俺、サスヴァンを出るよ!
井戸がしっかり直ったことを確認した俺達は、サスヴァンを出発して皇都に戻るためにグレタの家まで戻ってきていた。戻るまでに色々な人からお礼の品を貰ったから大事にポケットにしまっておいたよ!
「そろそろ帰ってくる頃だと思ってたよ」
「「お帰りなさいませ」」
グレタの家に戻った俺達を出迎えてくれたのは、オリス・スウェイ・グレタと多くの町の人だった。
「みんな集まってどうしたの~?」
「見送りをしたくてね、それとクーア様に渡したい物があってね」
渡したい物って何だろう?グレタはオリスが持っている籠から綺麗で透明感のある水色の布を取り出すと、
「これをクーア様に」
「わぁ!」
グレタが取り出して俺に見せてくれたのは砂の民がみんな首に巻いているストールだった。ストールは水色をしていて、鮮やかな緑色や白などで植物の刺繍がくまなくされているのにごちゃごちゃして無く纏まっている。細かな植物の刺繍はすべて種類が違い、よく見ると俺が復活させてた植物が混じっている。
「凄い綺麗!」
「気に入ってくれたようで良かったよ」
「うん、欲しいと思ってたんだ!」
最初砂の町を見て回った時からみんなが着けてるスカーフが色鮮やかでいいなと思ってたけど、まさかプレゼントしてくれるとは思ってなかった。この水色も綺麗で好きだし、植物の刺繍ってところが気に入った。
「それじゃあ、巻かせてもらいますね」
「うん、お願い」
「良かったなクーア」
「似合ってますよ」
「えへへ」
グレタにストールを巻いて貰うと、俺も砂の民とお揃いみたいでとっても嬉しい。このストールも汚れないようにしておかなきゃね。触り心地はツルツルしていて、チクチクすることは無く何時までも触っていたくらい。う~ん、こんなに素敵な物を貰ったならお礼をしてあげないとね!
「ありがとうグレタ!お礼をあげるね」
「クーア様これはお礼なんだから返さなくて大丈夫さ。クーア様にはこれくらいじゃ返せないほどの恩があるんだから」
「え~でも、俺みんなに何かあげたい!」
「気持ちだけ受け取っとくよ」
む~町の人揃って首を振ってお礼が要らないみたい。でも、俺はこれを貰って嬉しかったし、みんなにお礼をしたい。だけど、頑なにお礼を断ってるんだよね・・・・
「クーア、また来た時に考えたらどうだ?」
「む~」
「皇子の言う通りまたクーア様が来て頂けることが最大の喜びです」
「・・・・分かった。次来るときには絶対お礼を受け取ってね!」
今は貰ってくれなさそうだし、今度来た時いっぱいお礼をもってこよっと。これから皇都に行くんだし、みんなが喜んでくれる物がいっぱい見つかるはずだよね。
「えぇまた来てください」
「グレタ見送りご苦労、町のみなも元気でな。それでは、行くぞクーア」
「うん、またね~」
俺は、町の人からの歓声を背にシャールクと一緒に愛馬ボルンに乗って皇都へと出発した。サスヴァンに来た時と同じように大地に水を通しながら皇都へ行こうと思ったんだけど・・・・
「クーア、ここから先は水を引かなくて大丈夫だ」
「なんで~?」
「それは本来俺達がやる事だろ?クーアに任せっきりにはできない」
「でもウォル達じゃ大地の再生は無理だよ?」
それなのになんで水を引かなくてもいいって言うんだろ?水引くだけだったら、時間を掛ければ出来るだろうけど大地の記憶を読み取るのは人間じゃ無理だと思う。それに、ウォル達はこの大地を復活させるために旅をしてたんでしょ?
