第16話
自分の部屋に1人用ソファを置いている人間を見たことなかったが、佐奈ちゃんの部屋にはそれが2つもある。一つは自分用、もう一つは恐らく友達用だと思われるが、自分用のソファと比べると、もう一つのソファはまだまだ新品のようだ。というかこれ新品じゃないのか…。
「あ、これですか? 今日のために用意したんですよー。ぜひ座っていてください。私は飲み物を持ってきますね! あ、勝手に部屋の中、触らないでくださいね、恥ずかしいので」
そんな俺の目線が気になったのか。早速回答を教えてそそくさと部屋を出ていく。
まさか本当に新品だったとは…。恐るべしお嬢。
とはいえ、見知らぬ部屋でひとり座っていても落ち着かない。座る前に少しお部屋の探索・・・
「・・・・・・」
ヤメておこう。冗談抜きに監視カメラとか設置されていて、後にバレて怒られても嫌だしな。それに怒られるだけで済みむとも思えない。
「・・・まぁお言葉に甘えて座らせてもらうか」
立ちっぱなしの人間が部屋にいても迷惑だろう。いつまでも警戒していては気が休まらない。一旦、お嬢ということは忘れて女の子の部屋に来れたというワクテカ展開に身を任せてみよう。
座って見ると「ギュムゥ」とまるでお尻が吸い込まれるようなクッション。絶妙な歪曲で腰を包み込む背もたれ。両手を置く手すりまである。気を抜くと今にでも寝てしまいそうになる素晴らしいソファ。ぜひ、我が家にも欲しい一品。
そんな素晴らしいソファに腰掛けて待つこと5分。
トタトタと足音が聞こえてくる。
「すいません、お待たせしました! どのお菓子がいいか迷ってしまって」
片手で器用にお盆を持ちながら扉を開けて部屋へと入る佐奈ちゃん。その上にはコップが2個とチョコやらポテチ等のお菓子が乗っている。
「いやいや、こっちの方こそ気を使わせちゃってごめんね、ありがとう」
「はい! 好きな飲物が分からなかったので取り敢えずお茶を持ってきましたので欲しいものあったら言ってくださいね。・・・サブに買わせにいくので」
「あ、ああ、大丈夫。お茶大好きだから」
「なら良かったです!」
急にサブを出さないで頂きたい。お嬢ということを思い出してしまう。
「あ、そうだ。この後は一緒にアニメを一気見したいなと思っているんですが・・・駄目ですか?」
「全然いいよ。最近俺もアニメ見れてないし、なんかおすすめあればぜひ見してほしいな」
「良かった! 先月放送終了したアニメがあるんですが、ちょうど家のゴタゴタで見れてなくて、録画しているんで見ましょう!」
家のゴタゴタは少し気になるが、知らぬがホトケ。ここはアニメ視聴してサクッと帰ろう。とはいえ、11時半からのこのデート。いつの間にか時間も過ぎ去り、外を見ればもう日が落ちかけている。特に門限はない家ではあるが、正直帰りたい。
ここはひとつ・・・。
「お、いいねぇ。あ、でもごめん。門限があって見れないかも」
「え・・・、そうなんですね。でもさっきは良いよって言ってくれましたよ?」
「もちろんもちろん。一緒に見るけど最後までは見れないかもって意味。ほら、アニメって大体30分あるから1クールだとしても単純に5時間くらい?になるからさ」
「・・・・・・」
そう言うと俯きながら何やら呟く佐奈ちゃん。
あれ?なんか雰囲気が変わった?
「だ、大丈夫、佐奈ちゃん? なんか変なこと言っちゃった?」
「・・・くしたのに・・・しょに見るって・・・」
「佐奈ちゃん? ごめん。ちょっと聞き取れなくて」
「いえ、何でもないです。すいません、ちょっと考え事していて。・・・やっぱり用意しておいて良かったです」
「そう? ならよかったけど・・・」
何やら怪しい感じはするがここで追求しても仕方がない。本人も大丈夫と言っているから気にしなくてもいいだろう。それにこれで途中で帰れそうだ。
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