第39話 見ぬ食べ物


 何者かが人に物を渡している…。渡している物は知っている物のような…?そしてこの者達は誰なのだろうか…?視界はボヤけているが、お互いの表情は———


———【翌日】


リリア 「ライト!そろそろ起きなよ?」


ネイリー 「全く、ライトは寝相が悪いな」


 2人の声にマジッグベッドの上で横になっているライトは目を開け、視界には間近で覗くネイリーとリリアの顔が急に映る。


ライト 「う、うわっ!!!びっくりした!!!」


 ライトは飛び跳ねるように急に起き上がる。普段なら朝に弱いライトは立ち上がるとフラフラで歩き、寝ぼけた顔で朝食を済ませるはずだが…急に起き上がる反応をした事に違和感を感じた2人は驚く。


リリア 「そ、そんなに驚く事だった…?」


ライト 「いや…夢か…」


ネイリー 「…?また食べる夢でも見ていたのか?」


ライト 「いや…。ブルー村に旅立ってから食べる夢の他にも違う夢を何度か見るんだ」


 呆然とした表情でライトは横に首を振ると、2人は顔を見合わせ首を傾げる。3人はそれぞれ状況が理解出来ず無言の間が空くがリリアはライトの顔を改めて見つめ声を掛ける。


リリア 「とりあえず、ライト。朝ごはん食べにいかない?」


ネイリー 「滞在中、食事や宿屋の費用はサモン村長が負担してくれると言っていたしな。ブルー村の様子も見たいし、また市場に行かないか?」


ライト 「おお!!いくいく!!」


 3人は宿屋から外へと出ると、太陽の光に照らされたまま軽やかなステップを踏み市場へと向かう。3人の姿を見かけたライディールはすぐさまにネイリーの後をついていこうと走ろうとした瞬間…スレンは見逃さずにマントをがっしりと掴む。


ライディール 「スレン!昨日に続き何故またもや止めるのだ!」


 足を止められたライディールは不満な表情でスレンに対し大きな声を出し反発する。感情的になるライディールにスレンは冷静な表情を崩す事も無く淡々と話す。


スレン 「先輩がライト君を殺害するのを止める為です」


ライディール 「まだ手も足も何も出してないぞ!」


スレン 「後をついていったら、絶対に殺意剥き出しの表情で大剣を握り始めます。それに私達は私達でやる事はありますよ?」


ライディール 「む?何だ」


 スレンは自分達が乗り降りしている『犬の動物ウルフティ』用の、袋の中に入れたご飯とバケツに入った掃除道具をマジッグバッグから取り出し、手に握り絞めるとライディールの目の前に突き出す。


 12聖将せいしょうには特殊な乗り物の動物が提供される。長距離で移動する場合、ライディールとスレンは狼を大きくしたような姿をした、ウルフティ族を愛用で乗っていた。


スレン 「この子たちにご飯とそれにしばらく身体を洗っていなかったのでこの時にやりましょう?」


ウルフティ 「わんっ!!」


 ライディールは落ち込んだ表情をしながらご飯を与え、身体を洗い始める。そして3人は今頃何をしているのであろうか…と妄想する。


———【ライディール妄想】


 3人は市場へと足を運び、縦一直線に並べられている屋台を眺めていた。それぞれ屋台で食事を購入し口の中へと運ぶ。


ライト 「ネイリー、コレ美味しいぞ?」


ネイリー 「本当?私もライトが食べてる物を食べたい」


 ネイリーはライトに対して物をねだる。


ライト 「ネイリーは甘えん坊さんだな。ほら『あ~ん』」


ネイリー 「『あ~ん』」


————————————


 ネイリーがライトに食べ物を「あ~ん」…としている、自分だけの行き過ぎた妄想しライディールは自分が愛用して乗っているウルフティを激しくゴシゴシ洗いながら大声で発言する。


ライディール 「このおおおおお!!少年覚えていろよおおお!!!」



———魔人討伐が一件落着してからブルー村の市場に再び3人は訪れる。魔人討伐前は屋台などちらほらしか開店していなかったが…魔人討伐後、市場は縦一直線に多くの屋台がずらーっと開店され、ブルー村の多くの住民から笑顔が戻っていた。多くの人が市場でガヤガヤと賑やかで行き交う中、3人は屋台を覗くと海産物が大量に陳列されていた。


ライト 「おぉーーー!いっぱい海産物が売られてるぞ!!」


ネイリー 「サモン村長に陸地から離れている場所だと獲れるらしいと助言してみたが本当に獲れたみたいだな」


リリア 「私の大好きなサケがいっぱい売られてるよ~~!あそこにはホタテも売られてる!!あっ!あっちにはエビが大量に!!どれもこれも食べたいけど選べないよ~~!」


 活気を再び取り戻したブルー村に3人は笑顔で安堵する。そして、リリアは屋台を目移りするように陳列された海産物を眺め興奮していた。屋台をあちらほちらへと落ち着きのない表情で眺める中、ライトの鼻に香ばしい匂いが残り振り向く。匂いのする屋台は鉄板の上で見た事も無い食事が焼かれ、気になったライトは興奮している2人に匂いがする屋台に指を差し、声を掛ける。


ライト 「なぁ!あそこ良い匂いしないか!?」


 ライトの言葉に2人も続いて香ばしい匂いをする屋台の方へ振り向くと、鉄板の上でジュウジュウ…と焼く音が聞こえ目が止まる。


ネイリー 「…本当だ良い匂いだ」


リリア 「何だろう…?いってみよ!」


 3人は屋台の方へ急ぎ足で駆け寄り、気になったライトは鉄板の上で焼かれた物を見つめながら先に声を出す。


ライト 「おっちゃん!それ何焼いてるんだ?」


 「お!噂の少年!村長から話は聞いてるぞ。よその大陸で人気らしい『お好み焼き』って言うのを焼いてるんだ!具は海産物だから『海鮮お好み焼き』だな!」


ネイリー 「『おにぎり』で有名な大陸か」


リリア 「あそこの大陸のメニューかぁ~!何か香ばしい匂いがして食欲そそる~」


 3人は『海鮮お好み焼き』の香ばしいソースの匂いにそそられお腹が鳴ると、笑顔で顔を見合わせ即決し『海鮮お好み焼き』を3つ注文した。亭主が出来立ての『海鮮お好み焼き』を簡易的な器に入れ、3人は屋台のすぐ側に設置されているテーブルにつく。すぐ食事をがっつくライトは料理が熱いのかハフハフ!と汗をダラーッ流しながら火傷しないよう焦りながら食べる。そして、ライトの食べた反応を見て学習した2人はふーっと料理に息を掛け、十分に熱を冷ますといよいよ口の中へと運ぶ。


ライト 「この『海鮮お好み焼き』うめーなぁ!!」


ネイリー 「このマヨネーズとソース?とやらが絶妙に合うな」


リリア 「美味し~~!後で日記にメモしなきゃ!!」


 3人は初めて食べる『海鮮お好み焼き』を目を輝かせながら、各々と感想を言い合う。そして、言い終えた後は料理を至福な笑顔で頬張っていた。

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