第4話 ここどこ~?
「きゅっ?きゅ~?」
黒いのが目を覚ましたようだ。その場所は・・・檻の中だった。どうやら黒いのは閉じ込められている様子。どうするのだろうか?
「きゅっ!!きゅきゅ!!」
黒いのは元々幽霊の様な物だ。だから檻に入れたとしても簡単に抜け出せてしまう。えいっ!!どやっ!!と抜け出した檻の前でふんぞり返る黒いの。残念ながら誰もその様子は見ていない。
「きゅ~?」
自分を抱えていたヤクアの姿を探すがどこにも居ない。黒いのが居た場所には他にも色々な生き物がいた。ゴブリンやオーク、リザードマンやコカトリス等、本当に様々な魔物が檻に入れられている。
「ごあっ!」
「「「「「「「っ!?」」」」」」」」
バキバキ、ゴリゴリ、ガリゴリ、ジャクジャク、ベキボキ、シャクシャク、ぺっ!
黒いのは檻と一緒にその魔物たちを飲み込んだ。檻の中に居ては逃げられない魔物達はあっけなく黒いのに飲み込まれ、咀嚼された。
ゴブリンはゴブリナに、オークはピーグに、リザードマンはオオトカゲに、コカトリスは鶏に変化した。魔物達が入っていた檻は粉々になって口から吐き出された。
「きゅあ?」
「ぷひ?」
「がお?」
「コケー?」
「きゅきゅ♪きゅ?きゅっきゅきゅ~♪」
檻から解放されたが自分の姿が変わった事に戸惑う魔物達、その様子を満足そうに見ていた黒いのは。外に出られそうな扉を見つけてそこに向かう。本来霊体である黒いのは壁抜けも出来るのだが、黒いのは気が付いていない。
「きゅ~、きゅっ!!きゅきゅ。きゅっきゅきゅ~。」
「きゅあきゅあ。」
「ぷひぷひ。」
「がおがお。」
「コケーコッコッコ。」
「きゅ~。」
うーん、えい!!と扉に頭を突っ込み、外の様子を探る黒いの。扉の外に誰も居ない事を確認して中に居た元魔物達に出ても大丈夫だと伝える。だが元魔物達は好き勝手に動き、黒いのの話を聞いていなかった。やれやれ、と両手を肩の上で上下させ黒いのは1人を抜けて外に出ていく。
「きゅあ?きゅあきゅあ!!」ガチャガチャガチャ!!
「グア!?グアァァァァァァ!!」ドドドドド
「ふごふごふご!?ピッグシ!!」
「コケーッ!!」ポンッ!!コロコロ
黒いのが外に出て行った瞬間色々な事が起こった。まず黒いのが出て行った所が扉だと気が付いたゴブリナが何とか開けようとしてガチャガチャと音を立て。その音が耳障りだったオオトカゲがゴブリナを吹き飛ばそうと体当たりを行い、ピーグが鼻に埃を吸い込みくしゃみをし、鶏がピーグのくしゃみに驚いて卵を産んだ。
「ぐおっ!?」グシャ!つるつるつる~。
「きゅあっ!?」さっ!!
「ぷひ?」
「コケーッ!!」
ドガーンっ!!
