第94話 2人の想い
スレン 「えぇ。例の件ですね。進展はありませんでしたがね」
スレンはふと議会の光景を思い出す。
―――【時は遡り】
ブルー村でライト達と別れを告げた3日後まで遡る。円卓の席に座る各国王、12聖将が集まりライディールは席の上にネイリーが作ったガラス砂を置く。
ライディール (どうだ!メルディルム!私はお前が持っていない物を手に入れたぞ!羨ましいか!?悔しいか!?ハハハハハハ!!!)
完全勝者の気分で笑みを浮かべたライディールはチラリと横目でネイリーの父である、メルディルムを見る。横目で見ると体格の良い姿のメルディルムと、席の上に置かれた物も視界に入りライディールは目を大きく見開く。
ライディール (な、な、な、何だと!!)
メルディルムが座る席の上にはライディールと同じガラス砂が置かれ何度も交互に見る。
ライディールの視線を感じ取ったのかメルディルムもまた視線を移すと2人は目線がパチンッと合う。
互いに席の上に置かれているガラス砂を見ると2人はフンッ!と鼻を鳴らし目線を逸らす。
議会が始まると議題はブルー村に突如現れた魔人の話となる。しかし、情報源が少なく話が平行線のまま進むと結果的に解決策が見つからず閉廷となった。
ライディール (よし。議会も終わった事だし早速ネイリーのいるダイヤスファ国にでも…)
席から立ち上がるとライディールは出入口に向い足を動かす。だが、風景は一向に変わらぬままで首を傾げる。
ライディール (ん…?歩いているはずなのに一歩も進んでいない!?)
ゆっくり動かしていた足だが、進んでいる気配が無くライディールは目を閉じ更に激しい音を鳴らしながら左右とも高速に動かす。全力で足を動かしたライディールは息を切らし目を開くと視線を下に落とす。
ライディール (またスレンの仕業か!?)
足元を確認すると全くといってもいいほどに一歩も進んでおらず、また邪魔をされた…と思い込んだライディールは隣の席に座っていたスレンを見下ろす。
ライディール 「おいっ!スレン邪魔を―――」
首を動かすとスレンはペンを握りながら、未だに着席し今回の議題の内容を紙に書きまとめていた。
スレン 「…先輩。後ろ」
スレンが指を差すと、ライディールは背後に首を回す。
ライディール 「メルディルム…!」
12聖将の証でもある長いマントだが、メルディルムの足に踏まれている事に気付き睨む。
メルディルム 「どうせダイヤスファ国にいるネイリーの元に行くつもりであろう」
ライディール 「あぁ。その通りだ!可愛い姪をほったらかしに出来るか!その足を離せ!」
マントを引っ張り続けるライディールに、メルディルムは眉をあげる。
メルディルム 「ライディール!ネイリーはもう16歳だ!時には自分の意思で考え、悩み、仲間と共に旅をするのもネイリーの今後の為になる!」
ライディールは引っ張っていたマントから手を離すと、メルディルムの顔に向い人差し指を差す。
ライディール 「ふんっ!何がネイリーの為になる〜だ!ブルー村の依頼でピギーだかパルーだか知らんがネイリーの後を追うサファイアローメン国の兵を私はこの目でしかと見たぞ!」
ライディールは言い切ると、背中から垂れている長いマントを肩から斜めに降ろしたまま顔を前に出す。
メルディルム 「名前が語尾に伸ばす所しか合っていないぞ!ネイリー専属、護衛兵長のビリーだ!貴様こそ12聖将でありながら後輩を連れ回して後を追っていたそうではないか!」
メルディルムもまたライディールの長いマントの先端を踏んだまま、顔を前に出す。
ライディール 「私は護衛任務の手本としてスレンと同行したのだ!」
メルディルム 「表向きの名称は綺麗に聞こえるがな!ネイリーは私の娘だ!あまり過度に干渉されては困る!」
2人は話す度に顔を前に出し、互いの鼻がスレスレに接近した辺りでライディールは怯む。
ライディール 「ぐ…ぐぬ!か…可愛い姪を守って何が悪い!そのマントから足を離せ!メルディルム!」
メルディール 「断る!!」
メルディルムは足をグリグリと動かし踏み込むと、ライディールは意地でも体重の掛かったマントを両腕に力を入れ引っ張る。
スレンは両手を広げヤレヤレといった具合でため息を吐いていると、突如、とある女性が顔の周りに花が咲いているかのような笑みでライディールに向い走る。
「やーん!ライディール様~~!私も守って~~!」
ライディール 「ゲッ!!」
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