昼下がりのワイン

夢水 四季

昼下がりのワイン

フランス、ブルゴーニュ地方のワイナリー。

 太陽が燦燦と輝く夏の日だった。

 併設されているレストランのテラス席に彼と向かい合う。

「素敵な所だね」

「うん。いい天気で良かった」

 彼とはよく旅行に出かけた。今までは国内だけだったが、今回は大分奮発して海外旅行にした。一応、彼とは恋人同士という関係ではあるが、普通の恋人のような一般的なデートをした記憶がない。大抵、旅の同行であった。恋人らしい行為もお互いに苦手だった。

 それでも、彼と一緒にいるのは心が休まった。彼はどちらかと言えば無口で、私もあまり喋るのが得意な方ではない。一緒にいても無言で目の前の料理を食べたり、建造物を見て一言二言交わすだけが多い。

 頼んだワインが運ばれてきた。私はロゼ、彼はカベルネ。

「昼だけど、乾杯」

「乾杯」

 グラスを合わせる。

 口の中に芳醇な香りが広がる。美味しい。

 目が合うと、彼は淡く微笑む。

 私の一番好きな表情だ。



                               終わり


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昼下がりのワイン 夢水 四季 @shiki-yumemizu

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