第20話 リリアの過去


 3人はクリームシチューが入っていた器を綺麗に平らげ食器を洗い終えると楽になりながら座り寛いでいた。


ライト 「ふー!お腹いっぱいになったな。リリアの料理はやっぱうまいなぁ」


ネイリー 「初めて食べてみたがとても美味しかった。しかし…残ってしまったな」


 その場でライトは横に寝そべりお腹をポンポンと叩きながら満足気だったが、折角作ったクリームシチューがまだ鍋に残っている事にネイリーは罪悪感を抱きながら見つめていた。


リリア 「ふふ。ありがとう!残ったやつはまた明日の朝、温めなおして食べようよ」


ライト 「明日も食えるのか~!楽しみだな~!」


 先程食べたばかりとは思えない発言をするライトは明日の朝食を想い更けながら表情はニヤつき、少々落ち着きのない素振りを見せる。そんな落ち着きのないライトを全く気にもしていないネイリーは周辺の方が気になる素振りで辺りを見渡しながら2人に声を掛ける。


ネイリー 「明日も早いし、今日はそろそろ寝るか。ここは集落だし見張り番は要らないだろう」


 ネイリーの発言で2人も同様に周辺を見渡した。辺りの集落の住民は家の中の灯りが既に消えていたので住民は就寝していた様子だった。


リリア 「そうだね、寝よっか」


 急にネイリーとリリアは立ち上がり何か物を取り出すと地べたに置くように投げ出す。そして煙がモクモクと出て消えた後にフカフカの布団が見え始めライトは驚きながら質問をする。


ライト 「え!それ何!?」


 魔法道具の中でもマジックベッドはそこまで値が張らないのでネイリーとリリアは顔を見合わせ逆に持っていないライトに対して唖然としていた。


リリア 「へ?これ魔法道具の布団だよ?マジックベッド!」


ネイリー 「なんだ、他国に行くと言ってたのに持ってないのか?」


ライト 「マジック、マジックってその魔法道具は何なんだーーー!!」


 そして、ライトは寝具など特に気にせず何も用意をしていなかったので流石にそのままで寝るのは風邪でも引いてしまうであろう…とネイリーの配慮で大量の荷物の中に毛布がある事を思い出しリリアに声を掛ける。


ライト 「ネイリーの毛布もフカフカだな。おやすみ~!」


 ネイリーから借りた毛布をライトは身体にぐるぐると巻きながら横になり気持ちよさそうにしながら言う。


ネイリー 「おやすみ。よだれをこぼすなよ?」


リリア 「おやすみ~!」


 暫く時間が経ちライトとネイリーはすぐに寝息の音を立てながら寝たようだが、リリアは中々寝る事が出来ず調理している最中に過った両親の事をふと思い出す。


———【リリア(幼少期)】


 私は産まれた時、能力鑑定者に回復能力を所持している為、強制的に教会入りした。教会に強制入りした回復能力者の子供は『癒し子』と呼ばれていた。


 物心ついてきた時には朝1でお祈りをし、勉強をする。「回復能力を簡単に使用してはいけない。神が与えてくれた能力だから易々に使ってしまってはいけない」そんな事を毎日毎日言われ続け、回復能力の扱い方を勉強した。


 私は目がオッドアイで珍しい容姿のせいか周りからの印象は悪かった。同じ歳ぐらいの子に声を掛けても「変な目」、「近寄るな」といつも言われていた。時には「不気味」と言われながらも石を投げられた事もあった。


 ある日、席に着き勉強をする前に机の上で本を用意をしようとし開くと勉強本の紙が破られてた事に気付き勉強本が破られていると神官に話した。話した途端、神官は呆れたように私を目障りのように見つめながら口を開く。


 「リリア!私の目の前まで来なさい!」


リリア 「は、はい…」


 私は席から立ち上がり神官の目の前まで歩き、呼ばれた位置に到達した瞬間に大声で怒鳴られる。


 「リリア!お前は勉強がしたくないのか!せっかく神から与えられた能力なのに……。何故、本を破ったんだ!」


リリア 「わ、わたし、やってない…。まわりの子にやぶら……」


 話している最中に男性の神官はリリアに向って、破れた勉強本を身体に向い投げつける。


リリア 「いたっ!」


 「お前の言い訳なんて聞きたくもない!容姿が『醜い』と性格も『醜い』んだな!」


 私は大声でいまにも泣き喚いたい気持ちでいっぱいだったが、この場で泣いた所で勉強本を破った人の思う壷だと思い必死に堪えた。


 「私が以前使っていた勉強本を渡すから席に戻りなさい!」


リリア 「…はい」


 私は神官から長く使っていた勉強本を渡され席に戻り歩いている最中に「上手くいったね」とヒソヒソ話しながら笑う声が聞こえてきた時はとても悔しかった。私はただ『皆と仲良くしたい』だけなのに、それすらも許されない。


 大人には理不尽に怒られ、容姿も『醜い』と言われ、毎日辛くて泣きたい気持ちでいっぱいだった。でも、泣いても誰も私を助けてくれる人なんていない。私は、隠れて泣くだけだった。


 同じ歳ぐらいの子供は大人の神官と一緒に遊んだり、怪我をしても『しょうがない』と微笑ましい笑顔をしながら可愛がられていた。


 私はその真逆で、一緒に遊ぶ人も居なくて、怪我をして泣いても『冷たい』表情で治療されるだけだった。


 私は誰かと一緒にいる事を諦めて、自由の時間に通っていたのは教会の図書館だった。


 文字はあまり読めなかったのでイラスト等が多かった本を良く読んでいた。


———6歳になってから私は回復能力を使う実習した。

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