溺死後転生したら水属性魔道士になって只今絶賛無双中(※当人は断固認めておりません)
せふカのん
第1話 未成年が酔って溺死とかおかしくないですか??
私は
成人してないけど一端の絵師として立派に生活をしている。
絵師と言っても、中学生の頃からSNSでイラストを投稿していたらまあまあ人気になって、個展とかも少ししたことがあるだけ。だからそんなに凄いわけじゃないけど。
もちろんまだ一人暮らしはできないから、一般企業で働く23歳の姉と一緒に暮らしている。毎日ずっと家にいて、イラストを量産し続ける日々。
そのはず…だった、よね?
なぜか今私の目の前には、透き通るようなライトブルーの髪と翡翠色の瞳を持った、天女の如く美しい女性の神様がいて、
「貴方は妹の恩人です。お礼にどうか、貴方の望む転生をするお手伝いをさせてもらうことはできないでしょうか?」
とか言ってくる。
いやいや、そんな神様の妹さんなんか助けたことないんですけど記憶にないんですけど??
てか私、なんでこんなことになってるの?さっきまで家にいて…。あれ?
時は朝まで遡る。
❅ ❆ ❅
「さぁ、姉ちゃんも仕事に行ったし!思いっきりお菓子を食べてダラダラするぞー!!」
棚や冷蔵庫を開け、酒入りのお菓子をひっぱり出していく。
私はまだ未成年だけど、お酒入りのお菓子は好き。しかも度数高めでいっぱい含まれているやつ。お菓子なら飲酒にならないし、とってもおいしいから別にいいよね!
そう自分に言い聞かせながら、テーブルの上にブランデーケーキなどいろんなお酒のケーキ、酒入りチョコの箱を大量に乗せた。
ソファに寝転がり、好きなゲーム実況の動画を見ながらチョコを口に放り込む。
「おーいしい!やっぱこれ美味いわぁ!さすが名店!これ買ってきてくれる姉ちゃん最高!神!感謝!」
そう言いながら、バクバクとすごい勢いで食べていく。
1時間後には、全部食べきって寝転がり、
「ひゃぁー…!たべひゃー!お腹いっぱい…。もうたべれにゃーい…。」
バリバリに酔っていた。
そりゃそうだろう。度数も高い、量も尋常じゃない、しかも超早食い。
頭も身体もふわふわしてる。
この時には分かっていなかったけど、きっとこれまでで一番酔っていただろう。
「たくさん食べたしぃ、お風呂入るかぁー。朝風呂らぁ…。」
足取りもフラフラして今にも転びそう。
食べ終わったお菓子のゴミもほったらかしにしたまま風呂に行く。
風呂の温度も適当に上げたから、その時の温度は47℃。
いつも37℃で入っていたから、普段より10℃も熱い。
もちろん気づかないまま浴槽にお湯を溜めて、ザバーンと勢いよく入る。
「あー?なんかちょっと熱いよーな…?まぁ、いっか!」
温かい(本当はとても熱い)お湯に浸かっていたら、酔いもあって、なんだかウトウトしてきた。
「はぁ、いい湯だなぁー…。むにゃ…。」
そのまま、私は寝てしまった。
❅ ❆ ❅
「ふげ?」
気がついたら、家の風呂ではないところに突っ立っていた。
見回すと、天井が見えないほど高く、白系と青系を基調とした内装。大きな太い柱が聳え立ち、まるで古代の神殿のような場所だ。
「気が付きましたか?」
「え?」
清らかで凛とした美しい声。
声のする方向を向くと。
天窓から見える夜空の光に照らされ、白く大理石のようなもので造られた大きな椅子に座る女性がいた。
「どうやら混乱しているようですね。まあ、仕方のないことでしょう。あんな亡くなり方をしたのですから。」
なんかよく分かんないことを言っている。
「え、なんですって?『亡くなった』?どこのどなたかは知らないけど、そんな訳はないでしょ。だって、現状よく分かんないけど今、ちゃんと自我もってここに立っているんだよ?」
「いいえ、亡くなったのです。覚えているかは分かりませんが、貴方は酒の入った菓子を大量に食べ、酔った状態で熱い風呂に入ってその上寝てしまい、のぼせて風呂の中に沈み、そのまま溺れてしまったのです。」
「ええええええええええええっ!?!?!?」
今日一番、いや人生一番の大声が建物に響き渡る。
「物凄い驚きようですね…。」
「いや驚かない奴がどこにいるんじゃ!?自分が死んだって聞いて!しんっじらんないよ自分!何情けなく死んでんだよ!!『酔って風呂で溺れた』?ふざけんなよ!!まだ華のJKだよ!!(まぁ中退したけど…)まだまだ人生楽しめたのに20歳未満で死ぬとか!有り得ないってぇ!!!」
