第55話 新しい仲間が増えました
ジッとミュリエルを見つめるアリシア。
二人の視線が交差し、ごくりと彼女は唾を呑みこんだ。
そして、
「はい! わたしは、皆さんがよろしければパーティーに参加したいと思ってます!」
と意を決したように告げる。
それを聞いてアリシアは、
「そ。ならこれからよろしくね。あなたの支援魔法には期待してるわ。仲良くしてね」
とだけ言うと、眠たそうに首を僕の肩へ押しつけた。
すわった状態で眠るつもりか?
「……えっと、これで、わたしはパーティーに加入できるんでしょうか?」
「そうだね。ちょっと適当になったけど、アリシアが認めるなら僕は歓迎するよ。同じく、これからよろしくねミュリエルさん」
「っ! ありがとうございます! こちらこそ、これからよろしくお願いします!」
僕の言葉を聞いて、バッと頭を下げるミュリエル。
涙すら滲ませて喜んでいた。
「よかったですねミュリエル! これでこれからもずっと一緒にいられます!」
「うん! ありがとうシャロン。シャロンがいてくれたおかげで勇気を出せた」
「ううん、ちゃんと伝えられたのはミュリエルが頑張ったから。それに、ミュリエルの才能はたしかなんです、アリシアと同じくわたしも期待してますからね!」
「が、頑張ります」
「ふふ」
年相応にはしゃぐ二人を眺めながら、僕は内心、慈しむような感情をいだく。
この世界に来てからそれなりに経つが、しかしまだまだそれほどの時間は経っていない。
全体で見れば些細な時間だろう。
だが、はれて三人目の仲間ができた。
またしても女性だが、そこは目を瞑ってほしい。
知り合いがたまたま女性だったから加わったまで。
べつに僕がハーレムを目指してるとかそういうわけじゃない。
……はずだ。
「じゃあせっかくだし、ミュリエルさんがパーティーに入ったことを祝う食事会でもしようか。といっても、豪華絢爛なメニューは期待しないでくれよ? しがないハンターにできる程度の、いける程度の店しか僕は知らないんだから」
「あら、これから外食? パーティーかしら」
「アリシアは眠そうだし、寝ててもいいよ」
「ぶつわよ。わたしだけのけ者にする気?」
「冗談さ冗談。店選びは任せていい?」
「ええ、それくらいなら任せて。……というより、あの店はどう? 昨日いった店なら二人は知らないし、また行きたいと思ってたの」
「ああ、あの店か……」
悪くない提案だ。
料理の量も多いし味も完璧。
メニューの数もそれなりに多かったと記憶してる。
値段が特別高いわけでもない……うん。
「決定、だね」
「そう。じゃあわたしは準備してくるわ。シャロンとミュリエルはその恰好でいいの?」
「はい。わたし達は時間的余裕がありましたから」
「ならまた後でね。ノア様もちゃんと着替えなさいよ? そんな昨日着てた服じゃなくてね」
「わかってるさ。まだ新品はたくさんあるし、笑われない程度を心がけるよ」
それだけ言ってアリシアは隣の部屋へ向かった。
シャロンとミュリエルも僕が着替えるということで部屋を出て、アリシアに続く。
僕は誰もいなくなった部屋で、遅くも空腹をうったえる腹の音を聞きながら、それでもゆっくりと着替えをはじめた。
新たな仲間の加入を噛みしめるように、ゆっくりと。
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