才能がないと言われた俺は、最高のギフトを授かって成り上がるR2

仲仁へび(旧:離久)

第1話





 俺達が生きているこの世界は、才能と実力がすべて。


 だからそれらがなければ、人生詰んだも同然だった。






 貴族の家の、それも名門中の名門。


 そんな家に生まれた俺は、天才ばかりの家族に囲まれて育った。


 母も父も、祖母も祖父も、何かしらの才能があって、多くの人から褒めたたえられていた。


 だから俺も当然のように才能があると思っていたのだ。


 しかし、そんなものはどこにもなかった。


 剣の才能も、魔法の才能も、みじんもなかった。


「お前なんて、我が家の子供ではない」

「そうよ、一族のものではないわ」


 だから、家族に失望された俺は、家の人間である事を否定され、追放されてしまった。


 あてもなく彷徨う俺は、貴族の身なりをしていたばかりに、ごろつきどもに目を付けられて身ぐるみをはがされるまでになった。


 ぼこられている時に意識が飛びかけて、人生終わったと思った。


 ずたぼろのボロ雑巾になって横たわる地面は冷たかった。


「いくあてがないなら、うちにきなさい」


 けれど、そこに手を差し伸べてくれる人がいた。








 その日から俺は、とある孤児院の一員になった。


 孤児院は、身寄りのない子供達が共同生活を送る場所だ。


 マナーのなっていない連中、教養のない連中ばかりで、初めは拒否感があった。


 しかし、環境に順応する才能だけはあったらしい。


 ひと月も経つ頃には、固いパンをかじるのにもなれたし、集団で雑魚寝するのも気にならなくなった。

 

 孤児院での生活は貧しかったけれど、貴族だった時にはする事がなかった遊び等、知る事がなかっただろう事をたくさん知れた。


 家を追い出された時は、人生終わったと思ったけれど、こんな日々も悪くないと思える日々だった。


 なのに、そんな日々は、長くは続かない。


 人々を脅かす脅威。狂暴な生物である魔物が、俺達が住んでいる町に襲い掛かった。


 集団で数が多く、町を守る兵士達でも対処ができないほどだった。


 だから俺達は、建物に閉じこもって震えるしかなかった。


 何もできる事がなくて、そのままだったら命を落としていたかもしれない。


 しかし、運命の神様は、何の脈絡もなく俺に微笑んだ。


 俺に、とうとつに特別な才能が宿ったのだ。


 その才能は、捕食。


 魔物を食らって、自分の力にするというものだった。


 魔物は町の中までどんどん侵入してくる。


 孤児院の所までもやってきた。


 だから俺はその授かった力をふるって、孤児院の皆を守った。


 誰も死なせないように、死に物狂いで戦った。


 才能は、生まれた時にもっている事もあるが、後から授かる事もある。


 その法則はよく分かっていない。


 この世のどこかにいる女神の気まぐれだと言われていた。


 ともかく、捕食を使って俺は魔物達との戦いに勝利した。


 その奮闘ぶりが話題になったのか、魔物の襲撃が収まったあと、兵士にスカウトされる事になった。


「少年よ。その力を、もっと多くの者達に役立ててはみないか?」


 兵士になれば、たくさんのお金がもらえる。


 孤児院の者達の生活が楽になると思って、さしだされた手を取る事にした。







 兵士になった俺は順調に出世していった。


 捕食の力は強烈で、向かう所敵なしだったからだ。


 普通の魔物なら、出会った瞬間に死んでいる。


 しかしそんな力があっても人には向けられない。


 対人戦で使って相手を問答無用で殺すわけにはいかないので、人との戦いでは弱かった。


 盗賊や話のきかなさそうな連中には例外だったが。


 その点が影響してなのか、兵士達からは馬鹿にする者達が多かったが気にしなかった。


 才能があって、努力すれば上を目指せる事が嬉しかったからだ。


 いくらがんばっても、ゼロはイチにはならない。


 それに比べれば、今の環境は恵まれていた。







 やがて成果を出し続けた俺は、特別な部隊に配属される事になった。


 俺は、期待されている証しだと思い、その部隊でもよく戦った。


 部隊の隊長になり、勲章なども多くもらった。


 誰もが認める存在になった。


 それくらいになるとたくさんの褒美や給料をもらえるようになったが、ほとんど孤児院に送っていた。


 自分が裕福である事よりも、辛かった時にささえてくれた大切な人を裕福にしたかったからだ。

 

 そんなある日、俺の元に両親達がやってきた。


 家はなにがあったのか没落していて、かつての父と母は貧しい恰好をしてやせ細っていた。


 このままでは生活がなりたたないと言う二人は、育ててやった恩を返せと言ってくる。


 しかし、俺は二人を無視した。


 もう彼等は俺にとっては大切な人ではなくなっていたからだ。


 ほんの少しだけあった愛情は、子供の幸せを願うどころか、自分達を幸せにしろと言ってくる者達を見て覚めてしまった。


「知らない者達が難癖をつけて、任務を妨害してくる。だから排除してくれ」


 俺は他の兵士達にそう頼んで、その場を後にした。


 俺が直接なにかをするまでもない。


 背後で彼等が何かを言っていたような気がするが、俺の耳には届かなかった。


 今日は孤児院に顔を出す日だ。


 久しぶりだから、任務が終わった後、ごちそうでも買っていこう。





 後日彼等がならず者達の手によって無残な死を遂げたと言う知らせが入ったが、俺には何の関係もない話だった。


 俺は大切な者達のために働くので忙しかったから。




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