第9話

嫌われ作戦、決行します!


その1.ジャージ作戦

冬美が聞いたら怒髪天の如く怒られると思うが幸いにして不在。

今日はココ・シャネルもびっくりな禁断の全身ジャージコーデにいつものメガネでの参戦だ!


その2.遅刻作戦

11時半に集合の所を45分に到着だ!

30分遅刻して12時に向う事も考えたが、流石に30分は良心の呵責に苛まれるので、15分遅刻が丁度良いだろうと判断した!


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時刻は43分。

作戦その1の通り、全身ジャージに着替えた俺は○○駅に降り立った。

地元の最寄り駅とは異なり、〇〇駅の周りには商店街やショッピングモール等といった商業施設はなく、タクシー乗り場だけが寂しく付設している。


どうやら駅前は栄えていないようだ。

一つしかない出口をそのまま降りると、昼前だというのに人通りも少ない。これなら佐奈ちゃんもすぐ見つけれそうだと、あたりをキョロキョロするがそれっぽい姿は見えない。


まぁ、それもそうだろう。

初対面の人間が初めてのデートでいきなり遅刻してきたのだ。俺なら帰るね。


とは思いつつも、冬美により勝手に教えられた佐奈ちゃんのIDを一応確認する。


IDの交換後、あまりにメッセージが多いため完全なるシカトを決め込んでいた事もあり、だいぶ溜まっているが最新のメッセージを確認すると、そこにはちょうど10分前に連絡が入っていた。


『ごめんなさい♡ 遅れます。多分12時位になりそうですm(_ _)m』


「……」


流石はギャルである。

俺の負けだ。もう既に嫌いになりそう。

30分の遅刻は良心の呵責が……とか思った俺が馬鹿みたいだ。


しかもこのごめんなさいの後のハートマークについてはもう全くもって意味不明だ。

どこでかわいい要素を付け足してくるんだこの女は。


ふと冬美の言葉を思い出す。

確か『みんなに嫌われている』だったか……。

おそらくだが、メンクイ以前の問題ではないかこの子については。


仕方なく駅前の電柱に体を預けて待つこと10分。

少しウトウトしていると後ろから声がかかる。


「あの~冬美ちゃんのお兄さんですか?」


ようやくかと振り返ると一人の女性がこちらを見上げる。

間違いなく彼女が佐奈ちゃんだろう。


早くその通りだと返事をしたい。

……したいが、思わず彼女の服装に気を取られる。


「あの……おヘソ出てますよ」

「これ、ファッションです」

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