才能がないと言われた俺は、実は神様から最高のギフトを授かっていたようだ

仲仁へび(旧:離久)

第1話



 その世界の神様は生まれてくる子供達に向けて、それぞれの適正にあった才能をギフトとして送る。


 子供達は、その才能で魔法を使ったり、剣術を極めたりし、魔物などがいる厳しい世界を生き抜いていくのだが、まれに自分がなんのギフトを送られたのか分からない人間もいた。


 主人公もその一人だった。






 俺にはどうやら才能がないらしい。


 まったく、これっぽっちもないらしい。


 ううむ、これは困った。


 しかし、ないものはないのだからしょうがない。


 くよくよしていても仕方がないので、すっぱり諦める事にした。


 しかしあれだな。才能がないとなると学校で何を学べばいいのか分からなくなってくるな。







 俺は魔法学校に通っている生徒の一人だ。


 魔法学校というだけあって、ここでは魔法を学ぶ事になる。


 俺は魔法の理論を学びたかったのだが。


 だが、入学後に実は才能がなかったと言う事が判明してしまって、今たいへんな事になっている。


 普通は、魔法の才能がないやつは入れないはずだった。


 しかし、何かの手違いで、才能がない俺が入学してしまったらしい。


 入学して、ひと月経っても、ふた月経っても魔法が使えないままだったから変だとは思っていた。


 そんな俺の処遇に、学校の教師達は、毎日頭を悩ませているようだ。


 実は間違いで入学させてしまいました、なんて事になったら学校の名前に傷がつくとか言っているのを聞いた。


 この学校は名門中の名門だからな。


 大人は大変だな。


 名前に傷がついたなら、あとで挽回すればよかろうに!


 一度失敗したくらいでめげるなといいたい。







 前代未聞の間違いが発覚してからさらに一か月が経過した。


 あれこれ話し合った結果、学校の者達は最悪の手段を採用したらしい。


 俺と言う生徒が悪意をもって、試験管を騙した、とそう言い張ったのだ。


 なんという姿勢だ。


 生徒を導く身でありながら。


 これからずっとこの学校に通わなければならない生徒達が可哀想でならない。


 しかし、嘆いた所で現実は変わらない。


 俺は、詐欺を働いたという事でせっかく入学した魔法学園から退学させられてしまったのだった。


 表向きには悪人として処罰された形になるため、世間の目は冷たい。


 他の魔法学校に入学しようと考えたが、どこも受け入れてくれるところはなかったようだ。


 うむ、ないなら仕方がない。


 さっさと諦めて、自分で勉強するか。


 魔法が使えなくても理論を学ぶのにはそれほど支障がない、はずだ。


 図書館にでも通い詰めて、知識を深めるとするか。








 そんな俺は、その日から図書館に通い詰める事になったのだが、ある日うっかり立ち入り禁止区域に入ってしまった。


 親しくなった知り合いの図書館員の手伝いをしているうちにうっかりしてしまったのだ。


 間違いに気がついたあと、そうそうに立ち去ろうとしたのだが、その時俺に呼びかける声があった。


 怨嗟の声、のようなものか。


 俺はその声が気になって、とある部屋を覗き込んでしまう。


 その部屋は禁書が大量に保管されている部屋だった。


 禁書とは、簡単に言うと見たらヤバイ本だ。


 触れてもやばいため、物理的に見たり触れたりできないように、隔離されているのだ。


 そんな部屋を覗き込んでしまった俺。


 普通なら何らかの異常でぶったおれてもおかしくはなかったが、そうはならなかった


 ちょっと怨嗟の声が聞こえるだけだった。


 実は、俺には禁書に対する抵抗力みたいなものがあったらしい。


 なんと素晴らしい力だろうか。


 魔法の才能はなかったが、神は俺にうってつけの才能を送ってくれたらしい。







 そういうわけでおれは図書館員になり、禁書の管理をする事になった。


 今まで雑に保管庫に放りこむしかなかった禁書だったが、禁書の影響をうけない俺がいたため、適切に管理できるようになった。


 危ない魔術の理論も書かれているため、中身の閲覧許可はおりなかったが、種類や作成された年代ごとに本を並べるだけで部屋の中はだいぶすっきりした。


 禁書に対する抵抗力を持っている人間は稀であるため、その図書館だけではなく他の図書館でもひっぱりだこだった。


 そこおかげで各地の魔術の理論を勉強する事ができて、大助かりだった。


 様々な土地の図書館で、魔法の成り立ちや発展の歴史、効果の違いを調べる事ができた。


 数年後には論文も書く事ができるようになった。

 その内容が認められて、名のある研究者の一人として数えらえる事にもなる。


 素晴らしい事だ。


 才能がないと思っていたが、自分が必要とする才能に恵まれていて、思う存分それを活かす事ができる職場があるのだから。







 かつての魔法学校の教師達がこれを知ったらどう思うだろうか。


 貴重な人材を手放してしまった事を悔しがるだろうか。


 それとも有名になった俺の口から、自分達の罪を告発されないか怯えているのだろうか。


 しかし、そんな事はもはやとっくにどうでもよかった。


「あの、例の論文についてですが、質問よろしいでしょうか」


「先生、詳しい理論を教えてください」


「一体どうやったらこんなものを思いつくんですか」


 過去の事で煩わされるよりも、未来の事を考えていたほうがいい。


 過去の事は変えられない。


 変えられない事に時間と苦労を費やすよりは、変えられる未来に注目して、自分が望んだ方へ向かっていくべきだ。


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才能がないと言われた俺は、実は神様から最高のギフトを授かっていたようだ 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

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