第82話 人質
5人はアース村にある飲食店まで全力疾走すると、ようやく大勢の人だかりが目に映る。
「こいつを解放して欲しければ金を用意しろ!」
盗賊はミランダの身体を動かぬよう片腕で押さえ、もう片方の手には短い刃物を握りしめ首元のすぐ間近で留まる。
「ミランダが人質に!誰か助けないと!」
1人の男性が辺りにいる大勢の住民に声を掛けるが目線を逸らす。
「で、でも……」
「怖いし…」
「殺されるかも…」
住民達は互いに見つめ合うが、『誰かが動け』と目で訴えるだけで結局の所、誰1人も行動出来ずその場で立ちすくむ。
ミランダが人質に捕らえられ大勢の住民が集まる中。ようやく5人はミランダが人質としているアース村の飲食店前まで辿り着くと横に整列し一目散にミラルドが大声で叫ぶ。
ミラルド 「ミランダーーーっっ!!」
ミランダ 「お、お兄ちゃん!!」
「動くなーー!!さもなくばコイツを―――!」
ミラルドの大声で反応した盗賊はミランダの首元に刃物を軽く触れると、血がスーッと流れる。ミラルドが過去に誤って盗賊を招いた状況と一緒だった。
マレイン 「皆!作戦は走りながら話した通りに!―――ライトは!?」
マレインは並んで立つ仲間達に向い小声で話すと、ライトの姿は既に無く様々な方角を見渡す。ミランダを人質にする盗賊のすぐ目の前でライトは仁王立ちをする。
ライト 「ははは!そこの変な髭をした盗賊!俺がこの剣で―――」
ライトは素早く腰についている剣に手を回し鞘から抜く。剣を抜き構える瞬間、不思議と力が入らず柄からスルッと指が滑る。そして、重力のままに剣が落ち先端である柄頭がライトの左靴の上に直撃する。
ライト 「いってーーーー!!」
痛みの余りにライトは膝を曲げ左靴の上を手で押さえる。人質として人々を脅す盗賊はライトの間抜けな行動にペースが巻き込まれ唖然とする。
「お前、何やってるんだ…?」
剣の重みを改めて実感したライトは、膝を曲げたまま右首に装着された封印装置を見つめる。
ライト 「この封印装置のせいで剣すらまともに使えないのかよ!!」
ミランダを人質にする盗賊に攻撃も出来ず、挙句の果てに自分が持つ剣の柄頭が左靴の上に直撃し痛みにもがくライト。もはや戦力にならない上にそれでも尚、行動するライトに睨む人物がいた。
ネイリー 「あの馬鹿っ!!」
リリア 「ライト!こんな時に何やってるのよ!」
2人は額に手を当てライトの間抜けな行動にため息を吐く。緊張感が走る状況の中、マレインは至って冷静な顔で腰についている膨れ上がった財布に手を回し金銭を握る。
マレイン 「お金はこの通り渡す!だからその子を解放するんだ!」
両手で大量のお金を持つと、マレインは盗賊の方へと一歩一歩ずつ歩み寄る。
「ははっ!そんなに大量のお金を!だから盗賊を辞められないんだよなぁ!!早くよこせ!」
マレインが持つ金に、盗賊はミランダの首元に刃物を向けながら今か今かと待ちわびる。盗賊との距離が1メートルまで近づくとマレインは目の前に金銭を床に置く。マレインが後ずさると、盗賊は人質として捕らえていたミランダから手を離し急いで回収しようとした瞬間―――ミラルドは手を前に出し足元に茶色の魔法陣を出す。
ミラルド 「
「――っ!?」
頭上に出来上がる
ミラルド 「ミランダ!今の内に逃げるんだっっ!!」
ミランダ 「う……うんっ!」
地面に座ったまま放心状態のミランダは兄の声で恐怖が紛れようやく立ち上がる。目の前で立ちすくむアース村の住民や兄のミラルドがいる方向へ駆け寄り、足を動かすミランダ。だが、盗賊にとってまだ手に届く範囲にいるミランダに目掛け背後から再び短剣を向ける。
「金をまだ回収してねぇのに!!このクソがーー!!」
背後から盗賊の声が聞こえたミランダは足を止め後ろを振り返る。短剣を握り素早く迫る盗賊にミランダは背中を向ける事に危険を感じ、振り返ったままその場で立ち止まる。
ミランダ 「お、お兄ちゃん…助け―――」
ミラルド 「
ミラルドはミランダの背後を守るように
「ク、クソッ!!」
盗賊が
ミラルド 「
ミラルドは盗賊の頭上に目掛けて
前は壁、左を見ると避け切った
「ははっ!後ろはがら空きだな!」
盗賊は身体を180度回転すると、仁王立ちするネイリーの姿か視界に映る。だが、盗賊は臆する事も怯む事も無く口角をあげたままネイリーが立ちはだかる場まで全力で走る。
「たかが女に何が出来る!どけぇーーー!」
ネイリー 「私も高を括られたものだな」
ミラルドが繰り出した
ネイリー 「『
「ゴフゥゥッッッッ!!」
ネイリーに2発殴られた盗賊は、設置された壁まで押し戻され吹き飛ぶ。更に馬鹿力が発揮され壁に盗賊の身体が接触すると丈夫な壁をも貫き、地に着いた時にはピクリとも動かずに意識を失う。
ネイリー 「さぁ!ミランダ!今のうちに兄の元へ逃げろ!」
ミランダ 「は…はいっ!」
背後を狙われ立ち止まっていたミランダは、ネイリーの声でようやく兄のミラルドの元へ向かう。
ネイリー 「よし!ミランダは無事だな!」
ようやく大勢の人だかりにミランダが辿り着くとネイリーは胸に手を当て安堵する。そして、ネイリーも大勢の人だかりに向い足を動かした瞬間。斜め上から幾つもの《つらら》氷柱の形状の物がネイリーの背に迫る。
マレイン 「ネイリー!後ろだ!
ネイリー 「後ろ!?」
ネイリーが振り向いた瞬間、マレインは
リリア 「あっ!飲食店の屋根の上に黒いフードを被った人が!」
リリアが屋根上に指を差すと
「
マレインの壁が崩れると謎の人物は既に別の建物の屋根上へと移動し、目を瞬きする暇も無い素早さで、再び
マレイン 「ネイリーーーっっ!!」
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