第80話 口軽
ミラルドを筆頭に4人は歩き続ける。アース村を囲んでいる壁際まで辿り着くとミラルドは足を止め背後に立つ4人の方へ振り返る。
ミラルド 「こ、ここで、やりましょう」
マレイン 「うん。わかった」
ミラルドとマレイン以外の3人は丸い石の上に座る。
ミラルド 「マ、マレーイン様は…。何属性の魔法が得意ですか…?」
マレイン 「私は氷魔法が得意だよ」
ミラルド 「氷…!?質の良い服と言い…もしかして、お貴族様ですか?」
マレインは自分が着ている服を改めて見る。
マレイン (しまったーー!いつもの癖で普段着を着用してしまった!昨日買った庶民の服を着てくるのを忘れたー!)
マレインは頭を抱えその場で考え込む。そして、冷静に頭の中で考えるとぎこちない笑みでミラルドの顔を見つめ服に指を差す。
マレイン 「こ、この服は大安売りでそこら辺で買ったモノさ~!たまたま氷属性を扱えたダケダヨー!」
マレインは顔を俯け額に手を当てる。
マレイン (そういや、ウォーター村のレイラともこのようなやり取りをしたな…)
ウォーター村でのやり取りを思い返すとマレインは顔をあげる。
ミラルド 「そう…ですか。氷は水魔法の応用魔法ですし…土魔法はまた違います…しね」
ミラルドは腕を組み目線を斜め下に移す。
ミラルド 「では…。教える魔法は土魔法の初級魔法で…」
ミラルドは手を前に出すと足元に茶色の魔法紋を出し詠唱する。
ミラルド 「『
ミラルドが手を前に出した方角に50センチ程の『
ライト 「あーーー!!あの魔法ってスレンの姉ちゃ―――むぐっ!!」
大声を出したライトの口元をネイリー、リリアは咄嗟に塞ぐ。
マレイン 「―――12聖将のスレン殿?」
ミラルドとマレインは口元が塞がれているライトを直視する。
ネイリー 「ラ、ライト!いくらスレン殿がダイヤスファ国の出身国としてもスグニアエルワケナイダロー」
リリア 「アーー!ライトったら12聖将のスレン様に逢いたいってウルサカッタモンネー」
抵抗するライトの口元を塞ぐ2人は耳元で囁く。
ネイリー 「ライト!叔父上とスレン殿に稽古の事は散々口止めをされたであろう!?」
リリア 「話を公にしたらライディール様とスレン様が―――!?」
―――【時は遡り】
ブルー村の一角に草の上でレジャーシートを敷き、昼食を堪能していた時まで遡る。
ライディール 「ライト、ネイリー、リリア。12聖将から直々に稽古をして貰ったなど絶対言ってはならないぞ?」
ライト 「何で?ですます?」
スレン 「12聖将が直々に稽古をするのは育成学校か時期候補のみです。もし、一般民に稽古でもしたと公にでもなった時、我々は―――」
ライディールは手を丸くし親指だけ出すと、首の手前でスーッと横に移動する。
ライディール 「12聖将を解任だ!まぁ、私はネイリーといつでも一緒に入れればいいのだがな!ははは!」
ライディールは優雅に昼食を食べるネイリーの顔を見ると鼻を伸ばす。
ネイリー 「私は真相を暴く…という目的がありますので」
スレン 「まぁ…。流石に口軽では無いと信じていますよ?特に"ライト君"」
普段、無表情なスレンはライトにニッコリと微笑む。
ライト 「ははは!まさか~!ですます~!」
ネイリー 「フフッ。スレン殿も冗談を話すのですね。ライトの性格上"12聖将から直々に稽古をして貰った"と周囲に見得は張りませんよ」
リリア 「うんうん!流石にライトもそこまでおバカではありませんよ~!」
ライディール 「まぁ、万が一でも口にした時は私がライトの首を斬ってやるよ!無いだろうがな!はははは!!」
スレン 「では、その時は私も雷魔法を最大限に出しますか。そんな時は無いでしょうが。ふふっ」
冗談混じりで話しながら、全員が口を大きく開き豪快に笑い合う。
―――――――――――――
ライトは過去の言葉を思い出し額から汗をダラダラと零す。
自分より衝撃波を多く繰り出す馬鹿力のライディール、そして雷魔法を自由自在に操るスレン。12聖将であるライディールとスレンの生で観た凄まじい戦闘シーンを思い出し、ライトは顔がみるみると真っ青になり丸い石の上に静かに座ると顔を俯ける。
ライト (ヤバイヤバイ!もう少しで俺、師匠とスレンの姉ちゃんに殺される所だった…)
急に騒がしいと思ったら大人しくなるライトにミラルドとマレインは顔を合わせ首を傾げる。
ミラルド 「と、とりあえず!これが出来るように…なりましょう」
ミラルドの言葉にマレインは頷くと手を前に出す。
マレイン 「『
マレインが手を前に出した場所には氷と土の交じった壁が出来上がる。
マレイン (やはり氷が…。でも、完全に氷では無くなったな。進歩している)
マレインは肩の力を抜くと壁は崩れボロボロと零れ落ちる。
ミラルド 「す、直ぐに上手くは出来ないと思い…ます。アース村を囲んでいる壁を見つめて、
ミラルドのマリーゴールドのように美しい色の瞳を見つめマレインは頷く。
マレイン 「ミラルドの言う通りだね。あの高い壁を見つめて
ミラルドはマレインの黄赤色の瞳を見つめながら、拳を前に出す。
ミラルド 「が、頑張りましょう!」
マレイン 「うん!ありがとう、ミラルド」
2人は顔を合わせ微笑む。
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