第14話 庶民校の3席
ネイリー 「ライト?知ってる人なのか…ん、確かお前は庶民校にいた…」
ライト 「ネイリー!こいつ、庶民校で3席だったリリアだ!」
掲示板を眺めていた人物の名はライト、ネイリーと同学年のリリア・メインティス。彼女は庶民の中でも珍しい回復能力の持ち主だった。
教会にて能力の鑑定後、回復能力と判断されたときすぐに教会入りとなった。彼女の容姿は非常に珍しく髪の色は白く、瞳の色が右は銀色、左は赤が強いピンク色と非対称でオッドアイだった。珍しい髪の色、瞳の色で『不気味』と思われ容姿だけで教会の中では距離を置かれていた。
―――回復能力者は貴族でも扱える者は少なく、庶民で扱える者は稀だった。それ故、貴重な存在で能力を使うだけで相当な報酬額を受け取る事が可能だった。
過去にもリリアのよう、庶民の間の子で産まれた回復能力者が金銭を回収する事も無く扱ってしまった結果。他の薬屋や医療施設の経営が成り立たなくなってしまった。
このような事象を防ぐ為、貴族や庶民から回復能力者が産まれた場合、国が把握で出来るよう産まれたばかりの赤子を教会で能力を鑑定するよう義務付けた。
ライトに"こいつ"呼ばわれされたリリアは頬を膨らませ手を丸める。
リリア 「人を"こいつ"呼ばわりしないの!」
ライト 「イテッ!」
頭を叩かれたライトは屈み込む。屈むライトを前にリリアは腕を組みフンッ!と荒く鼻を鳴らす。
リリア 「本当にライトったら何も変わってない!―――ってか冒険者ギルドに入ったんだ?卒業したら両親を探しに行く!って話は聞いていたけど……」
痛みで屈むライトに対して話していると、隣に立つネイリーが視界の端に映り顔を直視する。見覚えのある顔にリリアは記憶を辿るとサファイアローメン国の現国王の娘である事に気付く。本来なら冒険者ギルドとは場違いである、サファイアローメン国、現国王の娘であるネイリーの顔を見つめる。
リリア 「サファイアローメン国の姫君が何故、冒険者ギルドに?」
冒険者ギルドに場違いであるネイリーに対しリリアは頬に手を当て首を傾げると、ライトはようやく頭の痛みが引き立ち上がる。
ライト 「ネイリーは昨日、仲間になってくれたんだ!」
リリア 「えっ!?仲間!?何故、王族であるネイリー姫が、庶民のライトと一緒に同行を?」
白い歯を見せニシシ!と笑うライトだが、あり得ない状況にリリアは疑いの目で見つめる。
ネイリー 「ライトと目的が一緒だから私も同行する事になった」
ライト 「ネイリーは『庶民隠し事件』の真相を暴きたいらしいんだ!」
疑いの目で見つめていたリリアだが、ライトの答えに驚く。穏やかな目に戻り、笑みを浮かべると手を合わせ叩く。
リリア 「……そっか。それなら良かった!」
リリア (ライト、王族のペットになったのかと思ったけど…。本当に良い仲間が出来たんだね)
納得した顔で腕を組みウンウンと1人で頷くリリアに、ライトは首を傾げる。
ライト 「てか、リリアの就職先って決まって無かったか?王族や貴族専門のいりょう?なんたらって」
ライトの問われるとリリアの顔から笑みが消え、組んでいた腕を降ろす。喜怒哀楽を直ぐ表に出すリリアだが、冷静で至って真面目な顔になる。
リリア 「うん、働いてたよ。でも……ついこの間辞めた」
ライト 「えーーー!高給取りなのにもったいねーだろ!やっぱり貴族達と折り合いが合わなかったのか?」
リリアは首を横に振る。
リリア 「ううん。皆いい人だったよ。ただ―――ちょっとやる事が見つかってさ」
ライト 「やる事??へ~…?」
ライトは首を傾げリリアの顔を覗き込むが、互いに目が合うと睨まれ目を逸らす。
ネイリー 「ライト。この依頼気にならないか?『ブルー村で魚の生産量が不漁の為、調査依頼求む。』らしいぞ」
会話をしていた2人はネイリーが指を差した依頼書に目線を移す。依頼の詳細を見ると『冒険者ランク、シルバー1以上が条件』と書かれていた。
ライト 「シルバー1以上が条件の依頼だな。報酬は30万シルと色々な種類の貝殻、魚の秘伝レシピ……か」
ネイリー 「私はその色々な種類の貝殻セットで良い。また何か作れるかもしれない」
ハンカチの件でライトは苦痛の記憶が蘇り、身体を震わせる。
ライト (やべえ!ネイリーがまた何か作る気だ!!)
そして、再び筋肉をピクピクしながら笑顔を作る。
ライト 「ネイリーサン、ツクルノハホドホドデイイヨ?」
ネイリーはふぅ…とため息を吐く。
ネイリー 「先ほど受付嬢に夜更かしはあまりしちゃダメだと言われたからな。当分は作る気はないぞ?なんだそんなに欲しいのか?」
ライト (いらねーーー!あんなのまた作られたら俺の命が持たないから!!)
本来であれば頭を抱え込み叫びたい所だが、命を懸けてまで本音を言う事は出来ず筋肉をピクピクしながらニッコリとする。
ライト 「イヤイヤ、ネイリーサン、ダイジョウブダッテ」
リリア 「その依頼、私も受けようかなって悩んでたんだ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます