第17話 ロザリーの出産

二階の廊下とリビングを二人で行ったり来たりする行動は、メイド達にとっては邪魔でしょうがない。

しまいにはナタリーに目障りだと家の外へ追い出される。


エルヴィーノ達は気をまぎらわす為に剣術の稽古を始めた。

木刀で繰り出される剣撃にカンカンコンコンと甲高い音を鳴らしていると、ふと気づいてグンデリックに問いかける。

「この音ヤバくない?」

グンデリックも気づいたようで「そうだな、ナタリーに怒られるかもしれん」

いそいそと木刀を片付け、グンデリックは兵舎に戻りエルヴィーノは自室へ戻った。


暫くすると、「オギャア~!オギャア、オギャア!」と屋敷の外にまで聞こえる大音量の鳴き声で兵舎にいたグンデリックや他の兵士、他の作業をしていたメイド達は直ぐにリビングへ駆け込んだ!

エルヴィーノは自室にいたから直ぐに寝室を覗き込むとナタリーが赤ちゃんを抱いてロザリーに見せていた。

エルヴィーノに気づくとロザリーが手招きする。

「あなた、こっちに来て!」


寝室に入ると遠目からでも分かるその髪の色はロザリーと同じ金髪だった!

エルヴィーノはロザリーの手を握りしめ優しく声を掛けた。


「頑張ったね。ロザリーの髪と同じだよ!」

「ロザリー様と同じ金髪碧眼の男の子でございます!」

ナタリーが抱く我が子を見たらロザリーに報告した。


「やったね、ナタリー!」

「ハイ、エルヴィーノ様も頑張られたお陰です」

エルヴィーノは内心(その通りだ!) だと思った。


「皆に伝えてくるね」

ロザリーにそう告げると、ナタリーがメイド達を呼んで下さいとエルヴィーノに頼み「グンデリックは?」と問いかけると「今は二人供安静が大事なのでお世話をするメイドは構いませんが、男達は二、三日経ってからだと伝えて下さるかしら」と言われた。

エルヴィーノはロザリーに口づけして、我が子の手を触って部屋を出てリビングに向かった。


リビングに降りると待っていた全員が立ち上がりエルヴィーノの側に来て聞いてきた。

「どうだった?」と聞いて来た。

グンデリックの顔見て「ロザリーと同じ金髪碧眼の男の子だ!」と言い切ると、グンデリックが「イヤッホーッ!」とエルヴィーノを抱き上げ回りだす!


家臣の皆も大喜びで奇声をあげる中、大声で「ナタリーが呼んでいるからメイド達は皆寝室へ行って下さい」と。

グンデリックがエルヴィーノを抱き上げたまま(俺は?) 見たいな顔をしてるので、グンデリックや男の家臣はまだ面会禁止で仕事に着くようにとナタリーから言付けられたと話した。


グンデリックがエルヴィーノを下ろし「良くやった!」と褒めてくれた。

褒められるのは嬉しいけど”良くやった”はかなり恥ずかしい。

グンデリックが兵士達に「お前ら、この事は他言無用だ!理由は解るな?」

全員が「ハッ!!」と返事し「じゃ今夜は祝杯だ!」と宣言した。

兵士達が喜ぶ「よし持ち場に戻れ」グンデリックが指示を出す。

グンデリックが気を聞かせて「俺も見回ってくるからお前は寝室に戻れ」と。

エルヴィーノは頷いて階段を駆け上がった。


寝室ではナタリーの指示であろうメイド達がせわしく動きまわり、ロザリーはベッドで産まれたばかりの我が子と休んでいた。

エルヴィーノは二人の側の椅子に座りロザリーの手を握っていた。

「ロザリーにそっくりだね!」

「まだ、分からないわ」

目を瞑る我が子の顔と髪の色を見ながら、その黄金に輝く髪を撫で撫でしていた。


「俺が子供を作ったなんて今だに信じられない」

「私もよ、ふふふっ」

ロザリーは産まれた我が子を見ながら満面の笑顔をエルヴィーノに向けていた。

そんな妻の表情が可愛いので思わずロザリーに顔を寄せると「んっん~んっ!」とナタリーの咳払いで気づく。

エルヴィーノが振り返るとメイド全員が見ていた。

キスをしようとしたのが見られていたので恥ずかしい思いをした。


そんな醜態をさらしながらも時間は経ちメイド達は一人残して部屋から出て行った。

メイド達と兵士達は個別にささやかな祝賀会を開き、跡継ぎの誕生を祝っていた。

公爵家としてはロザリーの回復後に生誕祝賀会をすると全員に伝えてあり、それは3日後となっていた。

赤ちゃんの世話はメイドが順番に行うがナタリーが指導する事となり「私はロザリー様が御産まれる以前から御世話をして来ました。あなた達も今まで以上にロザリー様の信頼を得て御世話をするように!」と。


そして、乳母はいない。

必要無いのです。

ロザリーの双丘は授乳のため以前よりも大きくなっていた。

(我が子が飲みづらそうに・・・と思ったのは俺だけか?)

