第72話 英雄
レイラ 「マレーイン様!この度はありがとうございました!」
深々と頭を下げると、マレインはレイラに両手をあげ振る。
マレイン 「ううん!レイラのお陰で水の魔法が扱えるようになった。こちらこそ礼を言うよ」
2人は会話のやり取りをしていると、女性がマレインに近づき頭を下げる。
「旅のお方、子供達を助けてくれてありがとうございます」
「お兄ちゃん、ありがとう!」
「助けてくれて、ありがとう!」
母親と助けた子供達の笑顔にマレインは心が満たされ笑顔を返す。子供達に駆け寄り、同じ視線の位置までしゃがむと頭を撫でる。
マレイン 「どういたしまして。本当に無事でよかった」
子供達は照れながらも助けてくれたマレインを自分達の
ライト 「そろそろ、暗くなる時間帯だな。俺達は冒険者ギルドの宿に戻るか」
ライトもまたオレンジ色に染まる空を見上げながら話す。
マレイン 「待って!その封印装置を装着している間は私の別荘に泊まった方が良い。”冒険者ギルドで暴れた奴だ”って目につくよ」
マレインは右腕に装着された封印装置に指を差すと、ライトは右腕をあげ眺める。
ライト 「俺は別に気にしないぞ?」
封印装置を眺め終えるとライトはマレインの顔を見つめる。しかし、マレインは首を横に振る。
マレイン 「ライトは気にしないかもしれないが、同行していたネイリーとリリアも同じ目で見られるよ」
マレインの意見にネイリーは頷く。
ネイリー 「そうだな。今回ばかりはマレインの意見に賛同だ」
リリアは腕を組むと、マレインとネイリーの意見に同調しコクコクと頷く。
リリア 「ほとぼりが冷めるまで、マレインの別荘にお邪魔した方がよさそうだね」
リリア (よしっ!広い浴槽でのーんびりするぞー!!いぇえーーい!)
ライトは腰に手をあてると3人が同じ意見ならしょうがない…と仕方なく頷く。
ライト 「そうか…。んじゃ、マレインの別荘にお邪魔するか!」
ライト (おし!今日はスペシャルオムライスだ!ひゃっほおおおおいい!!)
一見、普通に微笑んでいる2人だが、内心では昨夜に妄想した事が現実になる事に相当浮かれていた。
レイラ 「今、マレイン様と呼んでいましたか?やはりダイヤスファ国の王子様…?」
マレインが先頭に立ち、別荘へと向かおうとした瞬間、背後からレイラの声が聞こえフリーズする。
ライト 「ち、違う違う!こいつの名前はマカロン?あれ?マシュマロ?マレイン?」
リリアは
リリア 「こ、こんな所にオウジサマなんてイナイヨー」
マレイン 「ソウソウ!私の名はマシュマロ!違う!マレーインという、れっきとした名がアルンダー」
ネイリー 「氷魔法しか扱えなかった奴がオウジサマなワケ、ナイダロー」
倒れ込んだライトを隠すように3人はレイラの目の前に出る。妙な芝居にレイラは疑う様子も無く微笑む。
レイラ 「ふふ。そうですよね。私の勘違いですね」
レイラが疑う様子もない表情をすると、マレインは安堵する。
マレイン 「う、うん。じゃあ、私は冒険者ギルドの宿でも向かうよ。レイラ、今日はありがとう!またね!」
レイラ 「はい、この度はありがとうございました。また」
マレインは嘘の言葉をなんとか話し終えるとホッと息をつき、レイラに背中を見せ歩く。
レイラ (マレイン王子様、ありがとうございました)
レイラは口に出せずにいた言葉を心の中で吐き出す。オレンジ色に染まる空の中、遠ざかるマレインの後ろ姿を見つめながら。
―――【30分後】
4人はウォーター村から、マレインの別荘に訪れる。庭には3段もある大きな噴水があり水が堪え切れる事はなく只々ひたすら循環し流れる。庭にはサファイアローメン国では珍しいパンジーの花が沢山植えられ赤、青、黄色、ピンク…と色鮮やに咲き誇る。
「マレイン様、お帰りなさいませ。後ろにいる方は…これはこれは、ネイリー様!大きくなり随分お綺麗になりましたな」
マレインの執事である人物は外の玄関前に立ちネイリーを見た幼少期の面影を思い出し途端、驚く。
ネイリー 「久しいな。元気そうでなりよりだ」
「ええ、お陰様で。ネイリー様のお隣にいる方は…」
執事はライトとリリアを見ると言葉に詰まる。着ている服が上質な物で立ち振る舞いも基本的なマナーがあるが、どことなくぎこちない立ち振る舞いに庶民だとすぐに分かり切っていた。
マレイン 「2人は魔物に襲われかけている事を助けてくれた大事な恩人だ。お礼で今日はここに泊まって貰う予定なんだ」
「!?…そうですか。マレイン様をお救い下さりありがとうございます。では中へお入り下さい」
4人は別荘の中へ入ると、目の前から女の子がこちらへとお転婆な姿で走り駆け寄る。
「お兄様!お帰りなさいませ!」
女の子は金髪でツインテールにピンク色のリボンで結び先だけくるっと巻いている髪がなびき4人の前まで辿り着くと手を合わせ顔を傾け可愛らしい振舞をする。
マレイン 「ネイリーは知っているだろうが、私の4歳下の妹だ。ミラ…私の別荘に来ていたのかい?」
ミラ 「ええ。王宮内では窮屈でしょうがなくて…。お兄様の別荘へと気分転換にと―――!」
ミラはライトに気が付くと驚いた表情を見せる。そして、目を輝かせ何故か嬉しいのか満面の笑みを見せライトに顔を寄せる。
ミラ 「もしかして、庶民校を首席で卒業したライト様!!」
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