一気に思いを爆発させてゼェハァする。
ちょっと疲れた…。
下を向いてハァハァ言っていたら。
「?」
パタパタパタ。
左側から一人の女の子が、見た目12歳くらいの小さな子が女性の隣に走ってきた。女性と似ているけど、この人の優しそうで落ち着いた雰囲気と違って、この子は可愛らしく元気そうな印象がある。
「ハァ…ハァ…、その…えっと…その子は?」
「ひさしぶり、柚雪おねえちゃん!」
「いやどなた?」
「この子は私の妹です。」
「へ?いやいやいや私そんな可愛い女の子、会ったことないんだけど?」
少なくともこの17年間で水色の髪&翡翠色の眼の女の子に会ったことはございません。
それでも彼女は首を横にぶんぶんと振る。
「ううん、私は確かにおねえちゃんに助けてもらったの。あれはあの世界で言うと、10年くらい前の事かな。私は下界に降りることが好きで、よく子犬の姿になってうろうろしていたんだ。ある時、大きな川に落ちちゃって地上に戻れなくなったの。子犬の姿を解いて元の姿に戻っても人間に見られちゃうといけないからって、ただ踠くしかなかったの。そしたらおねえちゃんが現れて、川から助けてくれたの!」
「えーっと、うーんと…。あぁ、あんときの?ガキんちょの時にたまたま見かけて側溝から出してあげた?」
「うん!」
彼女はとても嬉しそうな声と顔で返事をした。
あの時は小学生で、たまたま、可愛らしいけど水色の毛色の子犬が側溝で溺れそうになって、バタバタしてたから持ち上げてあげたんだっけ。
確かに子犬にはあの側溝は深いもんな。
そうかそうかあの犬かぁ。
…。
まさかの再会は少しビックリしたけど嬉しいもんだね。
それにしても…私はなんで死んだのにこんなとこにいるの?
「あの時の子にこうやって会えたのは嬉しいけどさ、私ってなんで死んだはずなのにここにいるの?てか貴女達どういう人?ここどこ?」
「あぁ、そういえばまだ説明をしていませんでしたね。私は、≪水属神≫
「リステルだよ!よろしくね!」
「ええええええええええええええええええっ!?!?!?」
本日2回目の大声をあげた。これ以上出したら喉枯れるってぇ…。
「また物凄い驚きようですね…。」
「えっえっええ!?神様!?ほんとに!?あっ、あ!すみませんっ!!神様とも知らずに無礼な口をっ…!!」
私はすぐに土下座した。
だってまさか神様とは思ってないよ…!!
うーん…、でも確かに…、雰囲気とか建物の感じとか神様みたいだし…。そう言われれば、そうだな…。
「いえいえ、そんな土下座なんてしなくても…。どうか顔を上げてください。それよりも私から貴方に、ひとつお願いがあるのです。」
「え?」
すぅっと息を吸って、意を決したかのようにリステスさんが話しだした。
「貴方は妹の恩人です。ずっとこの御恩を返そうと思っていたのですが、機会が無くて…。お礼にどうか、貴方の望む転生をするお手伝いをさせてもらうことはできないでしょうか?水属性を司る私が、溺死してしまった貴方に言うのも何なのですが…。」
「私からもお願いするよ!おねえちゃんは私を助けてくれた優しい人なのに、あんな風に死んじゃって…。だから私がテスお姉ちゃんにお願いしたの!おねえちゃんの魂をここに連れてきてって!今度はいっぱい生きて幸せになって欲しいの!!」
必死そうにリステルちゃんもお願いしてくる。
たった一回助けてあげただけなのに、ここまで私のことを考えてくれてるなんて…。
ありがとう、リステルちゃん…。
嬉しさと若干の涙を堪えながら、当然のように思ったことを質問する。
「転生…。そんなファンタジーかなんかみたいなことできるの…できるんですか!?」
「勿論です。最近特にやることもなかったので、力はたくさん残っています。その力をフルに利用して、あなたの元いた世界と対を成す世界、私達の生まれた世界に転生させることが可能です。その世界では魔法も使えますし、本当に物語のような冒険などができます。」
「いや冒険はしたくありません…。危ないですし…。その、そこでのんびり家庭菜園とか、お店開いて暮らす事ってできますか?のんびり普通の日々を楽しみたいんです。」
「はい、十分に可能です。例えどこに住み始めても住人たちが貴方のことを警戒することはありませんし、貴方の性格なら住人たちともうまくやっていけることでしょう。しかし問題もあります。普通に暮らそうとしても、あの世界は争いごとが絶えないですし、盗賊や、人を平気で殺す者や、魔物が
