第7話 自然も悪意に満ちている
「きゅっきゅきゅ~♪」
黒いのは街の中であらかた嫌な気配を食べた後、すぐに街の外に出てウロウロと探検を再開していた。今度は何が見つかるかなぁ♪と鼻歌を歌いながら移動する黒いの。目的地はすでに決まっている様で、真っ直ぐとその場所に向かっている様だ。
「きゅっ!きゅきゅ~♪」
黒いのは目的の場所に辿り着いて上機嫌になった。そこは、どろどろとした紫色の水が溢れる場所。そう、毒の沼だった。ポコポコと湧き出る毒沼を観察する黒いの。そんな黒いのをこの沼に住む生物がジーっと見ていた。そして、手ごろな餌だと判断したその生物が黒いのに襲い掛かる。
「ゲーコ!!」
「きゅっ!?」
牙を生やしたカエルが黒いのを食べようと大口を開けて飛び掛かった。だがカエルは黒いのの体を突き抜けて、沼に着水する。口の中に何も入っていない事に首を傾げるカエル。すぐに体を反転させると、黒いのが無事な姿で浮かんでいるのが見える。
「ゲーコゲーコ。」
「きゅ~?」
食べられなかったことが悔しかったのだろう。カエルは恨めしそうに黒いのを見上げる。黒いの方は、紫色の体と沢山のイボを持つカエルを興味深そうに観察していた。
「ゲーコ!!」
「「「「「「「「「「ゲコゲコ!!」」」」」」」」」」」
「きゅっ!?」
どうやら悔しくて見ていたわけでは無かったようだ。恐らくあの牙には毒が在ったのだろう。食べられなくても牙は刺さったはずだとカエルは毒が回るのを待っていたのだ。だがいくら待っても毒が効かないと判断したカエルは仲間を呼んだ。その鳴き声に沼から沢山のカエルの顔が浮かび上がる。黒いのは突然沢山のカエルにじっと見つめられて驚いた様だ。
「「「「「「「「「「ゲコゲコーー!!」」」」」」」」」
「きゅ~・・・。ぐばぁっ!!」
「「「「「「「「「「ゲコッ!?」」」」」」」」」」」
もちもち、むにゅむにゅ、もにもに、ぺっ
仲間と共に黒いのに襲い掛かる毒ガエル達。だが、黒いのは冷静に体の口を開けて全てのカエルを飲み込んだ。何やら餅でも食べている様な音を立てながら、しばらく咀嚼した後に吐き出されたカエルの姿は・・・。
「ケロ!?」
「きゅ~♪」
先程とは違い、イボも無く体の色は黄緑に。目はくりくりとした可愛い感じに変化し体の大きさもかなり小さいアマガエルの様な姿になった。吐き出されたカエル達はお互いの姿が変わっている事に驚く。
「ケロケロ?・・・・ゲロっ!?」
「きゅ~?」
「「「「「「「「ゲロロロロ・・・・・。」」」」」」」」
吐き出したアマガエルを観察していた黒いの。アマガエルたちも自分の変化に驚きつつも体の調子を確認していたが、次第に顔が紫色になり苦しみながら倒れ始めた。そう、ここはまだ毒の沼の中。体が変化したアマガエル達にとっては死地となる場所だったのだ。
「「「「「「「「ゲロ~・・・・。」」」」」」」」
「きゅっ!?ぐあばっ!ずず~。」
苦しむアマガエルを見て黒いのは慌てて体の口を開けて毒の沼を飲み込み始めた。不思議な事に、毒の沼を体の口から吸いこんだ黒いのの足の靄からは次々と綺麗な水が流れ出していた。キラキラと輝く透明な水は、毒と混ざる様子もなく沼に溜まって行く。
「ぎゅ~。」
「「「「「「「「「「・・・・ケロ?ケロケロケロ♪」」」」」」」」」」
毒の沼の水を全部綺麗にした黒いの。毒の沼は綺麗な湖に変わり、その中で先ほど苦しそうにしていたカエル達は、自分達の体から毒が抜け元気になった事が解り歌い始めた。だが黒いのの様子がおかしかった。どうやら毒の沼を浄化し過ぎて、食べ過ぎに似た様な状態になってしまったらしい。少し涙目になりながら、苦しそうに声を上げて地面にコロンと横になっている。
「「「「「「「「「ケロケロ?」」」」」」」」」
「ぎゅ~・・・・。」
「ケロ!」