「あぁ分かっている。だが、クーアに無理をさせる訳にはいかない」
「む~俺は寝たらすぐ治るのに・・・・」
「だとしてもだ、それに俺達がやることをクーアがやる必要は無いだろ?」
「・・・・」
たぶんこれはアルベルドに教えてもらった心配ってやつだ。俺があの時寝ちゃったのがそんなに心配だったのかな・・・・?心配してくれるのはすごく嬉しいいけど、なんだろうこのモヤモヤ。
「俺がやりたくても?」
「あぁ悪いがクーアそのお願いは聞けないんだ」
「クーア様は気にしなくていいんだからね!」
「あぁクーア様は十分やってくれた」
「守護竜様みたいに頼りっきりにはならないわ」
「・・・・は~い」
俺が要らなくなったんじゃないかと不安に思うけど、みんなが凄く心配してるってことは分かってる。それにウォル達が言ってることも分かる。俺は龍だしこの国に住んでいる訳じゃない。だから、この国を復活させる義務は無いし本来ならウォル達の役目を俺が奪っちゃってる。
分かってる、分かってるけどなんでだろうモヤモヤするし少し寂しい。
「それじゃあ、皇都に向かうぞ」
「クーア様皇都楽しみにしててね!」
「あぁ皇都には面白いものも沢山あるぞ」
「・・・・うん!」
納得してる訳じゃないけど、ウォル達がお願いしてるなら仕方が無いよね。モヤモヤは収まらないけど、俺が魔法を使わないことでみんなが喜ぶんだったら我慢しよっと。
「それで、皇都までどれくらいなの~?」
「あと1週間と4日は掛かるだろうな」
「ほえ~」
「今サスヴァン程水が必要になってる場所はこっち側じゃないからな」
「ん?こっち側?」
こっち側ってどういう事だろ?反対側には水を必要としてる場所があるってことかな?それなら、俺が何とかしちゃうよ!
「クーアには言ってなかったか、こっちは国境沿いだってことは言っただろ?」
「うん、サスヴァンの砂の民が国境を守る人たちなんだよね」
「そうだ」
「それで、皇都は国の中心にあるんだぜ。だから皇都の向こう側にも町が広がってるんだけど、あっちはね~難しいんだよね」
「うむ、鎮魂の地が広がってるからな」
「鎮魂の地?」
なるほど~国の中心に皇都があってその四方を囲むように多くの町があるってことだね。でも、鎮魂の地ってなんだろう?町の名前かな?
「守護竜エルディラン様とヴィラス様が戦い、ヴィラス様が眠っている地の事だ」
「あの地は戦いの影響で水も植物も全く無い無の大地になってしまってるんだ」
「私達もあの地を復活させようと色々調査をしてるんだけど、一切成果が無いの・・・・」
二人が戦ったせいで無の大地になっちゃったってこと?守護竜なのにやってるの!自分で自分のお気に入りを壊すなんて・・・・信じられない。
「なんでそんな事になったの?大地を壊すなんて酷いよ!」
もし、乱暴者なら俺が倒しちゃうんだから!でも、守護竜エルディランだと思う魔力を感じた時とても優しい気配だったのに・・・・なんでだろ?ヴィラスと仲が悪かったのかな?
「いや、守護竜様は何一つとして悪くないんだ。悪いのは全て俺達人間なんだ」
「えぇ守護竜様は私達を守ってくれただけなの」
「俺達の弱さが招いたことなんだ」
「俺達が生きてるのもすべて守護竜様のおかげなんだぜ」
みんな守護竜に怒りなんて抱いていない。それより、悲しくて辛くて切なくて深い後悔を感じる。なんで大地を破壊した竜に対してこんな感情を抱いてるんだろう。
サスヴァンでもみんな守護竜に対して深い尊敬と信仰を持っていた。誰一人として竜を悪く言うなんて事無かったし、みんな親愛を抱いていた。ここまで慕われる守護竜ってどんな人だったんだろう。
「へ~そうなんだ・・・・一体何があったの?」
「長い話になるが大丈夫か?」
「うん、時間はいっぱいあるでしょ?」
「そうだな」
ウォル達は詰まることも無くそれが常識で知っていて当たり前のように、あるお話を話し始めた。
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