1頁

 「やっと終わったわ……」


 色々あってから久しぶりの登校が終わった。

 やはり何度体験しても授業というものは楽しくない。

 特に体育、やる意味がわからない。


「病み上がりに体育はキツイって……」


 ……あいつ運動神経相当悪いみたいね。

 私も人の事言えないけど。

 でも握力だけは強くて驚いたわ。何よ90キロって、ゴリラじゃない。


喰々流くぐりゅうくん!」


「んー?誰だい」


水泡すいほうだよ!一応このクラスの委員長をやってるんだ」


 そんなことより、と目を輝かせる。


「君右利きなの!?珍しいね!」


「……そうだけど」


 珍しい、あの変人ゴリラが押されてる。


「いいなぁ、右利きかっこいいなぁ」


「そんなに得な事ないけど?」


「右利きの人って頭良いって言うよね!」


「それは否定しない」


 ……帰ろ。


「!さやちゃん、帰るの?僕も一緒に帰るよ!」


水泡すいほうくんがまだ話したがってるわよ?」


喰々流くぐりゅうくーん、惡トあくとくんって呼んでいーい?」


水泡すいほう。僕は君が嫌いだ」


 固まる水泡すいほうくん。アンタそれ普通言う?

 かなりショック受けてるわよ。


「なーんーでー嫌いなのー!?」


「しつこい。」


 しがみ付く水泡すいほうくんを無理やり引きはがしてさっさと歩いていく惡トあくと鞘架さやかを置いていくレベルには彼の事が嫌いらしい。


 ――――――


 結局1人で帰る事になった。

 別にいいけど、惡トあくとが居ないと妙に静かだ。


「あいつにも苦手な人っているのね」


 あんな距離感バグってる人にも苦手な人が居る――。なんだか笑える。

 と、その時。


「きゃっ!」


 突然地面が揺れだした。

 地震である。結構揺れが大きく立っていられなくてしゃがみ込んだ。

 幸いここは開けた場所で、倒れて来そうなものはない。しゃがみながら揺れが収まるのを待つことにした。


「……ふぅ、意外と早く収まって――」


「うわああああああ!?」


 聞き馴染みのある声。


「……あいつ建物の下敷きにでもなったの?」


 ――――――


「そんな……」


 目の前には崩れたアパート。そして頭を抱える惡トあくと


「僕の家ー!!!!!」


 どうやら惡トあくとのアパートは割と古い建物だったらしく、さっきの地震で崩れてしまったらしい。


「ああ……僕の宝物が……」


 何それちょっと気になる。


「さやちゃんの秘蔵写真ー!!!!!!」


 前言撤回。それ盗撮よアンタ。


「盗撮なんてするからよ馬鹿。罰が当たったわねー天罰よ、天罰。」


「……せめてこの本が無事で良かった」


 本?そういえば読書が趣味だと言っていたような――。

 相当お気に入りの本なのね、それ。


「ん?アンタもう一冊目読み終わったの?」


 その本には”Ⅱ”と書かれていた。

 確か前まで読んでいたものには書かれていなかったはずだ。


「ああ……あれページ数少なかったんだよね」


「へぇ……」


「さやちゃん。一生のお願い」


 嫌な予感。


「居候、させて?」


 ――――――


「おーい、C-01!どこだ?」


 あいつすぐ道に迷うんだ。財布も持たないで出て行ったからどこかでお腹を空かせて泣いているかもしれない。


「あら?探し人?」


「ん?」


 振り返るとそこには女が立っていた。

 黒い長髪をツインテールにして、目には眼帯を付けている。

 服はいわゆるゴスロリというやつで、着ている和服にはレースが沢山付いている。


 ……正直、少々不気味な雰囲気だ。

 まず和服の着方、それじゃあ”死装束”だぞ?

 

「もしかして、2つ結いの可愛らしいお嬢さんかしら?」


「何故それを――」


「だって私、可愛い女の子が大好きだもの」


 眼帯の下の目が光った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る