メイドさんがいる日常
「ふわあああああああ」
ゲームからログアウトしてベッドにもぐりこむ。心地よい疲労感と共に意識がスーッと落ちていった。
「おはようございます」
む? 聞き覚えのあるような声がした。
「ああ、おはよう」
目を開くとハウスキーパーのジーンさんがバシッと決めたクラシカルなメイド服で俺を起こしに来てくれていた。綺麗な金髪にホワイトプリムが映える。
「昨晩は4人でした」
「うへえ……」
この4人というのは俺を狙ってきているどっかのスパイだったり、誘拐を企む反社の人であったりする。
栄光コーポレーションの社長令嬢である智子と婚約したとき、何か知らんけど週刊誌に思い切り顔が載った。それまで勤めていた会社にもいられず、智子経由で栄光に入社。マニアックな歴史知識を買われて、代表作シリーズの戦国アンビシャスシリーズのアドバイザーになっている。
ゲーム機や、電子機器、コンピューターの開発をしているメーカーなどが合同でプロジェクトを組むVRギアの試作品を入手できたのもそのためだ。その経緯は智子による壮大なサプライズだったというオチが待っていたが。
「朝ごはん出来てますよー」
「お、ありがと。ジーンさん」
「いえいえー、これもお仕事ですので。それに士朗さんにはご恩がありますし」
彼女はいわゆるスパイだった。外国の潜入捜査員なんてもんは映画やドラマの中だけだと思っていたのだ。
相棒が彼女をかばって重傷を負い、彼女自身も負傷していたところに通りがかったというわけだ。残念ながらその相棒は助けられなかったけど。
というわけで、彼女は公式には死んだことになっている。そのままうちのお手伝いさんをしつつ、俺の護衛も担ってくれている。
「命を助けられたら命をもって報いるのです」
むん、とばかりに拳を握り締める彼女の表情は明るい。
がちゃりと玄関のドアが開き、智子が現れた。
「おはよー」
「ああ、おはよう」
「おはようございます」
異口同音に朝の挨拶を交わす。智子は俺の向かい側に座るとジーンがそっと書面を差し出す。
「うへえ……」
智子の眉間にしわが寄る。昨夜の「お客さん」の報告書だろう。精神衛生上よくないと俺には見せてもらえない。
「あ、そうだ。士朗。ゲームの調子どう? おかしなことない?」
「ああ、大丈夫。どっぷりはまりこんでるよ」
「ん、ならよかった。楽しんでよね」
「ああ、ありがとう」
智子は出社し、ジーンがそのままくっついていく。そして俺はトイレなどを済ますと自室に戻り、VRギアを装着するのだった。
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