怪奇談話【失くした指輪】

こーたろ怪談

怪奇談話【失くした指輪】

子供の頃塾の帰り田舎道を歩いていた時、周りはもう日が落ちかける中後ろから「ねえ、〇〇っていう場所知ってる?」と言われたので振り返ると、そこにはワンピースに長い黒髪で顔がへのへのもへじの案山子が立っていた。私は固まってしまい立ち尽くしていると、隣から「こら!子供に手を出すな!」軍服姿の男性が日本刀を抜きながらそれに近づく「クソがぁーーー!」と叫びながら来た道をスーッと後ろ向きで戻っていった。

「〇〇(私の名前)、無事でよかった。これからはこれを持つと良い。」とネックレスの紐を通した指輪を首に掛けて「では、失敬」と敬礼をして回れ右をした後、男性は夜の闇に消えていった。

それなら何年も経ち祖母に指輪とその出来事を話すと、「その人ってこの人かい?」古い白黒写真を出して私に見せてきた。「そうそう!この人!なんで知ってるの?」祖母に聞くとその男性は祖母の親戚であり、武官をしていて海外のお土産を良く買ってきてくれたという。そして、この指輪は祖母が駄々をこねて貰ったそうなのだが、空襲で逃げた時に無くして以来見つからなかったのだという。

「子供に恵まれなかったからねぇ。私をとても可愛がってくれたのよ。うちは男の子に恵まれなかったからね。」

それ以来私はその指輪を肌見放さず持っています。

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怪奇談話【失くした指輪】 こーたろ怪談 @kotaro_kaidan

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