卵は音を立てるゴブリナめがけて走るオオトカゲの足元に転がり踏みつぶされ、卵に足を取られたオオトカゲはゴブリナではなく扉の方に進んでしまう。ゴブリナと言えば突っ込んでくるオオトカゲに驚き扉から飛び退いた。
ピーグは騒ぎが起きている方を向いて首を傾げ、鶏は卵が潰された事を怒った。そして制御を失ったオオトカゲは扉を破壊して外に飛び出す。
「きゅあきゅあ♪」
「ぷひー。」
「コッコッコッコ!!」
「ガァガァ!!」
扉が開いたことに喜んだゴブリナが外に飛び出し、その後をゆっくりとピーグが追いかけ、卵を潰された怒りを嘴に乗せてオオトカゲにぶつける鶏と、そんな鶏から逃げるオオトカゲが扉のあった廊下を走り出した。
「魔物が逃げたぞー!!」
「なんだあれは!少女が走ってるぞ!!」
「後ろの奴は何だ!?見たことも無いぞ!!」
「かっ怪物だ!鱗を持った怪物がいるぞ!!」
「怪物を襲っているあの白い奴が一番危険だ!!すぐに逃げろ!!」
「「「「「「わーーーーーっ!!!」」」」」」」
「きゅ~?きゅきゅっきゅ。」
騒ぎを聞きつけ壁から顔を出す黒いの。どうやらこの短時間で壁をすり抜ける事が出来ると気が付いた様だ。走り去る魔物達をみてどうしたのかな~?まぁ逃げたなら良いか。と鳴き声を上げる。半裸のピンク色の少女を追いかけるブタとオオトカゲを追い回す鶏を見てこの施設に居た人達が阿鼻叫喚な状態になっている事なんかは全く気にしない。
「きゅ~♪」
探検~♪とふわふわと施設内を見学する黒いの。どうやら捕まっていた場所は地下だったようで、窓が見当たらない。明かりは壁に吊り下げられたランプしかなく。ちょっと薄暗かった。だからだろうか?この施設を使っていた人達には黒いのが、恐ろしい幽霊に見えた。
「ぎゃーーーっ!!ここにも化け物――――!!」
「亡霊じゃー。この砦で死んだ兵士の亡霊じゃー!」
「御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい。魔物の密売をしてごめんなさい、人を攫って売ってごめんなさい。眠る場所を騒がしくしてごめんなさい。だから許してぇ~!!」
新種の魔物(元魔物)に襲われ、パニックな所に幽霊騒ぎだ、ここを利用していた人達の正気度はすでに無くなっていた。
「ぐあっ!」
「「「「「「ひっ!!」」」」」」
パリパリパリ、ポリポリポリ、ポキポキポキ、ぷっ!!
いくら謝ろうが叫ぼうが祈ろうが黒いのは容赦しなかった。目の前に居る人達から嫌な気配を感じたら即座に捕食した。
「あぁ、俺達は何と言う事を・・。」
「売った魔物が村を滅ぼしたんじゃ・・・。わしは何と言う事を・・・。」
「あんな小さい子まで変態貴族に売っちまうなんて俺は何て外道なんだ・・・。」
「きゅ~?きゅきゅ!!」
「「「「あぁ!!天使様!!」」」」」
どうやらここを利用していたのはならず者は黒いのに食われて改心したようだ。自分達の行いを振り返って膝を着き、涙を流して懺悔した。そこに両手を大きく広げた黒いのが目に映る。ランプの光りを受けて黒いのが付けている籠手と兜が光り、ならず者たちには翼を広げた天使に見えたようだ。
「我々は罪を償います。」
「壊してしまった村を元に戻しますじゃ。」
「売った人達を取り戻して、元の場所に返します。」
「「「ですからどうか我らに許しを!!」」」
「きゅ~きゅ~。」
「「「ははぁ~。」」」
自分達の行いを恥じた元ならず者達は、自分がやって来た事の清算をする為に活動すると黒いのに告げた。黒いのは訳が分からなかったがとりあえず頷いて返すと、元ならず者たちは黒いのに向かって平伏して感謝した。
「使徒様~!!使徒様はいずこ~!!」
「お嬢様!!お気を付けください!!この場所にはここら辺を荒らしまわるならず者達が居るはずです!!」
「きゅっ!?きゅきゅ~っ!!」
「「「あぁ!!天使様!!」」」
「ここですの!!」
その時、通路の奥から聞いた事のある声が聞こえた。自分の事を捕まえたヤクアが来たと感じた黒いのは慌てて逃げ出す。もう捕まりたくなかったのだ。
逃げる黒いのと、黒いのに向かって祈りを捧げる元ならず者。その状況を見て固まるヤクアとゼバス。
黒いのは、そんなカオスな状態を放っておいて地上に向かって突き進むのだった。
後にこのならず者達から話しを聞いたヤクアは黒いのの姿に天使の羽を付けたお守りを作り出す。籠手の手を祈りの形にし、黄色い大きな瞳が兜の中から覗き、翼を広げて浮かぶ様子を掘ったそのお守りは、ヤクア嬢が立ち上げるピュリファイ教のシンボルとしてこの世界に浸透していく。
まさか自分の姿がそんな事に使われるとは思っていない黒いのは、地上に出た後必死でヤクアから逃げるのだった。
なお、黒いのはヤクアの家族に勝手に売り払われてゴーツクから離れた森の中に在る砦に居た模様。ヤクアが売り飛ばした先を聞き出す為に涙を流しながら家族に鞭を打ったことをここに記しておく。
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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