第34話 結婚相手…?


ネイリー 「結婚相手…?そんな相手は決めていませんが…?」


 覚えのない表情で答えるネイリーにライディールは目を大きく見開き大きな声を出す。


ライディール 「えっっっ!!!!ネイリー、お前が5歳の時、確かに言っていたではないか!」


———【ネイリー(5歳)】


 サファイアローメン国に中心部に建てられている王族が住む王宮内にとある少女と気品に溢れる女性が手を繋ぎ、廊下に敷かれている絨毯の上を歩いていた。


アイリー 「ネイリー、今日は私の兄であるライディール叔父上が来ますよ」


ネイリー 「ライディールおじうえがあそびにくるのですか?」


 母であるアイリーの発言で立ち止まるネイリーは目を輝かせ次第に笑顔を見せる。


アイリー 「ふふ、そうですよ。ネイリー、好きだものね」


ネイリー 「はい!おじうえとけいこするの好きです!」


 顔に『早く逢いたい』と書かれている同然の表情をし、落ち着きのない素振りを見せるネイリーに、気持ちが何となく察しがつくアイリーは微笑ながら見つめていた。



———【1時間後】


 客の間でライディールを出迎えるのに待ち続け、アイリーは刺繍で暇を潰し、ネイリーは本を読書していたが待ちきれず全く頭には入っていない様子だった。待ち続けているとドア越しに誰かが爆走で走っている音が徐々に近づくように聞こえ始め、バンッ!!!と勢いよく客の間の扉が開く。


ライディール 「私の可愛い妹と姪~~~!!!かっこいい兄さんが会いに来たぞ~!」


アイリー 「もう、お兄様ったら。いつも元気ね」


 アイリーはクスクスと笑い、刺繍の手を止め座っていたソファから立ち上がる。ネイリーもライディールが客間に入ってきた途端に、読んでいた本をパタンと閉め座っていたソファから立ち上がり表情はニコニコと笑い、5歳ながらも行儀良く手を前に組む。ライディールは2人の姿を見た瞬間に安堵し辺りをキョロキョロと見渡す。


ライディール 「あのクソ髭メルディルム野郎はいないな!!」


 何を隠そうライディールはかなりのシスコンで、アイリーに瓜二つの姪であるネイリーにも溺愛していた。ライディールとサファイアローメン国の現在、王であるメルディルムは貴族校の在学中の時にクラスも一緒で、親友でもあり良きライバルでもあった。


 しかし、妹のアイリーがサファイアローメン国の王であるメルディルムと婚約が決まり結婚に対しては大反対を押し通していた。中々引き下がらないライディールにアイリーはついにブチ切れ、「メルディルム様とは絶対に結婚する!反対するなら絶縁する!」と言い渡され大人しく結婚の反対を諦めた。無事に結婚しても尚、言葉には出さないが、未だに大事な妹をメルディルムに取られた!とライディールは根に持ち続けていた。


アイリー 「…??お兄様、メルディルム様にお会いになりたいのですか?今日は外交のお仕事があったような…」


 頬に手をあて考え込むアイリーに対し、ライディールは顔を背け、険しい表情になりながら心の中で呟く。


ライディール (あのクソ髭メルディルムの顔なんて見たくもない!今日はめいいっぱい癒されにきたんだ!)


 顔を背け、険しい表情をしていたライディールはアイリーの方向に振り向き、顔を合わせると何事も無かったかのように華やかな笑顔を見せ口を開く。


ライディール 「ううん、お仕事の邪魔したくないから今日は大丈夫だよー!」


ネイリー 「ライディールおじうえー!けいこしてください~!」


 小さいながらも必死にトテトテと走るネイリーはライディールの足にしがみ付くように抱き着く。そしてライディールの瞳にはハートが描かれているように射止められネイリーの体を持ち上げると腕の中に抱き頬をスリスリする。


ライディール 「可愛いネイリーーー!!勿論いつまでもお稽古するよ!」


———【数時間後】


 王宮内の稽古場で水分補給をし休憩している最中に、ライディールは目の前に座っているネイリーの可愛さの余りにウットリしながらデレデレとした表情で、汗をタオルで拭きながら質問をする。


ライディール 「ネイリーは大きくなったら何になるんだい?」


ネイリー 「う~ん」


 質問に対し子供ながらに考えるネイリーは首を傾げ見上げる。


ネイリー (やっぱりつよいひととけっこんしないと、サファイアローメンこくのためにならないかな?あ!ライディールおじうえつよい!)


 心の中で考えが纏まるとライディールの方を振り向き満面の笑顔で返答をする。


ネイリー 「ライディールおじうえのおよめさんになることです~!」


ライディール (ああ。ここは天国なのだろうか)


 ネイリーの一言でライディールはまるで魂でも抜かれてしまったのであろうか…と思う程の放心状態で至福な笑みのまま上を見上げ暫くの間、硬直していた。


———【現在】


ライディール 「5歳の時、大きくなったら『ライディールおじうえのおよめさんになる~!』って言ってくれたじゃないか!!」


ネイリー 「~~っっ!!!何歳の頃の話をしているんですか!私はもう学校を卒業した大人です!」


 ネイリーは思わず声にならない程に顔を赤らめるが、目線を逸らし腕を組む。


ライト 「へ、へぇ~…?」


リリア 「ネイリーって子供の時、純粋だったんだね…」


 ライトはライディールの顔をマジマジと見つめ言葉を真に受けていたが、リリアは 思わぬ面を知る事が出来て関心していた。


ネイリー 「それより、叔父上。魔人はどうなりましたか?」


ライディール 「それより!?…可愛いネイリーをいじめる奴は全員倒したよ!」


 ライディールの発言にライトは驚き、ジッと身体を眺めると戦った形跡すら残さない程に傷など1つも見たらない事に気付く。


ライト 「す、すげーーー!!ネイリーのおっさん…何者なんだ……?」


 問いにライディールはネイリーから手を放し、共に同行していた黒髪のボブヘアーの女性の側へ駆け寄り並ぶ。そして、2人は胸に手を当て口を開く。


ライディール 「私は12聖将せいしょうの一人。ライディール・ルメルスだ。よろしくな」


スレン 「私も12聖将せいしょうの一人。スレン・エルディです。よろしくお願いします」


ライト・リリア 「「12聖将せいしょうー-----!!??」」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る