第74話 賑やかな食事
執事を先頭に青い絨毯の上を歩く。歩き続けると大きな扉は既に開かれ、全員くぐり抜ける。
ライト 「すっげーーー!!」
リリア 「キャー!!豪華~~!!」
天井には大きなシャンデリアに火がつき、灯が途絶える事のない明るい食堂にライトとリリアは浮かれていた。左右に設置されている、長いテーブルには刺繍が細かなクロス敷かれ、向かい合わせで食事を楽しめる場だ。
「皆さま、お好きな席に着席して下さい」
ライトは早々に席につくと、ミラも隣の席につく。そして、2人の対面にはネイリー、リリア、マレインが席につく。
対面合わせのテーブルの上には水が入ったグラスとスプーンが置かれ、ライトはグラスに手を伸ばす。
マレイン 「ウォーター村からここに来るまで、道中でライトが『オムライスが食べたい』って話してたから、作るようにお願いしたんだ」
使用人はオムライスの皿を乗せたカートを動かす。ライトが座っている席の後ろでカートを止めると皿を両手で持つ。
「本日の料理はこちらになります」
ライトは水をゴクゴクと飲んでいると、背後から使用人に声を掛けられオムライスの皿が目の前に置かれる。
ライト 「マレインありがとう!―――あれ?コレは何がかけられているんだ?」
オムライスの上には茶色いソースがかけられ、ライトは色々な角度から眺め匂いを嗅ぐ。まるで、警戒心の強い野良犬に温かいご飯を急に差し出した動きだ。
ミラ 「ライト様!それは、デミグラスソースですわ!」
隣に座るミラが答えると、ライトは反応し首を傾げる。
ライト 「デ、デ、デミグラス…そーす?」
ミラ 「はい!コクがあって、まろやかでとっても美味です!」
オムライスの上には真っ赤なトマトソース!と子供の頃から馴染みのある食べ物にライトは不思議な顔をしながらスプーンを持つ。
ライト 「ふーん?どれどれ」
ライトはスプーンを持ちオムライスを崩すと口の中へ運んだ瞬間、顔が輝く。
ライト 「う、うめーーー!あっ…。美味しい…ですます…」
ライトの子供のような輝いた顔から無理矢理、笑みを作り、言動を改める姿勢にマレインはクスッと笑う。
マレイン 「ライト。マナーは気にしないで、好きに食べて良いよ。それじゃあ、味も楽しめないよ」
ライト 「へへっ!んじゃ、普段通りに!いっただきまーす!」
マレインの言葉通りにライトは周りの目など気にせずスプーンでオムライスを大の口ですくうと口の中へ運ぶ。
ライト 「ふ、ふまーーい!」
頬は大きく膨れ上がりライトはオムライスをわんぱくな顔で堪能する。
ミラ (庶民の男性はこのような野蛮なお姿で食べるのが普通なのですわね…。でも全てを受け入れてこそ愛が出来上がるのよ!ミラ!受け入れるのよ!)
手を合わせながら隣に座るミラは、ライトの食べっぷりに圧倒されていた。だが、真実の愛の為、ライトの全てを受け入れるようにミラは心の中で自分に言い聞かせる。
ネイリー 「ふむ。美味しいな」
リリア 「ん~~!美味しい~!このソースを再現できるように後でメモ書いておかないと!でも、今は味を堪能しよー♪」
2人もデミグラスソースのかかったオムライスを至福な顔で頬張る。マレインは予想通りに喜ぶ顔をする3人の笑顔に満足し、自分もスプーンを持ちオムライスを頬張る。
学校卒業後、マレインは別荘でいつも一人で食事を済ませていたが、笑みの絶えない賑やかな食堂で食事を楽しんでいた。執事もまたマレインの笑顔に頷き微笑んでいた。
―――【2時間後】
ライト 「お腹もいっぱいだし、風呂も入って最高だな~!」
寝巻に着替えたライトは、フカフカのベッドの上で座りながら、ピョンピョン跳ねる。
マレイン 「それは良かった。ライト、寝る部屋が私と同じですまない」
マレインもまた寝巻に着替え、2つ並ぶベッドの上で互いに座りながら顔を合わせる。
ライト 「ん?俺達は野宿で慣れてるから別にどこでも大丈夫だぞ」
軽く返答すると、ライトは再びベッドの上でピョンピョン跳ねる。
マレイン 「本当に野宿するのかい?」
ライト 「まあな!」
マレイン 「そっか…。本当にネイリーも野宿しているのか…」
目を逸らすマレインにライトはベッドの上で跳ねる事を辞め、顔を覗き込む。
ライト 「マレイン、野宿したいのか?」
マレイン 「いや。王族であるネイリーが野宿とか想像出来なくてね」
ライトは腕を組む。
ライト 「ネイリーは、『庶民隠し事件』の真相を暴きたい!つって俺と旅してるんだよな。まぁ、俺からも仲間になってくれって頼んだんだけどな!」
ライトはニッと笑いながら話すが、マレインは"当時の事件"を思い出し顔が曇る。
マレイン 「っ!!あの事件か…。ダイヤスファ国からも庶民が急に消えて驚いたよ」
ライト 「俺の父さんと母さんもそれで消えたんだ」
他人事のように『庶民隠し事件』の事を口にしたマレインだったが、口ごもる事も無く率直に話すライトこそが"例の事件"の被害者なのだ―――と現実を直面した瞬間だった。
マレイン 「えっ!ライトのご両親が!?すまない、酷な事を言わせてしまったね…」
ライトは首を横に振る。
ライト 「いいんだ!まぁ、俺も父さんと母さんを探しに旅をしてるからな!」
目を逸らす事も無く、自信に満ち溢れたライトの顔を見たマレインは胸がキュッと締め付けられるような気分になる。
マレイン (私より、ライトの方がよっぽど苦しいじゃないか。私はただ単に能力が低いから…と言い訳に目を背けているだけだ)
マレインは顔を俯け涙を零してしまいそうになったが、ライトに微笑む。
マレイン 「ライト。そろそろ寝ようか」
ライト 「だな!明日も鍛えて貰うんだろ?」
マレインは首を縦に振り頷く。
マレイン 「うん。そのつもりだよ」
ライト 「んじゃ、ゆっくり寝ないと!明日も頑張ろうな、マレイン!おやすみ~!」
マレイン 「うん、勿論だよ!おやすみ、ライト」
ライトは早々にベッドの上に横になると掛け布団を被る。そして、マレインは魔法道具のランタンのボタンを押し灯りを消すと部屋は真っ暗となる。
マレイン (ライト。絶対に強くなって君のような被害者は出さないようにするからね)
マレインは真っ暗中、ライトが横になっているベッドの方向を見つめながら心の中で固い決意の言葉を零す。決意をすると、マレインもベッドの上で横になりライトと共にスーッと寝息の音をたて就寝する。
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