ダイヤスファ国編

第59話 衝突

―――【1週間後】


 3人はサファイアローメン国の冒険者ギルドからダイヤスファ国へと向かう為、マジックマップをネイリーが開きながら歩き続けた。途中、レッド村に立ち寄り適度に休憩やレッド村にしか無い食事や特産物、風景を眺め3人にとって充実した旅を満喫していた。そして冒険者ギルドから旅立ってから1週間後、ダイヤスファ国を目指し再び歩いていると国境近くに道が左右に分かれていた位置でネイリーとリリアは険しい顔で見つめ合いながら互いの意見を言い合っていた。


ネイリー 「イヤ、ここから左に進んだ方が良い」


リリア 「ううん、ここから右に進んだ方が良い」


 互いに意見が合わず2人は眉間にしわを寄せ、鋭い目つきで互いを見つめながら冷静に口を開く。


ネイリー 「…リリア、私の事は気にしなくていい」


リリア 「左の道は崖が多いから。歩くの慣れていないネイリーは右の方が良い」


ネイリー 「私なら気にしなくて良い。左の道の方が早いから2人のペースに合わせる」


リリア 「ううん。遠回りになるけど真っ平らな道の右をいく」


ネイリー 「いや、左だ」


リリア 「ううん。右」


 2人はピリピリとした雰囲気の中、何か一言でも勘に障った事を言ってしまったらいまにも怒ってしまうのではないか…と思う勢いの表情でライトの方に振り向き同時に問いただす。


ネイリー 「ライトも左の方が良いであろう?」


リリア 「ライトも右の方が安全で良いでしょ?」


ライト 「あぁ…うん…」


ライト (女子の言い合いこえーーー!俺を巻き込まないでくれーーー!)


 2人が言い合っている中、巻き込まれたくないがためにライトは何も言わず黙りながら存在感を消していたが声を掛けられた途端に恐怖心を抱きながら小声で曖昧な返答をする。


ネイリー 「ハッキリ答えろ」


リリア 「早く答えを言って」


 ライトは2人の剣幕に押されながら考え込む仕草をすると何か思いついたようで腰に付けていた剣を取り出し、握りしめながら提案をする。


ライト 「じゃ、じゃあ俺の剣が倒れた方向に進もう!」


 提案を聞いた瞬間に2人は怒りが抑えられず普段より低いトーンの声で睨みつけながらライトに話す。


ネイリー 「私は真剣に質問をしているのだぞ?そんな子供みたいな提案は辞めてくれ」


リリア 「もしかしたら命に関わるかもしれないのに…そんなギャンブルみたいな提案は辞めて!」


ライト 「スンマセン……デスマス」


ライト (俺、殺される殺される…怖い怖い…)


 ライトは必死に考えた提案を2人に速攻ダメ出しされ、震えた声で2人に謝罪をする。そしてライトは2人から顔を背け、頭を抱えながらどうしたら良いものか…と考えながら再び剣を腰に戻すと馬車が近くで止まる音が聞こえ、50代手前のがたいの良い男性に3人は声を掛けられる。


 「君たち、迷子になったのか?」


 3人は馬車を動かしている人物の方に一斉に顔を振り向き経由を話す。


ネイリー 「いや、ダイヤスファ国に向っているのだ。それで左右の道をどちらに進むかを話し合っている」


 そうすると馬車を動かしている男性は空を見上げながら話し始める。


 「この天候だとそろそろ雨が降るって話だ。左道は雨の中、崖道で滑ったら大変な事になるから右の真っ平らな道の方が安全だぞ?」


ネイリー 「そうか…。ありがとう」


 「ここからダイヤスファ国まで時間が掛かるし…良かったら乗っていくか?丁度俺もダイヤスファ国へ向かう予定なんだ」


ライト 「良いのか!?」


 「あぁ、少々荷物は乗っているが3人が乗せられるぐらいは空いているぞ」


リリア 「じゃあ、甘えて乗っちゃう?」


ネイリー 「そうするか。ではよろしく頼む」


 3人は屋根付きの馬車の中に乗ると中には食材や素材が入っている袋が並べられているが、空いている隙間に座る。


 「3人共乗ったな。じゃあ動くぞ!」


 そして馬車は再度動き始めネイリーとリリアが話し始める。


ネイリー 「リリア、先程はすまなかった。私が軽率だった…」


リリア 「ううん。ネイリーは中々、外に外出しないでしょ?分からなくて当然だよ?私こそ言い方が冷たくてごめんね」


 ネイリーとリリアは先程まで言い争っていたが互いに謝罪し仲直りした。その光景をライトは安堵しながら眺めていた。


ライト (なんとかなって良かった…)


 3人は馬車に乗りながらダイヤスファ国へと向かうと次第に雨が馬車の屋根にぶつかり、ポツポツと降る音が鳴り始めた。

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