第60話 入国
―――【3時間後】
「3人共~!ダイヤスファ国の国境まで着いたぞ!」
3人は雨音を聞きながら馬車の中でウトウトしていたが声を掛けられ意識が戻り、馬車の外へと出る。外に出ると雨は止んだばかりのようで、国境沿いでは2人の兵隊が門番でパスポートの確認をしていた。
「パスポートを提出しろ。…よし、通っていいぞ。次!」
国境沿いには1人の兵隊がダイヤスファ国に入国するのを確認し、もう一人の兵隊はサファイアローメン国に入国するのを確認していた。
ライト 「ようやくダイヤスファ国に入国出来るのか!よし、並ぼうぜ!」
ネイリー 「冒険者パスポートを用意しないとな」
リリア 「冒険者パスポートはどこかな~…」
3人は冒険者パスポートを取り出し、入国するのに並び始めた。そして先程まで馬車を動かしていた者が確認する順番がきたようでパスポートを提出していた。
「商人パスポートか…馬車の中も一応確認するぞ」
馬車を乗せてくれた人物は商人だったようで馬車の中も兵隊に確認されていた。そして兵隊が確認し終えたようで商人に再度話し始める。
「異常なしだ。通っていいぞ。次!」
商人が確認を終えるとライトの順番になり冒険者パスポートを提出する。
「冒険者か。バッジも見せて貰って良いか?」
ライト 「…?あぁ、バッジバッジ…と」
ライトは自分のランクバッジを取り出し見せる。
「シルバー1ランクか。たまに低ランクで入国して悪さをする冒険者も出てくるようになってきたので一応確認させて貰った。通っていいぞ!次!」
ライトは承諾を得たのでダイヤスファ国へと入国するとネイリーの順番が回ったようで冒険者パスポートを見せる前に兵隊は驚く。
「ネ、ネイリー姫!?何故ここまで…?」
ネイリー 「父上にはダイヤスファ国に向うと伝えてある。前に確認した彼と私の後ろにいる彼女と一緒にだ」
「そ、そうですか!では、後ろに並んでいる彼女も入国して大丈夫です!」
ネイリー 「そうか。ではリリア、入国するか」
リリア 「えっ!?わ、分かった!」
ネイリーとリリアはダイヤスファ国の入国許可を得たので入国し、ライトと合流した。入国すると大勢の人達が入国したばかりの人達に聞こえるように大声で話していた。
「ダイヤスファ国の冒険者ギルドまで送迎するよー!おひとり様、たったの3万シル!」
「ダイヤスファ国の各街、各村まで送迎、荷物持ち込々で20万シルで送迎します!馬車ごと運びますー!」
「ダイヤスファ国の中心街まで豪華でゆったり寛げる乗り物に乗りながら数時間で送迎します!貴族の皆さまにご好評です!おひとり様、たったの50万シルです!」
どうやらダイヤスファ国のあらゆる場所まで送迎するといったサービスを提供する売り込みをしていた。
ライト 「今まで馬車に乗るだけでも早いって感じていたけどダイヤスファ国の送迎は早いよな!」
ネイリー 「あぁ、どのような原理でそこまで早く送迎できるのだろうな…」
リリア 「馬車より早く移動出来るって本当かなぁ?」
3人は入国して早々に送迎の種類の多さに驚いていた。そして先程まで馬車に乗せてくれた男性は入国後すぐに馬車ごと送迎を依頼していたようだった。
ライト 「俺達は冒険者だし、とりあえずダイヤスファ国の冒険者ギルドに向うよな?」
ネイリー 「そうだな。あそこには寝る所も食べる所もあるだろう」
リリア 「知らない土地で何回も野宿するのも怖いし、そのほうが良いね」
ライト 「じゃあ、ダイヤスファ国の冒険者ギルド行きのやつ利用してみようぜ!」
ライトはダイヤスファ国の冒険者ギルド行きの送迎を売り込みしている若い男女の2人に指を差す。指を差した方向をネイリーとリリアも振り向き、看板の値段を見ると『ダイヤスファ国の冒険者ギルド行き3時間で着!おひとり様、3万シル』と書かれていた。
ネイリー 「…3時間で着くのか。早いし良いな」
リリア 「おひとり様、3万シル…高くないし良いんじゃないかなぁ?」
ライト 「おしっ!決まりだな!」
3人は意見が合致したのでダイヤスファ国の冒険者ギルド行きまでの売り込みをしているライト達と大差のない年齢の男女が立っている位置まで駆け寄る。そして声が届く位置まで辿りつくとライトから声を掛ける。
ライト 「ダイヤスファ国の冒険者ギルド行きまでのやつを利用したいんだけど…」
「あぁ!歓迎だよ!」
「さぁさぁ!こちらへ!」
若い男女が誘導した乗り物の形は馬車を長くしたもので中には座る椅子が数か所あるものだった。しかし、馬もいなければ車輪も付いていないので3人は疑うような表情で口を開いた。
ライト 「えっ…?これは乗り物なのか?」
ネイリー 「この箱のような物で移動…?」
リリア 「えっ?本当に?馬もいないし…車輪も付いていない…」
3人は疑うような目で乗り物を見つめ思わず声が漏れてしまうが、若い男女は笑みを保ちながら返答する。
「そんな疑うような目で質問しないで欲しいな~」
「サファイアローメン国の人は初め必ず驚くからね。うちの国の能力をもっと知ってほしいよ!」
ネイリー 「そうか…。ダイヤスファ国は攻撃魔法能力が得意だったな」
「ピンポーン!これに乗って風魔法でお届けって事!」
リリア 「そっか、ダイヤスファ国は攻撃魔法が得意だから様々な属性魔法を操れるんだ!」
「まぁ、私達は風魔法が得意なだけで」
「2人で操作するって仕組みだよ~」
ライト 「3万シルだとそこまで高額じゃないから乗っていかないか?」
ネイリー 「そうだな。また歩きだと時間が掛かりそうだしな」
リリア 「魔法で移動するのを体感したいから乗ろうよ!」
ライトは3人分のお金を用意し渡す。
「毎度ありー!さぁ、乗って乗って!」
3人は乗り物の中に乗ると椅子に座り、若い男女も本来なら馬車で例えるなら馬を操作するであろう位置に移動し操作の準備に掛かる。
「落とされないように椅子の前に付いている取っ手を握りしめていてね!」
「んじゃ出発するよー!」
若い男女はマジックバッグから杖を取り出し呪文を言いながら大きな魔法陣を出し始めると乗り物がプカプカと浮きながら物凄いスピードで動き始めダイヤスファ国の冒険者ギルドまで向かい始めた。
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