第1-Ⅱ話 能力②
———【五年後】
時の流れは早く、ライトは5歳になった。好奇心旺盛、性格は真っすぐで純粋。心に一切、穢れのない少年ライトはこじんまりとした家の庭で木刀を握り、ルイエに突撃する。
「やあ!」
子供ながらに地から空に向い飛び跳ねると、ルイエに向い縦に木刀を振る。ルイエは木刀を横にしライトの木刀を受け取めると片腕を伸ばし手を広げる。
「ライト!ちょっと待て!」
ルイエの額から1滴、2滴と汗がツーと流れる。ゼェーハーと息を切らし、ストップの声を掛けると、ようやくライトの動きがピタリと止まる。
「なんだよ!父さん!良い所だったのに!」
稽古を止められライトは頬を膨らませると、両腕をあげ持っていた木刀を荒く振り回す。
「ちょっと休憩しよう。父さん疲れちまったよ」
「俺は元気なのにー!」
稽古をしてから2時間もの時間が経過していた。子供相手と云えど流石にルイエは疲れが溜まりその場で座り込む。
幼いにも関わらず、十分に溢れる体力と力を持つライトに、ルイエは目を細め疑いの目で顔を見つめる。
(本当に俺の子供なんだよな…?俺の子供にしては能力がありすぎる)
2時間の稽古をしても尚、ライトは木刀を再び握りしめ、素振りをする姿にルイエは呆れ顔をする。
「ライト、父さんが仕事の間は何してるんだ?」
質問を投げられたライトは素振りを止める。木刀を片手に手を腰に回し当てると、仁王立ちで笑う。
「動物と遊んでる!」
子供からは予想も出来ない言葉が口から零れ、ルイエは驚愕する。
「遊ぶ!?家の近くにある山中でか?」
「うん!」
「はぁ!?」
ライトは白い歯を見せながら力強く言葉を発する。ルイエは子供であるライトの性格を知っている。ライトは嘘をつくのが大の苦手だ。
そして、虚勢を張るような言葉も一切口にしない。だからこそ、ライトの言葉にルイエは表情が強張り目線を下に移すとアゴに指を当てる。
(あそこは最悪クマもいるんだが……)
心の中で呟くとルイエは顔をあげ、ライトの顔を見つめる。
「あそこはクマもいるから父さんと一緒じゃ無い時は入るなと言っているだろう!」
「クマこの前いたぞ!」
にわかに信じがたい言葉にルイエは目を大きく見開くと、立ち上がる。
「はぁ!?逃げてきたのか?」
ライトは首を横に振り、木刀を空にあげる。
「ううん。後ろからこの木刀で殴った!そしたらあいつ逃げていきやがった!」
クマと遊んだ、光景をライトは思い出したのか大笑いをしながら話す。ルイエはライトの言葉を鵜呑みにし、まさに開いた口が塞がらない状態だ。
(ライトはもしかすると『
産まれた時から人並より優れている能力を持つ者、【
黙り込むルイエにクマとの光景を思い出し無邪気に笑い、はしゃぐライト。空がオレンジ色に染まり夕方となった時刻に、背後から声が聞こえ2人は振り返る。ライトの母親、そしてルイエの妻であるレイアが腕を組んでいた。
「あなた、ライト…。まだ稽古していたの?夕飯の時間よ」
「めしーー!食べる!」
レイアの大きな声が庭に響くが、話している最中も関わらずライトは一目散に家の中に入っていく。レイアは走り去るライトの後ろ姿を見つめため眉をあげる。
「ライト!ご飯と言いなさい!もう、あなたの言葉を真似するようになったわ」
「細かい事は気にするな。いいじゃないか好きにさせたら。飯だ!飯!」
ライトの後を追うように2人は家の中へと入る。家の中に入ると、テーブルの上にオムライス3皿、緑色の鮮やかなサラダが置かれていた。
ライトはというと既に着席し、目の前に置かれているオムライスが早く食べたくソワソワとしていた。家族全員が着席すると口を揃えて「いただきます」と手を合わせる。
ライトは不器用にスプーンを持つとオムライスをすくい口の中へ運ぶ。運んだらライトの顔が輝くように至福な顔を見せ、ルイエも美味しいと何度も口にしていた。レイアは2人の顔を見つめると幸せの余りに微笑む。
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