと言うのは、純粋の純と一を書いて純一と申します。どうも自分としては、名前がふさわしくないと思っています」

「いいえ、素敵なお名前ではないですか。私のような名前と違って」

すぐに手帳を取り出し、漢字で書き入れていた。

「ところで、真奈美様。私もせっかくお知り合いになれましたので、差し支えなければ名前を漢字で教えて頂ければ嬉しいんですが」

「ええっ、私の名前を。そう言えば私、まだ正式に名乗っていませんでした。それなのに西脇さんのことばかり聞いてしまって。それに、私の名前の漢字まで聞いて下さるなんて光栄です」

改めて名乗る。

「私の名前は寺田真奈美と申します。漢字では寺に田んぼの田、真奈美は、真実の真に那須の須それに美しいと書きます。どうぞ宜しくお願い致します」

「はい、こちらこそ。有り難うございました。早速、由紀子様と同様に真奈美様もお客様リストに載せさて頂きます。今後ともごひいきに宜しくお願い致します」

二人に頭を下げた。

「それではご注文頂きましたカクテルお持ち致しますので、ごゆるりとおくつろぎ下さいませ」

言い残し下がった。

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