そう言いながらリステスさんは立ち上がり、私の頭と手に両手で触れた。
「!?」
頭に乗せた右手は温かく白い光を帯びている。
逆に、左手を重ねた方はとても冷たく青い光を帯びている。
両手の温度差と突然の行動にビックリしながらもじっと終わるのを待つ。
数秒後、フッと光が消え、リステスさんは手を下ろして椅子に座った。
「突然すみませんね。ありがとうございました。」
「あの…、今のは何だったんですか?」
「説明しますね。今、あなたは魂だけの状態です。体はありません。ですから、右手の方で下界に降りても実体化できるように細工をしたのです。また他にもこの世界の知識、前世界での記憶の定着など、様々な体と心に関わることを組み込ませていただきました。
逆に左手の方では、魔法についての全てを細工させていただきました。貴方は特別な存在です。これから何が起こるかは私にも予測できません。何か起こった時のために、私の力の一部…いやほぼ全ての力の断片が貴方の身体に入っています。この力は強大なので、どうか使い道を間違えないようにしてください。…いや、貴方なら大丈夫ですね。」
「よく分かりませんけど…色々とありがとうございます…!!」
ここまで色々してくれるなんてありがたすぎる…!!
「さて、あらかた転生の説明や準備は終わりましたが、何か質問はありますか?」
「えーっと、じゃあこれでもう転生できちゃうって事なんですか?他には何もしなくていいと?」
「はい。転送も、身体の形成も、いわゆる”チート”も、生活していく上での基本知識も全てです。どこからでも何からでも始められます。」
「ここを離れたらもう私はあっちの世界で生きていくんですね?」
「そうです。亡くなった時から、元の世界に戻ることは不可能となりました。本来なら消えていくところを此処に私の力でとどめたのです。ここでずっと暮らすことはできなくはないですけど、面白味があって生きているのを実感する充実した人生をしたいなら、あちらの世界に行くことをお勧めします。」
じゃあもうあっちの世界には戻れないんだな。
やり残したこといっぱいあるなぁ…。
永遠に続いていそうな天井を見上げながら思う。
描き途中のラフとか、水彩絵の具が乾くのを待っている絵とか。
大学で友達を作るとか。
姉ちゃんともお母さんともお父さんとも友達(ネット上)とも会えないのか。
まあ死んでしまったものは仕方ない。
友達なら、今度の世界でも作れるさ!
…。
でも怖いな。
知らない世界、争いが絶えない世界。
”未知”のへの恐怖に手が震える。
!?
突然、震えていた手に温かい感触。
「大丈夫だよ!頑張ってね!」
手を握ってくれたのはリステルちゃんだ。
まっすぐに私の目を見つめて、彼女の翡翠色の目が言わずとも、「信じてる。」と訴えてくる。
…そうだよね。
もう戻れないって悲しみの感情を持つよりも、
これからどうなろうと生きていく勇気を持たなきゃ。
強く強くぎゅっと握る小さなリステルちゃんの手は、私の決意を押してくれている。
しっかりしよう。
リステルちゃんの手を強く握り返し、リステスさんの方を向いた。
「どうやら決意は固まったようですね。」
「はい。」
決めたには転生して、楽しい生活しなきゃな!
「では、これでお別れですね。困ったときは、
そう言いながらリステスさんは座っていた椅子の隣にある、大きくて繊細な金細工が施されている姿見を指した。
「じゃあねおねえちゃん!」
リステルちゃんは両手をぶんぶん振って、リステスさんは胸元でお淑やかに片手を振った。笑顔は両方変わらない。
二人に見送られながら鏡の前に立つ。
確かに普通の鏡ではないようで、表面がゆらゆらと揺れている。
片手をそっと入れてみると、イメージしていた水でもスライムでもない感触だった。ひんやりしているけど、空気に触れているような、同じ空間が続いているような感覚。
よし、行くか。
私は一歩、眩しい世界へ踏み出した。
溺死後転生したら水属性魔道士になって只今絶賛無双中(※当人は断固認めておりません) せふカのん @sehukahuka
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