第93話 影の正体
ライト 「えっ…?」
人影の正体の顔を見た途端、ライトは驚く。見覚えのある女性が片隅で屈み、手を合わせていた。
ライト 「あーーー!!スレンの姉ちゃんだ!!」
ライトは屈むスレンに指を差し大声を出す。大きな声を出すとスレンは顔をあげ、ライト達を交互に見つめていく。
ネイリー 「こらっ!ライト!」
怒鳴られたライトは口元を咄嗟に両手で覆う。ライトは口を滑らせ口元を両手で覆うが、額からダラダラと汗が溢れる。
ライト (そうだ!!スレンの姉ちゃんは知らない事にしている約束だった!!ヤバイヤバイ!俺、殺される!!雷にやられる!!)
時すでに遅しの状況だが、ライトはマジックバッグから紙とペンを取り出しスレンの元へ歩み寄る。
ライト 「ス、ス、ス、スレンさささまま…。ファン…ですます。サイン下さい…ですます」
プルプルと震えた手で突き出すライト。紙とペンは残像に見える程に震え、スレンは目を大きく見開き立ち上がる。
基本的に人を疑う目を持たぬマレインだが、ライトと共に行動してから3日目が経過。マレインはライトという人物を知りつつある状況だった。思う事を素直に話すライトは、嘘をつくのが大の苦手なのだと、目の前の光景に確信する。
マレイン 「やはり、12聖将のスレン殿と知り合いなのだね?」
ライト (あぁ、俺の人生ここで終わった)
紙とペンを震えていた手で突き出していたが、言い逃れの出来ない状況にライトは石のように全身が硬直する。
ライトはこの後、ライディールに斬られ、スレンの雷魔法で黒焦げにされ短い人生の終了が確定した。
石のように硬くなった身体がそのまま崩れ落ちるのでは無いかと思うぐらいにショックを受け、傍目から見ると、ライトは廃人のように目が死んでいた。
スレン 「はぁ…。やはりこうなると思いました…」
身体が石のように硬直したライトを見つめながらスレンはため息を吐く。この状況を予め予想していたスレンは至って冷静な表情で腕を組むとマレインの顔を直視する。
スレン (ダイヤスファ国の第一王子マレイン様。この王子ならバレても大丈夫か)
険しい表情のせいかマレインは怖気づく。スレンは心の中で物事を整理すると普段の無表情に戻る。
スレン 「えぇ。まぁ、以前、ライトさん、ネイリー姫、リリアさんとは少々、稽古に付き合いましてね。"ライディール先輩"と共に」
スレンがライディールの名を口にするとマレインは驚く。
マレイン 「えっ!?ライディール様も!?」
スレン (ライディール先輩。万が一、バレた時は共倒れですよ)
事が公になり解任となった場合、スレンは容赦なくライディールを道連れにする気だった。驚くマレインは首だけネイリーの方へ振り向き顔をジッと見つめる。
マレイン 「そうか…。ライディール様はネイリーの叔父上でしたね」
マレインは貴族校で過ごしたネイリーの噂を思い返す。父はサファイアローメン国の国王、12聖将の地位を持つ叔父にネイリーは学校で光輝く一輪の花のように存在価値があった。
一時は時期王と一目を置かれ輪の中心にいたが、弟のエルダーが王位継承1位となった途端、ネイリーの周りから人は遠ざかり孤独に光輝く一輪の花となった。
過去の出来事を思い返したマレインは表情が曇りネイリーから目を逸らす。
一方、ライトはというと目が死んでいたが時が経ってもスレンが雷魔法を詠唱する気配は無くバクバクと鼓動の早い心臓の音が徐々に静かになる。
ライト (何か俺、助かった!?)
一命を取り留めたライトはそっと胸を撫で下ろす。
ライト 「スレンの姉ちゃん。ここで何をしてたんだ?」
スレン 「これは私の両親のお墓です」
スレンの目の前にこじんまりとしたお墓があった。花屋で購入したであろう白いユリの花が供えられている。
お墓の前で立つスレンを見つめると、3人は黙り込むしか選択は無くその場で立ちすくむ。無言になる3人だが、スレンは墓の前で再び屈むと刻まれている名前を見つめる。
ネイリー 「ブルー村の一件から議会を終えたのですか?」
スレン 「えぇ。例の件ですね。進展はありませんでしたがね」
スレンはふと議会の光景を思い出す。
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