ギター弾きのモモ。

鈴木すず

第1話 始まり

私は、月島モモ、高校1年生。みんなは私のことを、「ギター弾きのモモ」とか、「さすらいのモモ」って呼んでる。授業が始まっても、中3の時に買ってもらったそんなに高くないギターを身体から離せない。本当は弾きたいけど、ギターを机に立てかけて、授業になんとか耳をむける。授業を聞いていると、弾きたいギターのフレーズが浮かんでしまう。だからコードを授業のノートに書き込む。先生には板書をきちんととる真面目な子だと誤解されているはず。多分。


休み時間も、ギターを1人で弾いていることが多い。教室の中だと、うるさがられるから、廊下に出て、階段の踊り場でこっそり弾いている。教室移動をする他のクラスの子が私の前を通り過ぎて行く。最初はみんな面白がって聞きに来たけど、今は誰も私を気にかけない。私もそれでいいと思っている。


いつものように私が階段の踊り場でギターを弾いていると、担任の先生が私の前に現れた。

「月島さん。今日の放課後、面談ですよ。忘れてるでしょ。」

「え。」

すっかり忘れていた。私が何か悪いことをしたというのだろうか。

「なんの面談ですか。」

「進路の面談よ。そのくらいちゃんと覚えていてくれないと、困るわ。」

そうだったのか。確か、私は進路希望シートに、

「ギターを弾いて幸せに暮らす」

と書いていたはずだ。


「月島さんに、いい話をしてあげるわ。」

世の中、そんなに甘いのだろうか。

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