「「「「「「「「ケロケロ!」」」」」」」」
大丈夫?と黒いのの周りを取り囲むアマガエル達。黒いのが口を押えながら転がっているのを見て、アマガエルのリーダーらしきカエルが号令を掛ける。すると他のアマガエル達は黒いのの周りに集まり、体を黒いのの下に入れ始めた。今度は黒いのの体に触れたようだ。カエル達は次々と黒いのの下に潜り込んでいく。
「きゅ~・・・・きゅぴ~・・・きゅぴ~・・・・。」
「ケロ♪」
アマガエル達のプニプニとした体をベッドにした黒いの。ヒンヤリとしていてまるで水の上に浮かんでいる様なその感触に少し気分が良くなりすぐに寝息を立てながら眠ってしまった。アマガエル達もその姿を見て気分がよさそうに喉を鳴らしていたが、いつの間にか睡魔に誘われ眠ってしまっていた。
「ケロ?ケロ!?」
アマガエルのリーダーが目を覚ますと、自分達の上で寝ていた黒いのの姿が無かった。辺りをキョロキョロと見回して黒いのの姿を探すアマガエル達。すると、自分達が固まっていた場所のすぐそばに何やら不思議な物が落ちていた。
「ケロ?」
四角推の形をして青く透明な輝きを放つそれは。それ自体からコンコンと清らかな水を生み出し続けていた。そしてその水は黒いのに浄化された湖に流れ込み、湖の周辺が何やらとても澄んだ空気に包まれている。禍々しい雰囲気だった沼の周りの木々も、綺麗な緑を湛えて元気になっていた。
「ケ~ロ~♪」
「「「「「「「「「「「「ケロケロ♪」」」」」」」」」」」
この水晶は黒いのが残して行ってくれたものだと感じたアマガエル達は、その水晶を湖の底に沈めて自分達の宝物にする事にした。湖の底でも青い光りを放つ水晶は、湖底を美しく照らし出す。
「ケ~ロ~♪」
「「「「「「「ケロケロケロ♪」」」」」」」」」
光り輝き澄んだ湖で今日もカエル達の合唱が響き渡る。まるで自分達は解放されたと喜ぶような歌声は、水と共に森の空気を浄化していくのだった。
なお、真実はというと。
「きゅぷ!!きゅきゅきゅきゅきゅ~!!」
お腹を押さえて慌ててカエル達の上から降りる黒いの。お腹、というか体の口が在る場所からはゴロゴロと何やら動く音が聞こえてきている。心なしか黒いのの顔には紫の縦線が3本垂れ下がっている様だ。
「きゅっ!!きゅーーーーーっ!!」ぷりっ!
そしてカエルから降りた所で限界が来たのだろう。その場所に座り込むようにしゃがみ。足の代わりの靄から小さな音と共にあの三角錐の結晶がコロンと地面に転がった。
「きゅ~♪きゅ?」
すっきりした♪と額を腕で拭く真似をしながら、もう片方の手でお腹をさする黒いの。そして自分の下に転がっている水晶に気が付いた。
「きゅ~?」つんつん ジョバ~~~~「きゅっ!?きゅきゅ~!!」
何かなぁ?と軽く指で突く黒いの。まさかその水晶が自分から生まれた物だとは全然気が付いていない。すると突いていた黒いのの指から何かが引き抜かれ、水晶からは凄い勢いで水が溢れ出した。
その事に飛び上がって驚いた黒いのは僕知らない~!!と叫びながら森の中に逃げて行った。これが、カエル達が手に入れた水晶に真実である。まさか水を生み出している水晶が黒いのが排泄した物だとはカエル達も思わなかっただろう。
「きゅきゅきゅーーー!!」
一生懸命に森の中を逃げる黒いの。まさか黒いのが生み出した物がカエル達にとても喜ばれていると思わず。ごめんなさいー!!と言いながら必死に移動していた。黒いのの行く先に見えるのは雲を突き抜ける程の高い山。果たして黒いのはあの山で何を引き起こすのだろうか?
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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