カラフルキーコレクション 仮面迷宮

仲仁へび(旧:離久)

第1話



 たくさんの仮面が舞う。


 けたけたと笑いながら。


 そこは迷宮。


 一時間以内に出なければ、命が尽きてしまう呪われた場所。


 それでなくとも、仮面に追いつかれたら寿命を吸い取られてしまうだろう。


 迷い込んだ少年は、一つめの鍵を手にして、迷宮の中をさまよっていった。








『緑の迷宮』


 赤の鍵を手にした少年は、鬱蒼とした森の中を歩く。


 次の迷宮につながる扉は、草の茂みで隠れて見えない。

 

 時間はじりじりとすぎていく。


 そのうちに少年は思いつく。


 自分が手にしている赤の鍵を使おうと。


 赤の鍵には炎を吹きだす効果がある。


 だから、茂みを焼き払って、次の迷宮に向かう扉を見つけやすくした。


 少年は、緑の扉を見つける。


 扉にある鍵穴に赤の鍵をさすと、緑の扉が開いた。


 扉は、光を放って緑の鍵に変化する。


 少年は、次の迷宮へと向かった。


『所持品……赤の鍵、緑の鍵』






『青の迷宮』


 少年は青の迷宮へやって来た。


 青の迷宮は、たくさんのプールがあった。


 次の迷宮に行くためには、プールに潜って扉を探さなければならない。


 しかし、プールの中には狂暴な魚たちが悠然と泳いでいる。


 少年が入るとすぐに魚たちは集まってきてしまった。


 少年は考える。


 その結果、緑の鍵を使う事にした。


 緑の鍵の効果は、植物の蔓がだすもの。


 だから、向かってくる魚たちに植物の蔓を使って動けないようにからめとった。


 少年は悠々と扉を探していく。


 探索は順調で、扉に触れるのはあと少しというところになった。


 けれどそこに、仮面が追いついてきた。


 プールの中にいる少年にまとわりつこうとする。


 少年は緑の鍵を使って、仮面を植物の蔓にからませる。


 その間に、青の扉にたどり着いた。


 扉の鍵穴に緑の鍵をさした少年は、次の迷宮へ進む事ができる。


 少年は青の鍵を手にして、青の迷宮を脱出した。


『所持品……赤の鍵、緑の鍵、青の鍵』








『赤の迷宮』


 次は灼熱の炎が吹き荒れる迷宮だった。


 とても暑くて、前に進めない。


 そのまま進んだら、炭になってしまうだろう。


 だから少年は青の鍵を使って、自分のまわりに水の膜を作った。


 少年は、水のドームを周囲につくりながら、炎の迷宮を進んでいく。


 炎の迷宮はどこも火が吹き荒れている。


 だから、さらに青の鍵を使って、吹き荒れる炎を消化しながら進んでいった。


 やがて、ひときわ大きな炎が吹き荒れる場所が見つかった。


 その場所を消化すると、赤の扉が見つかる。


 その扉に手をかけようとする少年だが、その少年に仮面が追いついてきた。


 少年は青の鍵で水鉄砲を作り出し、仮面を吹き飛ばした。


 遠くへ放り出された仮面を見送った少年は、赤の扉を開く。


 そして、赤の鍵を手にして、次の迷宮へ向かった。


 夢中だった少年は、いつの間にか片方の靴をなくしていた。


『所持品……赤の鍵×2、緑の鍵、青の鍵』







『闇の迷宮』


 次の迷宮は真っ暗だった。


 一寸先も見えない暗闇の場所だった。


 少年は赤の鍵を使い、火を出現させ、明かりをつくる。


 小さな光で、周囲を照らしながら進んでいった。


 闇の迷宮にはたくさんの屍が横たわっていた。


 屍は、一定時間が経過すると仮面になっていく。


 その仮面は、生きている人間への恨みをはきながら、浮き上がり、少年へ襲い掛かった。


 少年は仮面から逃げた。


 追いかけてくる仮面の数は多い。


 靴を片方なくした少年はうまく走れなかった。


 そのため、たくさんの仮面に包囲されてしまうが、緑の鍵や青の鍵を使って、植物の蔓で仮面の動きをとめたり、水鉄砲で追い払ったりした。


 少年は闇の扉を見つけ、鍵穴に鍵をさしこむ。


 その扉に手をかけ、すばやく扉の先へ入り、仮面が負ってこないうちに扉をしめた。


 闇の扉は闇の鍵へと変化していく。


『所持品……赤の鍵×2、緑の鍵、青の鍵、闇の鍵』







『時の迷宮』


 次にやってきたのは時の迷宮だった。


 半透明のゴーストがそこらへんにふよふよと浮かんでいた。


 少年はゴーストに余分にある赤の鍵を投げつけてみた。


 そうしたら、ゴーストにあたった赤の鍵はどこかへ消えてしまった。


 代わりに、別のものが目の前に出現した。


 それは途中の迷宮で少年がなくした靴の片方だった。


 ゴーストにふれたものはどこかに消えて、代わりに別のものが引き寄せられるらしい。


 靴を履いた少年は、ゴーストを避けながら進んでいく。


 静かに移動していればゴーストは何もしなかった。


 しかし、音を立てるとゴーストが寄ってきてしまう。


 うっかり、足音を立ててしまった少年はゴーストに囲まれてしまう。


 けれど、闇の鍵を使って、暗闇にした事でゴーストの目を欺いた。


 暗闇の中、記憶を頼りに、ゴーストのいない場所を駆け抜けた少年はとうとう出口へとたどり着いた。


 少年は闇の扉をあける。


 その先に次の迷宮はない。







 ただ真っすぐに光の道が伸びているだけだった。


 少年は、何も迷わずに真っすぐに走り続ける。


 背後から仮面が追いついてくるが、振り返らずに、立ち止まらずに。


 そして、最後まで走りぬいた少年は光の道を出た。


 そこには、少年の帰るべき世界が存在していた。

 


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カラフルキーコレクション 仮面迷宮 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

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