エルヴィーノはロザリーの耳元でこっそりと囁いた。

「俺の分はあるかなぁ?」

ロザリーがエルヴィーノにしか見せない卑猥な口元で答える。

「あなたの分もちゃんと有りますわ」

エルヴィーノはドキドキしていた。

「それよりも、我が子の名前はどうするの?」と聞かれ

「どうしよう・・・」全く考えていなかった。

そんなエルヴィーノの顔を見てロザリーが用意していた名前を教えてくれた。

「考えてあるわ。エアハルトよ。エアハルト・ファン・デ・ブリンクス!」


エルヴィーノに反対する意思は無いので、「良い名前だ。お前は今日からエアハルトだ!」と頬っぺたをツンツンしてやる。

面白いのか笑って答えるエアハルト。

エアハルトが産まれたその日は、エアハルト用のベッドに寝かせ2人は久しぶりに枕を共にする。

エルヴィーノには不安があった。

この後の事とメルヴィとの事である。


ロザリーは一年間エルヴィーノと”してない”。

あの性の権化がどれだけ求めて来るのか、不安もあり3日前から屋敷に戻り、"溜めて"いたのだった。

戻る前日には3日、休み無くメルヴィに求められからになっていたエルヴィーノの魔精製造工場。

そのメルヴィとの浮気は勿論秘密だった。

バレたらどんな目に合うか考えたく無かった。

事実、この時はまだメルヴィの存在をロザリーには知られていなかった。


夕方”今日は久しぶりにやるぞぉ!”みたいな意気込みでロザリーに今夜の事を聞く新米パパだ。

「今日は身体を休ませたいの。3日ほど休めば体調も子宮も元に戻るわ」

エルヴィーノがガッカリして見せると「エアハルトの誕生パーティーの後は・・・、いいですか?寝かせ無いわよ!」っと猛獣が睨みつける眼差しで自分を見てくるので「ハイ!」と返事すると、ロザリーの手がエルヴィーノの頭を自分に寄せて甘い吐息のする唇の奥から淫靡な舌を出してくる。


ロザリーはエルヴィーノの舌を楽しんだ後、自ら夫の顔を双丘へいざなった。

ロザリーの双丘の先端から、にじみ出るエアハルトの食糧。

エルヴィーノは双丘を貪った。

暫く貪っていると「全部飲むとエアハルトの分が無くなるわ」そう言われ渋々双丘を後にする。

そして、”温かい飲み物”でお腹が膨れたエルヴィーノはゆっくりと眠りについた。


エルヴィーノと同年代のエルフの子供は集団で勉強している中、エルヴィーノは専門の家庭教師に特別な性教育を毎日毎日、何年も何年も数えきれない回数の射精、いや受講している。

勿論ナタリーとグンデリックが公爵家に恥じない知識を教えてくれた。

(将来のエルフ王の父親の特技が子作りじゃ・・・ねぇ)

エルヴィーノも必死に覚えた。


ロザリーやナタリーからは知識を詰め込み、グンデリックや兵士達からは剣や体術、街の事、国の事、他国の情勢、いろんな冒険譚など。


ロザリーには秘密だが、グンデリックが悩んだ末に"夜の特別授業"も教えてくれた。

誰から教わったのかは男同士の秘密にする事で、"大人の男としての常識"を始めて知る事になる。

教えられたのは様々な体験に基づく情報で、いつの日か"街で経験する"時の内容を知っていて損は無いし、もっと知りたい知識だった。


魔法系は魔導書と独学及びリーゼロッテの指導が主だった。

一部ブランコ・マヒア白の魔法をロザリーから教えてもらってエルヴィーノは回復系の魔法を再度修行していた。









第一子誕生

その名もエアハルト。

小さなエアハルトとかけがえの無い時間を楽しもう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る